人手不足解消に期待される「特定技能」制度の課題とは?
特定技能制度とは?
2019年4月1日から、外国人が日本で就労するための新しい在留資格である「特定技能」が創設されました。「特定技能」は、介護、建設、宿泊など14の業種に特定して、外国人が日本で就労することが認める在留資格です。
これまでは、日本で就労できる外国人は、高度な専門知識や技術が求められる職に就いた人や、日本人と結婚した人などでした。留学生や家族として日本に滞在する外国人は、許可を取れば就労できますが、一週間に28時間という時間の制限があります。フルタイムで就労できる時間と能力があったとしても、「在留資格」の都合で、働けない外国人がたくさんいます。
「特定技能」は、「外国人が日本で働く」をこと認める新しい制度です。
人手不足解消に期待される特定技能制度
長い間、外国人を働き手として受け入れてこなかった日本が、外国人を働き手として受け入れることを決めた理由は、「人手不足」です。ここ数年「技能実習生」を多くの企業が受け入れていますが、「技能実習」は日本で技術を習得して本国に持ち帰るための制度です。にもかかわらず、企業による「技能実習生」の酷使が問題視されるようになりました。
「特定技能」外国人を受け入れるにあたって、法務省は新たに「登録支援機関」を創設しました。「登録支援機関」は、「特定技能」外国人の日本での生活を総合的に支援するための機関です。
特定技能制度の課題
長年、日本で暮らす外国人支援に関わってきた私は、法務省に申請して、社会保険労務士事務所として「登録支援機関」の登録を受けました。「特定技能」も「登録支援機関」も始まったばかりで、全くの手探り状態で動いていましたが、先日、「特定技能」の「外食」に合格したというベトナムの女性と会う機会がありました。
彼女は、日本語学校から調理関係の専門学校に進学し、「特定技能」の試験に合格したのですが、まだ就職先が見つかっていません。彼女は、専門学校卒業と同時に、在留資格を「留学」から「特定活動」に切り換えました。「特定活動」は就職準備をするために認められた在留資格で期限があります。もし、期限内に就職先が見つからなかった場合は、せっかく試験に合格したのに、彼女はベトナムに帰国しなければなりません。人手不足で苦労している日本の外食産業も、貴重な人材を一人失うことになります。
「技能実習」から「特定技能」への移行も可能なので、技能実習生がそのまま同じ職場で「特定技能」として働くことになった例はあります。しかし、留学生などが「特定技能」の試験に合格したからといって、すぐに就労に結びつかないのは、この制度の現在の課題だと思います。「特定技能」試験は、日本国内だけではなく、海外でも行われます。
海外で合格した人が、どうやって日本での就職先を見つけるのか。また、人材を求めている企業が、どうやって海外にいる人材と接触するのか。「特定技能」制度が、軌道に乗るためには、しばらく時間がかかると推察します。
(小倉 越子/社会保険労務士)
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