「ジブリ映画の聖地」で手足のないトカゲが好かれている理由とは?

「ジブリ映画の聖地」で手足のないトカゲが好かれている理由とは?

爬虫類がいると気づけばものすごい勢いでハントしに行き、猛毒を持っていてもお構いなしに立ち向かう。『クレイジージャーニー』(TBS系)や『ザ!鉄腕!DASH!!』(日本テレビ系)などでおなじみの“爬虫類ハンター”加藤英明さんのハント姿は、視聴者から「少年のようだ」という声があがるほどです。

そんな加藤さんがハントしてきた爬虫類は、テレビで紹介されたものだけではありません。ジャングルや自然豊かな孤島だけでなく、実は世界遺産の街のすぐ側でも珍しい爬虫類を見つけることができます。

『マンガでわかる! 世界のすごい爬虫類: 加藤英明の爬虫類ワールドハンティング』(加藤英明著、誠文堂新光社刊)では、「アドリア海の真珠」と呼ばれる美しい街の片隅で繰り広げられている爬虫類たちの熾烈な攻防が紹介されています。

■手足がないトカゲとヘビの見分けは「〇〇」があるかないかで判別する

その街とはクロアチアのドブロブニク。

スタジオ・ジブリの映画『魔女の宅急便』や『紅の豚』の舞台のモチーフともいわれており、「ジブリ映画の聖地」という異名もあるとか。

イタリアやクロアチアなどに囲まれるアドリア海の沿岸にあり、リゾート地と絶景が有名なこの街は、1979年には旧市街が世界遺産に登録されています。

そんな穏やかな都市の片隅で、珍しい爬虫類たちが熾烈な攻防を繰り広げているといいます。

アシナシトカゲはその代表例。

端から見るとヘビにしか見えないのですが、れっきとした足がないトカゲです。ヘビとの違いの判断ポイントは次の通り。

・ヘビはまぶたがないがトカゲにはまぶたがある。

・ヘビには耳の穴がないが、トカゲには耳の穴がある。


比較画像を見ると、心なしかトカゲの方がイケメンに見えます。

さらに大きな違いが食事の方法です。ヘビはエサを丸呑みしますが、トカゲは噛む力が発達しているため咀嚼してから飲み込みます。

■アシナシトカゲが世界遺産の街の人たちから受け入れられている、その理由は?

では、なぜクロアチアにアシナシトカゲが生息しているのでしょうか。

加藤さんはその理由をアドリア海沿いの山々の地質に求めます。ここは石灰石質の山肌でところどころにすき間があり、そこに棲む爬虫類たちは天敵があらわれると、そのすき間に入り込みます。

つまり、トカゲでありながら手足がないアシナシトカゲは、岩のすき間に逃げ込むときに邪魔になる手足を小さく退化させていったと考えることができるのです。

手足がないというトリッキーなフォルムのアシナシトカゲですが、現地の人からは「害虫(カタツムリ)を駆除する」、そして「毒ヘビを食べる」ということで好意的にみられている様子。

毒ヘビは普通のトカゲを食べ、その毒ヘビをアシナシトカゲが食べるという食物連鎖がドブロブニクの片隅で繰り広げられていたのです。

『マンガでわかる! 世界のすごい爬虫類』はクロアチアだけでなく、インドネシア、ガラパゴス諸島、アメリカ、キルギスなど8つの地域に生息する爬虫類たちを加藤さんがマンガと写真を通して解説する一冊。とてもユニークな野生の爬虫類たちが続々登場します。

加藤さんは静岡大学教育学部の講師で、世界中の爬虫類の生態調査を行う研究者。最後に、彼が猛毒を持つ爬虫類に自ら向かっていく理由について触れておきましょう。その答えは本書の冒頭に説明されています。

実際触れてみて分かる爬虫類の体の作り方や特徴、力強さなど、些細な事実が生態の解明に繋がる貴重な情報源となります。

なかには危険な毒をもち捕まえることで命を落としかねないヘビやトカゲもいますが、それに屈していては未知の生き物は未知のまま。(p.3より)

私たちは、こうした研究者の努力と好奇心によって爬虫類の生態を知ることができているのです。

加藤さんの爬虫類への愛が詰まった、その世界の奥深さを探検できる一冊です。

(新刊JP編集部)

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