Intelが極低温制御チップを発表! 量子コンピュータを小型化して実用化を目指す

量子コンピュータ実用化の課題の1つとして挙がっているのが、配線問題だ。個々の量子ビットは原子の動きを止めるために極低温の冷蔵室で管理されるが、冷蔵室外の制御デバイスからの配線が膨大なものになる。

Intelが開発した49量子ビットのコンピューティングシステムですらかなり大掛かりなもので、研究施設以外に置くのはむつかしいだろう。そのうえ、量子コンピュータが商用利用可能なレベルになるには、少なくとも数百~数千量子ビットが必要とされる。

この配線問題を解決すべく、極低温環境に持ち込める制御デバイスの開発が求められてきた。こうしたなかIntelは、極低温で動作する量子コンピュータ用制御チップを発表した。

・絶対零度よりもわずかに高い温度で動作

オレゴン州で最も寒い地域にちなんで名づけられた「Horse Ridge」は、絶対零度よりもわずかに高い温度、4ケルビンで動作する。

制御デバイスを統合した同チップを冷蔵室内に設置し、コマンドをマイクロ波パルスに変換して量子ビットの状態を制御するようだ。

これまで冷蔵室外から量子ビットを制御するために数百本のケーブルが用いられてきたが、これが量子システムのスケーリングを妨げてきた。量子ビットに近い位置に制御デバイスを統合することで、システムを小規模化して設計の複雑さも軽減できる。

・シリコンスピン量子ビット技術と併せて開発を進める

ところで、熱をほとんど放出しないように設計されているHorse Ridgeだが、4ケルビンという極低温でもまだ現行の量子コンピュータ動作環境とにギャップがある。

ただ、ミリケルビンレベルで動作する一般的な量子コンピュータと比較して、Intelが研究を進めるシリコンスピン量子ビット技術は、わずかに高い温度(1ケルビン以上)で動作するため、このギャップを埋めるのに有利だろう。

極低温制御チップの開発は、実用的な量子コンピューティングシステム開発においての重要なマイルストーン。小型化が進めば、家庭用量子コンピュータ開発の道も開けるかもしれない。

参照元:Intel Introduces ‘Horse Ridge’ to Enable Commercially Viable Quantum Computers/ Intel Newsroom

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