政策オーディション:政策提言発表(4)「日本におけるオープンガバメントの推進についてー予算執行の情報公開ー」新しい霞ヶ関を創る若手の会

政策オーディション:政策提言発表(4)「日本におけるオープンガバメントの推進についてー予算執行の情報公開ー」新しい霞ヶ関を創る若手の会

政策オーディション:政策提言発表「日本におけるオープンガバメントの推進についてー予算執行の情報公開ー」
発表者:新しい霞ヶ関を創る若手の会(NPO法人プロジェクトK)
竹内帆高氏(国土交通省)中村隆之氏(文部科学省)上村雅人氏(独立行政法人)

政策オーディションの政策提言の発表の様子をテキスト書き起こしでお伝えいたします。今回の発表者は新しい霞ヶ関を創る若手の会の竹内帆高氏(国土交通省)、中村隆之氏(文部科学省)、上村雅人氏(独立行政法人)。発表タイトルは「日本におけるオープンガバメントの推進についてー予算執行の情報公開ー」です。

「政策オーディション」実行委員会(五十音順)

朝比奈一郎   青山社中株式会社筆頭代表CEO、秀明大学客員教授
磯山 友幸   硬派経済ジャーナリスト
鈴木 崇弘   城西国際大学客員教授
世耕 弘成   参議院議員
鶴見 樹里   GRAPH取締役
松田 公太   参議院議員
馬淵 澄夫   衆議院議員
(事務局:東京プレスクラブ)

プレゼン資料

プレゼン資料:日本におけるオープンガバメントの推進について(資料)

プレゼン動画

http://youtu.be/n0QtNkqx6pY

プレゼン内容書き起こし

予算執行における現在の行政の課題

従来の行政機関の予算の場合、予算要求を行なうことが行政官にとって最も時間と労力を費やしてきた仕事です。予算を拡大して行くことが行政官にとって人事評価やポストへ反映し、予算を拡大することにインセンティブが働く仕組みになっています。行政は一般的に縦割りで各行政官は予算を拡大して行こうとするところにインセンティブがあります。

かつての高度経済成長時代であれば一般の国民にとって、国民生活の質をあげるということと予算の拡大ということは、パイが増えて行くことで一致していたため良い時代でした。しかし、昨今においても予算自体の規模が縮小している中で行政官は相変わらず予算を拡張させようとし続ける状態が続いています。

予算の拡大にインセンティブが働いている状態で、一方では予算を削減しなくてはならない。そこで、予算を要求する側は、予算を削減しづらい政策と一緒に予算要求を行います。たとえば復興関連予算とかの理屈付けのなかで別途で予算要求をしたり、有力な政治家の後ろ盾をもって予算要求をしてみる。あるいは、総務省の行政評価局がこういう評価をしているのでこういう予算付けをしなくてはならないといった評価を逆手に取った形で予算要求をする。こういう形で予算を減らされない努力をしてきているのが現状だと思います。

要求した予算に対して財務省の主計局が査定をして削って行くわけですが、各省がいろいろな勉強をして予算を要求している中で財務省は査定しなくてはならないのですが、マンパワー的にも中身を勉強している度合いによっても濃さが違っていて、結局なにが国民にとって必要な政策、質が高い政策なのか、査定する側も本当の必要性が難しくてわからない。そのため、結局シーリングであったり、今まで要求してきたものを通すのであれば削減しますといったスクラップアンドビルドをとったりという形でしか予算削減することが難しくなってきています。

予算要求に対して予算を執行した後どうなのかというと、これまで予算要求自体にインセンティブが働いてきていたため、執行がどうだったかということが放置されているままであったりします。例えば国会でも「予算委員会」は花形で注目されますが「決算委員会」は注目されなかったりします。
それを監視、審査する機関としては会計検査院があります。会計検査院にしても各省がいろいろな予算要求を行なってきているものを、現マンパワーをもって全てを査定し続けるというのはなかなか難しい。

何が問題か?それは、予算を要求することにインセンティブが働いている現状の制度が問題です。予算を詰め込むインプットベースの制度が問題何か、そして予算をどのように使ったか?ということに頭を切り替える必要がある。実際に予算がいくら付いても、国民生活の質や、政策の質が上がらなければ意味が無い話であり、実際に予算がどう使われたかに関して関心を持つアウトプットベースの政策に切り替えて行くことが必要だと思います。

我々行政官はなぜ最初からそうしないかと言うと、我々としては一生懸命仕事はしているのですが、現在の制度は予算要求にインセンティブが置かれるインプットベースの制度となっており、。これをアウトプットベースの制度にすれば我々行政官はより政策の質の向上のために仕事ができるようになると考えます。我々は今の制度の中で頑張ると、予算を要求するという方向にどうしても進んでしまっているという現状が問題なんだと思います。

オープンガバメントの基本理念

インプットベースの行政からアウトプットベースの行政へ向けて方向転換をするのであればどのような具体的な政策、対策を考えれば良いかというのを我々検討しました。そのことについて簡単にご説明します。我々は「オープンガバメント」を提案します。「オープンガバメント」とは、行政の持つ情報を広く公開してそれを国民がいつでもどこでも自由にチェックすることが出来るいわゆる「国民参加」といった考えが元になります。それらを同時に担保するということが重要になります。

アウトプットベースへの転換ということでは、日本でもすでに取り組みがあります。行政刷新会議で行政事業レビュー、行政刷新会議自体は事業仕分けで非常に有名になりましたが日本の事業を5000ほどに分けてその事業を評価するといったものが行政事業レビューというものです。これは公開プロセスといったプロセスもあってそれ自体は国民に開かれた形で議論がされている。

また文科省では教育の施策を中心にインターネットを活用して国民的な議論、これを熟議と呼んでいますが「熟議カケアイ」と言った形でメディアを通じた国民的議論を醸成する取り組み。それから経産省にも熟議カケアイの元になっている、「アイデアボックス」といって独自の施策に関する意見募集や意見交換を行なう取り組みがあります。あとは外務省やJICAが行なっている政府開発援助に関して、ODAの見える化、といった取り組みが具体的にはあげられます。

オープンガバメントとは政府を開くことが重要になるわけですが、そのツールとして非常に普及してきているインターネットを活用してゆくというわけです。既存の枠組みの中で活用出来るものがあるのではないかといったことを考えた上で、一番最初に申し上げた「行政事業レビュー」をインターネット上で「レビューシート」といった様式に落とし込む形で公表しています。我々はそれを深化させるといった形でこのオープンガバメントの実現に貢献することを考えました。

行政事業レビューの効果と課題

次のページに行きます。この行政事業レビューですが我々行政官にとってもこのような取り組みは、始まるまでは前代未聞で、事業を見直したり、事業の効果を検証したりといった所では非常に効果があったのですけれども、それを深化させることで、より目指すべきオープンガバメントに近づけることを考えました。

行政事業レビューによる効果ですけれども、それは国で実施されている事業の契約状況やお金の使い方をインターネットベースでオープンにしたということです。事業そのものを丸投げしているのではないかとの議論があるのですが、その資金の流れもレビューシートで追いかけられるようにしました。場合によってはインプットベース、職員が予算を取るためにインセンティブがあるわけでそこに労力をかけていた部分があり、まことに恥ずかしながらその部分にのみ力が入っているせいで執行状況がしっかり理解されていないといことが分かりました。業務のあり方に対して疑問を呈してそのやり方を改める、というスキームを導入したということが行政事業レビューの一つの大きな効果といって良いと思います。

今後の課題として行政事業レビューは事業単体の予算の流れについて書いているのですが、民間企業で事業の効果やパフォーマンスを出すためにそこにかかる人件費だとか、我々役人のなかでは庁費と呼んでいますが、いわゆる事務経費のようなものが全て計上されているわけではない。トータルの事業費が国の予算と合致しない問題点があります。

また、レビューシートは公表されている状況になっているわけですが、それがPDFの形式になっていて二次的分析だとかデータを加工する、事業の善し悪しの検証というのがなかなか難しいという状況になっています。我々政策評価というので政策の善し悪しというのを評価されているわけですが、そことの関連性がレビューシートだけでは不明瞭という状況になっています。我々は毎年翌年度の予算を要求していくわけですが、その際に生データを公開するという形を取ることによって全省庁で統一的なシステムを作る。それが皆さんに情報公開し、国民の参加をもっと盛り上げていくというオープンガバメントを実現するために、それが一番重要なことだと考えています。

データをオープンにした上でその出口、アウトプット、その部分に行政官の視点を向けさせる。その部分でパフォーマンスを評価するという形に持って行く。それが投入資源に対する政策効果としっかり関連付けることで行政官の目をそちらに向けさせることが必要だと思います。経産省等でもやっているインターネットベースで議論する「アイデアボックス」を活用することによってレビューシートの評価だとか事業そのものの改善と言ったものを国民的に議論していただく、そういった機会を実現するような企画をやりたいと考えています。

政策提言(1)「行政事業レビューの改善」

インプットベースからアウトプットベースへの転換について具体的な提言を3つほど申し上げます。ひとつは行政事業レビューの改善です。行政事業レビューの予算執行のデータというのが現段階ではPDF形式で公表されていますが、これをローデータという形で広く公開することによって利便性を高めるということを考えています。具体的には、全省庁共通の予算執行データ入力システムを構築しようと考えております。予算が執行され契約が成立した段階で各省にあります会計システム、アダムスというものがあるのですが、これを改善した新ADAMSというシステムに入力することで、予算の契約が成立した段階で24時間後には自動的にインターネット上で情報が公開されるというシステムを構築します。

そちらのシステムに蓄積された予算執行のデータは、予算に対する政策評価、支出地域はどこか、など色々な情報がタグ付けされていますので、国民からは、どこに予算が投入されたのか?、それに対して政策評価はどうなっているのか?、どこの企業にどれくらいの予算が投入されているのか?、これらの情報を国民の皆様は好きな切り口からデータを抽出できる、というようなシステムをつくることを提案します。具体的にはアメリカではSpending.govやData.govというインターネットサイトによりこのようなデータベースは既に出来上がっています。当面の目標として、日本もアメリカもしくはイギリスレベルの透明性を目指すべきであると考えています。

このようなインターネットデータというのは霞ヶ関職員にとっても利便性があります。例えば、国会質問や情報公開請求などによって予算執行等のデータをまとめなければならない。これらの作業に膨大な時間を割かなければならないということがよくあるのですが、こちらのデータベースが出来ることによって瞬時にデータをまとめることが出来る。これによって行政コストの面からも、大幅なコスト削減が見込めます。

これらのデータベースを「行政見える化サイト」と仮に呼んでいますが、これが下の図になります。例えば、年間の都道府県別予算執行額分布の分析や、地域別にどのような予算内容のものが執行されているか、企業別にどのような契約が行われているか、など様々な切り口からデータを加工することができると考えています。これにより国民に対しての説明責任の向上のみならず、アカデミックの方々が政策分析を行なったり、政策の質を高めるための研究にこれらのデータを活用されることが想定されます。

ただし、一方でこのような会計システムを新たに構築しようとすると膨大な時間と費用がかかることが想定されます。そこで、現実的な方策としては、現在インターネットで公表されている行政事業レビュー、これらを全省庁共通フォーマットのエクセルシートなど、二次加工のし易いローデータとして公表すること。これにより民間やNPOベースでシステム開発が行われる環境を整えることができます。

事実、イギリスではオープンナレッジファンデーションというNPOがそのような情報公開システムを構築し、かつアメリカにおいても民間ベースでそのようなシステムが構築され、そのシステムを国が買い取るという形でオープンガバメントが進んでいます。このように市場の力を利用してオープンガバメントを推進するためには、第三者が容易にデータを扱えるよう、まずは行政側がその環境を整える必要があります。

政策提言(2)「予算執行監査体制の強化」

次のスライドです。政策提言2、「予算執行監査体制の強化」であります。こちらでは、国民による仕分け作業の実現を提案します。先ほどの予算情報公開サイトを見た国民が「これは効果の低い予算なのではないか?」もしくは「この予算とこの予算は重複しているのではないか?」といった意見がある場合は、行政側に意見提言してもらいます。例えば、経産省のアイデアボックスのサイトに意見提言していただく。その意見のなかでも確度が高いものは、例えば会計検査や行政刷新会議などの監査や事業仕分けなどのテーマとして取り上げる。このような仕組みを作るのも一案かと考えます。

次に、組織体制の見直しですが、以前2005年にプロジェクトKにて「霞ヶ関構造改革」という本を出版しまして、こちらで提案した内容になりますが、現在の会計検査院と総務省の行政評価局を合併して新会計検査院をつくることを提案しています。会計監査と政策評価の双方の観点からより強力に予算監査をおこなうという、組織的な面から監査体制を強化して行こうというものです。

且つ、政策評価においても各省が自分たちのデータで自分たちの評価を行なっている状況ですが、これらも厳格な評価をするということで政策評価のデータを全て会計検査院に提出し、会計検査院が第三者の立場から評価を実施するということを考えております。この中で、客観的データに基づいて効果が低いと思われるものについて、ただ単純に数字で予算を縮減、事業廃止とするのではなく、最終的には政治判断を仰ぐというプロセスを踏むべきだと考えております。

もう一点、PDCAサイクルの強化という観点からも、予算査定と監査は分けるべきであり、会計検査院が監査した情報というのは翌年の予算査定のために財務省への意見提言をする、そうすることにより税金の使い道に対してしっかりとPDCAサイクルを回すという仕組みを生み出せます。

政策提言(3)「オープンガバメントの更なる推進」

政策提言3番目は「オープンガバメントの更なる推進」です。オープンガバメントに関しては、Open GovernmentPartnershipという国際的仕組みがすでに出来ており、今年の4月にもブラジルにてアニュアルミーティングが開かれています。日本は参加資格があるにもかかわらず、まだこちらのイニシアティブには未加盟であります。このオープンガバメントパートナーシップでは、参加各国がオープンガバメントを推進するためのアクションプランを作成しています。日本も国際的な枠組みの中でアクションプランを作成することで、国内のオープンガバメントを推進する一つの契機にすべきではないかと考えています。

その他、行政見える化サイトと連携して、例えば予算を縮減をしたり、もしくは政策効果の高い政策を実現した行政官が評価されるというような公務員評価制度の変革を実現させるなど、情報公開によって新しい価値観を生む素地ができるのではないかと考えます。また、市場ベースで進むとは思いますが、スマートフォン向けのアプリを開発するなど、行政の持っているデータを国民全体で有効活用することで、このような波及効果も考えられます。

このような情報公開サイトを推進するため、最高技術責任者としてトップに有識者を民間から招き、かつ各省庁に設置していますCIOとも連携し、トップがリーダーシップを発揮しながら日本におけるオープンガバメントを推進して行くべきということを我々は提案いたします。

(以上)

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深水英一郎(ふかみん)

深水英一郎(ふかみん)

トンチの効いた新製品が大好き。ITベンチャー「デジタルデザイン」創業参画後、メールマガジン発行システム「まぐまぐ」を個人で開発。利用者と共につくるネットメディアとかわいいキャラに興味がある。

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