兵庫県伊丹市の新図書館“ことば蔵”へ行ってみた
7月1日、兵庫県伊丹市に新しい図書館“ことば蔵”が開館しました。1972年に開館した旧図書館は伊丹市役所の裏手にあり、良くも悪くもお役所的な雰囲気の街並みに溶け込んだ建物でしたが、“ことば蔵”は904年の創建と伝えられる猪名野神社のすぐ近くにあります。この一帯は、酒造業が盛んだった江戸時代の雰囲気を残す伝統的街並みに調和した建物設計が求められる景観条例の対象地域となっており、“ことば蔵”という愛称も酒蔵をイメージした外観から一般公募で命名されました。
正門からエントランスを通って1階に入ると、本棚が見当たらないことに驚きます。1階は主にギャラリーを併設した展示・交流スペースとなっていて、その一角に小さな本棚が設置されていました。その名も『カエボン棚』。利用者がお薦めの本を寄贈して、その本に自作の帯を書いて本棚に置いておくと誰でも自由にその本を別の本と交換して持ち帰れる“替え本”の出会いと別れの場なのだそうです。
2階はようやく図書館らしい空間になり児童書と海外文学、新聞・雑誌コーナーが設置されています。最近では多くの図書館で見られるようになったヤングアダルトコーナーは市内の高校生の手で運営され、選書やレイアウトから自由な雰囲気が感じられたのが印象的でした。
3階は一般書と日本文学。煩雑な貸し出し作業もカウンターを経由せず、自動貸し出し機にICタグを読み取らせるだけで完了。非常にスピーディーです。館内閲覧用の席もソファが多数用意されており、くつろいで読書ができるように工夫されています。
“ことば蔵”の蔵書数は開館時点では約30万冊で、近隣の大都市にある図書館と比較すると大阪市立中央図書館(約170万冊)や神戸市立中央図書館(約85万冊)には遠く及びませんが、京都市中央図書館(約37万冊)よりはやや少ないぐらいで将来的には50万冊の収容に対応するなど、人口20万人弱の都市にある図書館としてはかなりの規模と言えるでしょう。
歴史を感じさせる街並みに最新鋭の図書館として誕生した“ことば蔵”の、ただ単に蔵書数を充実させるだけではなく収集した蔵書の新しい活用方法をハード面から提示して行くという挑戦は、これから全国の公立図書館のモデルとなって行く可能性を秘めていると感じました。この新図書館が地域の住民にどう活用され、どのように進化・発展して行くのか今後も注目して行きたいと思います。
交通手段は阪急伊丹線伊丹駅から北東へ徒歩10分、またはJR福知山線伊丹駅より北西へ徒歩15分。大阪・神戸からも1時間前後で行ける距離です。
伊丹市立図書館
http://www.itami-library.jp/
- ガジェット通信編集部への情報提供はこちら
- 記事内の筆者見解は明示のない限りガジェット通信を代表するものではありません。