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地球温暖化問題を環境・経済・社会の視点からふんわり概説します(note)

地球温暖化問題を環境・経済・社会の視点からふんわり概説します

今回は五味馨 さんのブログ『note』からご寄稿いただきました。

地球温暖化問題を環境・経済・社会の視点からふんわり概説します(note)

大変珍しいことに私が専門の地球環境が話題になっていますね。気候変動業界は結構大きいのであちこちに解説があり、所属組織もQ&Aを出しているくらいですが、個人としてもこれを機にふんわりと環境・経済・社会について概説しておこうと思います。以下はtwitterで50連投したものをまとめて若干の修正をしたものです。

さていきなりですが上記Q&Aはこれです。

「ココが知りたい地球温暖化」『国立環境研究所 地球環境研究センター』
http://cger.nies.go.jp/ja/library/qa/qa_index-j.html

私の目的は10代活動家の国連スピーチの評価ではなく、全文確認もしていないことを断った上で、気になるキーワードから入りましょう。まずは「経済成長」。環境と経済のどちらが大事かという議論になりやすいものですね。答えはもう出ていて「両方」です。私達が安全・健康・快適・文化的で楽しい生活をするためには、物を使いサービスを受け(経済)、きれいな空気・水・景色など(環境)に囲まれている必要があります。また生産には環境・資源が必要で、環境保全の取組は経済活動でもあります。以下にもう少し詳しく説明しましょう。食料も工業製品も、物資の生産のためには環境から資源(水、木、魚、鉱石、土壌など)を調達しなければなりません。持続的に調達するためには環境が資源を供給する能力を損ねず、その範囲内に調達する量を留める必要があります。これは経済活動のための環境の保全です。例えば木製品を製造するためには森林から木を伐ってきます。木は切っても生えるか植えるかしてまた成長しますが、切るペースが速すぎれば森林が減って木が供給できなくなりますね。魚も同じで、捕りすぎれば親魚が足りなくなり個体数が減るので、減らないように捕る量を管理しなければいけません。木や魚はうまく管理すればまた増えますが、一回使えばなくなってしまう資源もあります。これを枯渇性資源といい、石油がその典型ですね。余談ですが石油があと〇〇年でなくなるという話[※1]は「今までに見つかっている石油は」なので頑張って探せば延びます。新しい採掘技術で増えることもあります。とはいえそれでも限界はあります。モノをつくったりサービスを提供したりするにはこうした資源が必ず必要なので、経済活動を継続するためには資源供給源としての環境を保全する必要があります。枯渇性資源は大事に使わなければなりません。私たちのよりよい生活には経済と環境の両方が必要。経済のためにも環境は必要。

ここまで経済といいつつお金の話をしてきませんでした。現代経済では貨幣の役割が大変大きく、ほぼ必ず貨幣が動くので経済と聞くとついお金のことを想像してしまいますが、実際の経済活動というのは、服を作って着たり、食べ物を買ってご飯を食べたり、家を建てて住んだりすることです。病院を建てて医療を提供し治療を受ける、本を書いて印刷して読む、音楽を演奏・録音して配信する、教師を育成し学校で授業を受ける、携帯情報端末を製造し通信網を構築してインターネットに接続する、アプリをつくってゲームで遊ぶなど、みんな経済活動です。道路や水路を造る、堤防を築き水害を防ぐ、社会の決まり・仕組みをつくりこれを運用する、治安維持のために実力組織を構成しパトロールする、といったことも加えておきましょう。こういった事柄を生産手段の蓄積による高度化と分業によって超効率的に行うのが現代の経済システムです。こういった様々な生産と消費の事柄を、より多く、より高品質に実現することが経済成長です。一般的に言って、これは良いことだと私は思います。美味しいものを食べ、健康を維持し、快適な住居に住み、望む教育を受け、好きな娯楽を享受できることは良いことです。ただし他の条件が一定ならば。ところが個別にみていくとそう単純ではなく色々な対立があります。森林を森林のままにしておけば木材を利用し、色々な生物に会え、森を歩いたり洪水防止の機能を発揮したりもします。これを伐って農地にすれば食料を増産できます。どうするべきでしょうか。この例だけを考えても環境と経済の関係とはどっちが大事かという単純なものではなく、色々な経済活動、色々な環境要素の間にかなり複雑な関係がありそうです。そのため環境・資源の競合を上手に調整しなければならず、競合を緩和するための技術[※2]も必要です。

少々抽象的な一般論になってしまいました。温暖化と経済の問題を考えましょう。経済活動のために世界は石油・石炭・天然ガスを燃やし、森林を伐って農地を広げ、石灰石からセメントを製造し、牛を飼ってきました。これは温室効果ガス(GHG)の主な発生源です。世界の経済活動の結果としてGHG濃度が上がることで全地球的な気温が上がり、降水も含む気候が変わり、洪水・干ばつ・海面上昇・生物種の減少等の大きな被害が発生する、現に発生している、と専門家の意見は大方で一致しています。これらの被害は許容し難いので経済活動全般を抑制すべきだ、財を使わず燃料を燃やさず質素な食事をとり[※3]自動車を捨てよ、という主張もあります。一方で活動そのものは維持向上させながら技術革新でそれに伴うGHG発生を減らそうという考え方があり、現在こちらが主流です。これを専門用語ではデカップリング(分離)といいます。身近な例では冷蔵庫を省エネ型のものに転換したりガソリン自動車からハイブリッド車に乗り換えたりすれば(色々条件[※4]はありますが通常は)食品保存や移動といった経済活動を維持しながらエネルギー消費とGHG排出を減らせます。ところが人間活動の実に広い範囲からGHGは発生するので多くの対策が必要になりますし、ある対策に経済的資源を振り向ければその分だけ他の何かが出来なくなります。国や地域によっても森林のあるなしや現状の排出構造が違いますから、話はまたしても結構複雑です。

気候変動を抑制し被害を減らすために、どのような対策を、どの国で、誰が、どれだけ、いつまでにしなければならないか。それによって経済はどう変わるか。これを考えるのに(私のような[※5])研究者が色々な条件のシミュレーションをしており、計算上は経済成長を続けながら気候変動の抑制は可能です。計算上は可能と書きましたが可能は容易を意味しません。しかしこれは困難が不可能を意味しないのと同じです。見通せる範囲の技術的対策で可能であるということは、仮にそれが困難であっても、非常に素早く、広範囲な分野の技術革新を、強い政治的意思のもとで進めれば、窓はまだ開いている。多くの研究がありますが最近出たIPCCの1.5℃特別報告書が将来の経済成長を前提にしつつ気候変動の大胆な抑制について専門的にまとめていますので環境省の概要PDFにリンクはっておきますね。

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