SUPER BEAVERが初のスタジアム公演で作り出した、大きな笑顔の渦──〈SUPER BEAVER 20th Anniversary 『都会のラクダSP at ZOZO マリンスタジアム』〉

SUPER BEAVERが初のスタジアム公演で作り出した、大きな笑顔の渦──〈SUPER BEAVER 20th Anniversary 『都会のラクダSP at ZOZO マリンスタジアム』〉

「俺たちが!いや、俺たち“で”!SUPER BEAVER!」という渋谷の言葉が、この夜のすべてを物語っていた。

2025年6月21日(土)、ZOZOマリンスタジアム。梅雨の合間を縫って晴れ渡ったこの日、ロック・バンドSUPER BEAVERが結成20周年を記念して開催したワンマンライブ「都会のラクダSP at ZOZOマリンスタジアム」の2日目の公演が行われた。彼らにとって初のスタジアム単独公演。3万人超の観客が集まり、チケットは完売。さらにWOWOWでも生中継されるなど、その注目度は尋常ではない。だが、どれだけステージが大きくなっても、彼らの本質は変わらない。「俺たちはライブハウスから来た」。この日のSUPER BEAVERは、その出自と魂を貫きながら、スタジアムという巨大な空間をも“ライブハウス”にしてみせた。

開演の時刻を迎えると、会場中から起こるクラップが巻き起こる。熱気が最高潮に達するなか、まずは柳沢亮太、上杉研太、藤原“37才”広明の楽器隊が音を鳴らすと、ヴォーカル・渋谷龍太がゆっくりとステージに現れた。そして始まったのは“東京”。2022年のアルバム『東京』に収録されたこの楽曲は、再出発と故郷への愛を描いたバンドにとっての象徴的な1曲だ。冒頭から3万人が声を揃えて大合唱し、その響きがスタジアムを満たしていく。続く“青い春”では、渋谷が「まかせた!」と観客に歌唱を託し、オーディエンスが主役となって音楽を作り上げた。さらに“突破口”では、「ここ、ライブハウスにしてみませんか?」と問いかけるように、力強く、真正面から音をぶつける。たとえ、会場がスタジアムだったとしても、SUPER BEAVERが音楽を鳴らせば、そこはライブハウスへと化す。序盤から会場は、SUPER BEAVERの原点と現在が融合する、まさに“ライブの真髄”とでも呼ぶべき空間に変わっていた。

SUPER BEAVERが初のスタジアム公演で作り出した、大きな笑顔の渦──〈SUPER BEAVER 20th Anniversary 『都会のラクダSP at ZOZO マリンスタジアム』〉

「SUPER BEAVERにしか できない音楽を今日はやりにきてる」「最高の時間、俺たちと一緒に作りましょう」というMCを挟み、次のブロックは、“美しい日”からスタート。渋谷は花道をステップを踏んで歩きながら、観客一人ひとりに語りかけるように歌を届ける。“閃光”、“ひたむき”といったエネルギッシュなナンバーが続いたあとの「新曲やってもいいでしょうか?」という一言から披露されたのは“主人公”だ。「世界の中心はいつだって自分だよ」というメッセージが込められたこの楽曲は、これからも自分の物語を信じて歩いていけるようにと背中を押してくれるような、温かくも力強い1曲だった。

この日一番印象的だったのは、インディーズ時代の名曲“人として”。サポート・キーボーディストの河野圭のピアノアレンジで静かに始まり、渋谷の声に導かれるように熱量が増していく。真摯で誠実な歌声が、スタジアム一帯に広がる素敵な時間だった。続いて披露されたのは“片想い”。この曲を始めるまえに渋谷が語った「音楽は衣食住に勝てないかもしれない。でも俺たちは音楽で衣食住に代わる何かになりたい」という言葉は、このバンドが届けたい“生きる力”そのものを感じさせた。

SUPER BEAVERが初のスタジアム公演で作り出した、大きな笑顔の渦──〈SUPER BEAVER 20th Anniversary 『都会のラクダSP at ZOZO マリンスタジアム』〉

ここでメンバーのMCのコーナーへ。まずギター・柳沢亮太は、WOWOWでの生中継も行われていた本公演について、「画面越しに観てくれている皆さんもありがとう」と語りかけると、ふとバンドの出発点に思いを馳せた。「結成したのは高校3年生のとき。卒業したら自然に解散するんじゃないかってくらい、ふわっと始まった」と回想しながら、そんなスタートから20年、ZOZOマリンスタジアムという大舞台に立っている現実に、「本当にすごいこと。みんながいてくれたから」と感謝を伝えた。また、ライブ開催にあたり数日前から会場入りし、深夜まで準備を重ねたスタッフの努力にも言及。「この5日間で、たくさんの人が一緒に汗をかいてくれた。おかげで今日、この素晴らしい空間を一緒に作ることができています」と語り、関係者への労いを忘れなかった。

続いてベース・上杉研太は、ZOZOマリンでの特別な思い出を語る。「昔、ここでサマソニに出たRed Hot Chili Peppersを観て、フリーのプレイスタイルに衝撃を受けた。今使ってるベースも、その頃の影響が詰まってる」と語り、自らのプレイヤー人生とライブ会場の記憶が交差したことへの感慨をにじませた。「今日この会場で、自分が作ったベースでワンマンをやってる。やっぱり、すげえよなって思った」と素直な思いを吐露した上杉は、「ここからももっと楽しいことを更新していく。まだまだこれから」と、先の展望にも言及。20年の歩みの“締め”ではなく、あくまで“途中”であることを強調した。

SUPER BEAVERが初のスタジアム公演で作り出した、大きな笑顔の渦──〈SUPER BEAVER 20th Anniversary 『都会のラクダSP at ZOZO マリンスタジアム』〉

バンドの「かわいこちゃん担当」のドラム・藤原“37才”広明は、独特のユーモアとゆるい語り口で場を和ませつつ、ライブの空気を温めた。「立ってもいいですか?」と冗談めかしながら観客を笑わせ、「最後まで楽しんでいってください」としっかりとメッセージを残した。また、同じ名字の野球選手、藤原恭大が千葉ロッテマリーンズにいることに触れ、「遠い親戚でもなんでもないけど、応援してます」とタオルを掲げて軽快に笑いを誘い、せっかく野球場にきたからには、ホームランが打ちてえ!と叫び、「最後までホームラン打てる人ー!」と迷MCで盛り上げた。

そして渋谷は、花道を歩きながら、会場後方までぎっしりと埋まった客席を見渡し、「意外と、ちゃんと見えるんだよ。後ろのほうまで」と笑顔を浮かべた。「この距離感が俺たちの音楽だと思う。どこにいても、ちゃんと届くように歌ってる」と語り、遠くの観客にまで思いを届けようとする姿勢をにじませた。

SUPER BEAVERが初のスタジアム公演で作り出した、大きな笑顔の渦──〈SUPER BEAVER 20th Anniversary 『都会のラクダSP at ZOZO マリンスタジアム』〉

「ここから後半戦。休憩はゼロです。最後まで全力でぶつかるだけ」と話す渋谷の言葉には、20年という歴史に甘んじることなく、常に“今”を更新していくというバンドの覚悟がにじむ。そこから「これが俺たちの戦い方です」「派手にやろうぜ!」と叫び、演奏されたのは“正攻法”。少し涼しさを感じる時間ではあったものの、ステージから立ち登る特効の炎で、物理的にも熱いステージが繰り広げられる。渋谷が藤原の言葉を借り「わかんねえけど、ホームラン打つんだろ!?」と煽り、観客とのコール&レスポンスで一体感が加速するなか披露されたのは、“秘密”。さらに“東京流星群”と続き、観客とバンドがひとつになる感覚が確かにそこにあった。メンバー紹介では「SUPER BEAVERは、柳沢、上杉、藤原、俺、そしてあなた!」と渋谷が宣言し、観客もSUPER BEAVERというバンドの一員であることを実感させてくれた。

SUPER BEAVERのライブの醍醐味は、そのとんでもない一体感にある。しかし、この日のMCで印象的だったのは、渋谷が語った「一体感を作ることが、音楽の目的ではない」という言葉。「ひとりひとりが楽しくて、その結果として生まれる“ひとつ”が好きなんです」と語る彼のまなざしには、ライブという場の本質を深く見つめる誠実さが滲んでいた。SUPER BEAVERのライブは、決して同じ感情を押し付けるのではなく、それぞれの“あなた”がそこにいていいと思わせてくれる場所なのだと感じた。

SUPER BEAVERが初のスタジアム公演で作り出した、大きな笑顔の渦──〈SUPER BEAVER 20th Anniversary 『都会のラクダSP at ZOZO マリンスタジアム』〉

クライマックスでは“名前を呼ぶよ”をパフォーマンス。ここに集まった3万人の一人ひとりに、名前を呼ぶように、渋谷は真っ直ぐに言葉を届ける。続いての新曲“まなざし”では、柳沢のギターに合わせて観客が一斉にジャンプ。地鳴りのような歓声と振動が、スタジアムに生き物のような躍動をもたらす。夜が深まり、幻想的な光に包まれたなか披露された“それでも世界が目を覚ますのなら”は、ロック・バンドとしての矜持を感じさせる、心を揺さぶる名演だった。

そしてラストスパート。“小さな革命”では「全力で来い!」という渋谷の叫びに応えるように、オーディエンスも全身全霊で音楽を受け止める。続く“アイラヴユー”では、ストレートな「愛してる」という言葉が3万人を包み、大輪の花火が夜空に咲いた。その花火は、バンドの20周年を祝うだけでなく、この日最高の音楽を作り上げた全員を祝福するようだった。ラストナンバーは“切望”。これまでの20年を超えた、これからの決意と感謝、そして再び「また一緒に音楽しよう」というメッセージが痛いほどに伝わる一曲だった。

20年の歩みを経てもなお、音楽を武器に真っ直ぐ進み続けるSUPER BEAVER。ZOZOマリンスタジアムという大舞台でのこの一夜は、ただの記念日ではなく、これからも彼らが“生きること”と“音楽”を叫び続ける、その新たな出発点となった。

SUPER BEAVERが初のスタジアム公演で作り出した、大きな笑顔の渦──〈SUPER BEAVER 20th Anniversary 『都会のラクダSP at ZOZO マリンスタジアム』〉

取材&文:ニシダケン
photo by 浜野カズシ

SUPER BEAVER 20th Anniversary 都会のラクダSP at ZOZOマリンスタジアム SETLIST

1. 東京
2. 青い春
3. 突破口
4. 美しい日
5. 閃光
6. ひたむき
7. 主人公
8. 人として
9. 片想い
10. 正攻法
11. 秘密
12. 東京流星群
13. 名前を呼ぶよ
14. まなざし
15. それでも世界が目を覚ますのなら
16. 小さな革命
17. アイラヴユー
18. 切望

プレイリストはコチラ
https://superbeaver.lnk.to/20thlive2025

ツアー情報

◆ホールツアー情報
SUPER BEAVER 20th Anniversary
「都会のラクダTOUR 2025 〜ラクダトゥギャザー〜」
<2025年>
9月26日(金) 【東京】 TACHIKAWA STAGE GARDEN
9月28日(日) 【鳥取】 米子コンベンションセンターBiG SHiP
10月10日(金) 【鹿児島】 川商ホール(鹿児島市民文化ホール)第1ホール
10月12日(日) 【熊本】 熊本城ホールメインホール
10月17日(金) 【静岡】 アクトシティ浜松大ホール
10月19日(日) 【青森】 リンクステーションホール青森
10月25日(土) 【石川】 金沢歌劇座
11月9日(日) 【香川】 レクザムホール
11月10日(月) 【愛媛】 愛媛県県民文化会館
11月16日(日) 【沖縄】 沖縄コンベンションセンター劇場棟
11月22日(土) 【新潟】 新潟県民会館
12月1日(月) 【東京】 東京国際フォーラムホールA
12月2日(火) 【東京】 東京国際フォーラムホールA

ツアー情報

◆アリーナツアー情報
■SUPER BEAVER 20th Anniversary 『都会のラクダ TOUR 2026 〜 ラクダトゥインクルー 〜』
<2026年>
1月17日(土)・18日(日)【愛知】ポートメッセなごや 第1展示館
1月31日(金)・2月1日(土)【神奈川】Kアリーナ横浜
2月7日(土)・8日(日)【宮城】セキスイハイムスーパーアリーナ
2月21日(土)・22日(日)【広島】広島グリーンアリーナ
2月28日(土)・3月1日(日)【福岡】マリンメッセ福岡A館
3月7日(土)・8日(日)【北海道】北海きたえーる
3月20日(金・祝)・21日(土)【大阪】大阪城ホール

インフォメーション

◆SUPER BEAVER OFFICIAL HP&SNS
HP:http://super-beaver.com/
X:https://x.com/super_beaver/
Instagram:https://www.instagram.com/superbeaver_official/
TikTok:https://vt.tiktok.com/ZSJ4kPjBv/

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