【給付金晒す】男性が育休取得したらいくらもらえる?リアル算出と損しないためのテク6つ (あたりめブログ)

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男性が育休取得したらいくらもらえる?

今回はじゃけおさんのブログ『あたりめブログ』からご寄稿いただきました。

【給付金晒す】男性が育休取得したらいくらもらえる?リアル算出と損しないためのテク6つ (あたりめブログ)

男性が育休取得を検討するにあたっての切実な問題

こんにちは、じゃけおです。
先日こんなツイートをしました。

皆様が育休で金がなくなるだの宣うので給付金晒します。ご参考になれば幸いです。#男の育休 #育休しろ

特にバズったわけでもない(哀)ですが、これについて補足したいと思います。
男性にももっと育休を取ってほしいと思い、いろいろ情報発信をしているのですが、男性が育休を取得しない理由は主に3つあると考えます。

1.収入が減る
2.会社の雰囲気(迷惑がかかる、昇進に影響がある)
3.育児への関心が薄い(面倒だ、もしくは一人いれば問題ないと思っている)

このうち「心情と関係ない」要因である、1の「収入が減る」について、実際どんなもんなのよという話をしたいと思います。あわせて、取得する際に損をしないためのポイントもいくつか取り上げます。
簡単にまとめました。

 
収入はどれくらい減るか

1.会社勤めで収入差の少ない共働きの夫婦が一番育休給付金の恩恵を受ける
2.平均的な収入クラスで、夫が育休を取ると月額4.5万円の収入減になる
3.しかしその穴埋めをして働き続けても時給187円にしかならない

 
知っておくと損しないこと

1.もらえるのに2,3ヶ月かかるのであらかじめ余力を残そう
2.時短勤務は育休を取るよりも6.5万円損する可能性もある
3.育休は月末から月末まで取得する
4.ボーナスが出る月の月末を含める
5.父親のみ、育休を2回取得できる特例がある
6.育休取得前はアピール残業も可

「お金がないから」という込み入った事情

Twitterを見ていると、やはり「夫にも育休をとってほしいけど収入面が不安がある」といったようなツイートは多く見受けられます。
しかしそれは、そもそも男性にも給付金が支給されるという事実を知らないか、もしくは夫である自分に比べてもともと収入の少なかった奥さんへの給付金をベースに考えているから、かもしれません。
ご本人にとって絶対数が多くないのでこれ以上減らしたくないという場合もあるでしょうが……。

もちろん収入は減る。しかしどのくらい減る?

育児休業を取得すると、取得期間中は(会社の特別な福利厚生がない限り)無給になります。しかし、申請すれば育児休業給付金が支給されます。

大前提として育児休業に関する制度は法律で定められており、各企業の就業規則は(原則)関係ありません。また、制度について男女差はありません。男性も女性も等しく受けることができます。

育児休業中に出る育児休業給付金は、最初の180日間は休業開始前の賃金の67%、 以降から1年間までは50%給付されます。
(休業開始前とは具体的には休業開始前の6ヶ月間の平均賃金です。また受取には手続きが必要です)

当然、ある日突然自分の給料が3分の2になったらたいがいの人は困るわけですが、ここにはポイントがあります。あくまで「総支給額」から3分の2であり、なおかつ、「所得税・社会保険料免除」という点です。
一般的に、所得税・社会保険料は総支給額の14~15%を占めており、これを加味すると手取りベースでは8割くらいは確保できるのです。
毎月残業をされてるタイプの方であれば、「あまり残業しなかった月」くらいの感覚だと思います。

詳しくは以前の記事にも書いています↓

「【32歳で月平均23万円】男性の育休取得はメリットしかない件」2018年7月5日『育休パパの子育て記 “あたりめブログ”』
https://a-tarime.blogspot.com/2018/07/3223.html

恩恵を受けやすい人、受けにくい人がいる

本当はすべての旦那さまにおすすめしたいのですが、残念ながら恩恵を受けやすい人と受けにくい人がいるのも事実です。ここも正直に書きます。

まずそもそも「受けられる人」と「受けられない人」がいます。

 
育児休業給付金を貰える人の条件

・雇用保険に加入している
・育休中、休業開始前の給料の8割以上の賃金を支払われていない
・育休前の2年間のうちで、1ヶ月に11日以上働いた月が12ヶ月以上ある
・就業している日数が各支給単位期間ごとに10日以下である

上記の条件を満たしていれば、正社員でなくパートや契約社員でも受給対象になります。
育児休業給付金を貰えない人の条件

 
育児休業給付金を貰える人の条件

・雇用保険に加入していない
・妊娠中に退職する人
・育休開始時点で、育休後退職する予定の人
・育休を取得せず職場復帰する人

よって雇用保険がない自営業・フリーランスの方は受け取れません。
最近やたらTwitterに発生するフリーランス厨がサラリーマンはオワコンと啓蒙してますが子どもをつくる予定のある方は要注意ですね。(ブロガーなどで子育てのスキマ時間で仕事できる方なら良いのですが。)

で、恩恵を受けやすい人ですが、それはズバリ
いわゆる「サラリーマン(フルタイム正社員)」で「共働き」(かつ夫婦の収入差があまり大きくない)の方です。

 
1馬力と2馬力では相対的な恩恵が違ってくる

2馬力 1馬力

同じ世帯収入でも、内訳によって夫の育休取得のインパクトが変わる

たとえば、同じ「世帯収入850万円」でも
夫480万円・妻370万円の場合(※)、
夫:賞与が年2回・各回月給の1ヶ月分と仮定(÷14)して月額34.3万円 × 67% = 23万円
妻:同上の条件で月額26.4万円 × 67% = 17.7万円
23 + 17.7 = 月額40.7万円 が最初の半年間の収入になります。
(※)第一子出産年齢の平均:男性32.8歳/女性30.7歳(厚生労働省「人口動態調査」(2016年)*1 )とそれぞれの年齢の平均年収*2 から算出

*1:「人口動態調査 / 人口動態統計 確定数 出生」『e-Stat 政府統計の総合窓口』
https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?page=1&toukei=00450011&tstat=000001028897

*2:「平均年収ランキング 最新版(年齢別の平均年収)」『転職・求人doda(デューダ)』
https://doda.jp/guide/heikin/age/

妻のみ育休で夫が同じペースで働くと、手取りは概ね総支給の8割くらいなので
夫:34.3 × 0.8 = 27.4万円
妻:変わらず17.8万円
27.4 + 17.8 = 月額43.4万円、ダブル育休との差額は-4.5万円

いっぽう、同じ額でも、男性側の収入が100%の場合、
さきほどと同じ計算でいくと、850万円 ÷14 × 67% = 40.6万円 なのですが、
育休の給付金には、上限があります。
2019年8月1日以降は、304,314円が限度額なので、これが支給額になります。

・支給率67%の上限額……304,314円
・支給率50%の上限額……227,100円

厚生労働省ホームページ
https://www.mhlw.go.jp/content/000489680.pdf

※支給限度額は毎年同じ時期に見直されますので、都度確認してください。
※目安としては、育休開始前の6ヶ月の給料(総支給額)の平均がだいたい45万円あたりで、この上限額になります。

働いた場合の手取りが月額60.7 × 0.8 = 48.5万円 なので、夫が育休を取ると
48.5 – 30.4 で差額は18.1万円になってしまいます。

つまり:

・夫480万円、妻370万円の世帯……妻だけ育休とダブル育休で比べると差額は4.5万円/月
・夫850万円、妻無収入の世帯……夫フル勤務のままと夫も育休で比べると差額は18.1万円/月

 
月額4.5万円マイナスのために、毎日働くか、子ども・奥さんと過ごすか?

もちろん「月額4.5万円」のマイナスも見過ごせない数字ではありますが、4.5万円のためにあなたはおそらく残業や通勤含めて一日12時間くらいは会社に拘束されるわけです。
12時間×20営業日、240時間。時給187円
月240時間、奥さんとお子さんのために費やして、かつ働かなくて済むんです。
それでも取りたくないですか?

知っておくと損しないこと6つ

1. もらえるのに2,3ヶ月かかる

ここで躊躇される方も結構多いです。自分も休業開始から最初の支給日までおよそ3ヶ月空きました。
確かに出産費用も払うタイミングですし、当然貯金を切り崩すことになるわけですが、3ヶ月後にもらえることは確約されているものなので、計画的に準備できているとベターですね。

 
2. 時短勤務は育休より損する可能性もある

この手の話でよく登場するのは「育休せずに時短勤務」という選択肢です。しかし個人的にはあまりおすすめしません。

子育ても一日中忙しいわけではないので、早く帰ってきて夕飯作ってくれたらそれでいいのよ、という奥さんもいらっしゃると思います。しかし時短勤務は、育休をとるより手元に残るお金が少なくなる可能性が高いです。

再三書いているとおり、育休最大の(経済的な)メリットは、総支給の約2割を占める「所得税・社会保険料の免除」です。
時短勤務の場合、働くわけですから、給付金もなく、しかも所得税・社会保険料はそれまでのフルタイムで働いていたときベースの金額を支払わなければなりません。
自分も育休取得前に計算したのですが、育休を取らずに6時間勤務とかにしてしまうと育休の給付額よりも減ってしまうことがわかり、潔く育休を取ることにしました。

さっきの例だと、34.3万円時代が2時間残業だとすると、10時間から6時間になると4割減(= 0.6)
月額34.3万円 × 0.6 = 20.6万
20.6 × 0.8 = 16.5万円

23 – 16.5なので、育休を取るよりも6.5万円損するという逆転現象……!!
しかも会社に通勤すると、ランチ代などの余計な出費が発生しがちです。

 
3. 取得期間には月末を含めよう

社会保険料が免除に関してはいくつか条件があるのですが、いちばん大事なのがこれです。

保険料の徴収が免除される期間は、育児休業等開始月から終了予定日の翌日の月の前月(育児休業終了日が月の末日の場合は育児休業終了月)までです。免除期間中も被保険者資格に変更はなく、保険給付には育児休業等取得直前の標準報酬月額が用いられます。

日本年金機構 ホームページ
https://www.nenkin.go.jp/service/kounen/hokenryo-kankei/menjo/20140327-06.html

なにを言っているかわからねぇと思うが……と言いたくなりますが、大事なポイントが3つあります。

・育休を開始する月は、丸ごと1ヶ月分が免除対象になる
・会社に復帰した月は免除されない
・一ヶ月未満の場合でも、月末を挟めば免除される

実際の日付にあてはめるとこんなかんじ。

 
ケース1. 6ヶ月取得する場合

4/1 から 9/30 まで…… 6ヶ月分(4,5,6,7,8,9月)免除
3/31 から 9/30 まで……7ヶ月分(3,4,5,6,7,8,9月)免除
4/1 から 9/29 まで……5ヶ月分(4,5,6,7,8月)免除

 
ケース2. 数日間だけ取得する場合

4/1 から 4/7 まで…… 免除なし
3/30 から 4/5 まで…… 1ヶ月分免除

注意点としては、「給付金自体は給与が支払われている月は支給されない」ということです。
厳密には無給でなくても良いのですが、サラリーマンの方は「育休開始直前の月の給料日」が育休期間に入れないほうが無難です。特に給料日が月末の方は注意しましょう。

1支給単位期間において、休業開始時賃金日額(※1)×支給日数(※2)の80%以上の賃金が支払われている場合は、育児休業給付の支給額は、0円となります。
また、80%に満たない場合でも、収入額に応じて、支給額が減額される場合があります。
※1 休業開始時賃金日額は、原則として、育児休業開始前6か月間の総支給額(保険料等が控除される前の額。賞与は除きます。)を180で除した額です。
※2 1支給単位期間の支給日数は、原則として、30日(ただし、育児休業終了日を含む支給単位期間については、その育児休業終了日までの日数)となります。

Q&A~育児休業給付~(厚生労働省ホームページ)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000158500.html

 
4. ボーナスが出る月の月末を含める

ボーナス(賞与)がある方は、育休取得期間にボーナスの出る月の月末を含めることをおすすめします。
所得税・社会保険料免除はボーナスも対象ですので、通常ボーナスからガッツリ取られる所得税・社会保険料がまるまるなくなります。自分もたまたま時期がかぶったので、普段よりかなりウハウハなボーナスがもらえました。
制度の穴をついているように見えますが、そもそもボーナスは給付金の支給額を計算するときの収入には入らないので、むしろこれでおあいこにしてる感覚です。

なお、巷には「年末年始の数日だけ夫に育休取らせてボーナスの手取りを増やそう!」 的なライフハックがあるようですが、そんなことはせずに半年くらい取ってあげてください。

 
5. 父親のみ、育休を2回取得できる特例がある

育休の取得(というか給付金を得る権利)は男女とも、子ども1人につき1回が原則です。
しかし例外として、「配偶者の出産後8週間以内の期間内に、父親が育児休業を取得した場合、父親は特別な事情がなくてももう一度取得が可能」という規定があります。

これ、言葉のあやで若干わかりにくいのですが、厳密には「配偶者の出産後8週間までの間に1回めの休業期間が終わっている場合」という意味であり、「8週間時点で取得している人」という意味ではないです。
そりゃそうだろって話ではあるのですが、ここをはっきりそう書いてあるソースがあまりなく、自分も調べててつまずいた点だったので残しておきます。

 
6. 育休取得前はアピール残業も可

男性が育休を取得するときは、(本当はこんなことしなくても取れるのが良いのですが)「仕事は好き/復帰後も働き続けたい」という意思表示も大切です。また、労働時間が長く残業代が多ければ、育休の際に給付される額も多くなります。給付金は休業開始前の6ヶ月間の平均賃金をもとに算出するので、取得前にアピール残業しておくと給付金の額が増えます。
*ただし妊娠中の奥さんのケアは忘れないように!!

というわけで、「子どもができたからこれまで以上に仕事をがんばらなきゃ……」と思っていた皆さんにこそ使ってほしい制度です。
かくいう僕も、独身時代は最長残業時間月間140時間の元社畜でしたが、出産と育休を機に意識が大きく変わったので、読んでる皆さんにもぜひ体感してほしいです。

自分が支払った社会保障なのだから、堂々と使おう

男性の育児休業に関して最も闇が深いのは、企業側拒否不可の取得権利や給付金など制度的には特段問題ないのに【雰囲気的に取りづらい】というクソ謎理由で2017年度取得率5%(これでもYoY+62%)のクソ低水準なところ。しかも取得者の6割近くが5日未満。有休やん #男性の育休 #育休しろ

会社が立て替えてくれるものであれば申し訳なさを感じるのも無理ありませんが、育児休業給付金は国から出るもので、さらにその資金は我々が「そのために」納めている社会保険料です
子供ができたのに育児給付金を受け取らないのは、年金を納めたのに自らそれを受け取らないようなものです(それ自体は否定しませんが)。国から与えられた権利は胸を張って享受しましょう。

制度的には問題ないのに、風土のせいでその権利を使えないのはあまりにもったいないです。なにも「会社に新しい風土を作る」といった大義名分を背負う必要はありません。取りたい人が当たり前のように取れるようになってほしいものです。

ではでは。

本記事の初回公開は2018年8月30日ですが、その後複数の方から制度に対する誤認等のご指摘をいただき、
2019年10月7日に内容を一部変更して再公開しております。
情報提供をしてくださったみなさま、ありがとうございました。

 
執筆: この記事はじゃけおさんのブログ『あたりめブログ』からご寄稿いただきました。

寄稿いただいた記事は2019年10月11日時点のものです。

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