ホラー映画『アス』を作る上でジョーダン・ピール監督が影響を受けた恐怖映画9本[ホラー通信]

『アス』ジョーダン・ピール監督

コメディアンとして活躍しながらも、監督デビュー作『ゲット・アウト』で一躍人気ホラー監督となったジョーダン・ピールの最新作、『アス』が9/6より公開。

『アス』は、ドッペルゲンガーの恐怖を題材にした物語。主人公アデレードが夫と子供二人を連れて故郷のサンタクルーズに帰ってくるが、不気味な偶然に見舞われた事で、過去の未解決なトラウマがフラッシュバックする。“家族の身に恐ろしい事が起こる”という妄想を強めていくアデレード。その夜、家の前に自分達とそっくりな“わたしたち”がやってくる……。

本作を作る上で、ジョーダン・ピール監督が影響を受けたという恐怖映画9本をご紹介する。

1.『鳥』

アルフレッド・ヒッチコック監督/1963年/アメリカ

『めまい』『サイコ』などのアルフレッド・ヒッチコック監督によるパニック・サスペンス。若きソーシャライトのメラニー・ダニエルズは、ペットショップで出会った弁護士のミッチ・ブレナーに興味を持ち、彼を驚かそうとラブバードをプレゼントするが、その帰り道、突如カモメに襲われ怪我を負う。奇妙な出来事に不安を隠せないメラニーだったが、あくる日も、鳥の大群が人間を攻撃するところを目撃する。

2.『ローズマリーの赤ちゃん』

ロマン・ポランスキー監督/1968年/アメリカ

『戦場のピアニスト 』などのロマン・ポランスキー監督によるオカルトホラー。マンハッタンの古いアパートに引っ越してきた若い夫婦。やがて妻のローズマリーは身籠り、隣人の奇妙な心遣いに感謝しながらも、妊娠期特有の情緒不安定に陥っていく。彼女は、アパートで何か不気味なことが進行している、という幻想にとり憑かれていた。

3.『ナイト・オブ・ザ・リビング・デッド/ゾンビの誕生』

ジョージ・A・ロメロ監督/1968年/アメリカ

ゾンビ映画の父として知られるロメロ監督による、ゾンビ映画の第一作目。墓参りにやってきたジョージと妹のバーバラ。そんなふたりに、甦った死体が襲いかかる。ジョージは格闘の末に死亡し、近くの家に逃げ込んだバーバラは他の避難者たちと合流する。しかし一行は死者の襲撃を前にしながら対立。ゾンビの群れは容赦なく押し寄せてくるが……。

4.『エイリアン』

リドリー・スコット監督/1979年/イギリス

2087年。資源を積んで地球に帰還するノストロモ号は、とある惑星で正体不明の地球外生命体に遭遇。乗組員の体内に寄生したエイリアンはその腹を食い破って逃走し、仲間たちは船内で次々とエイリアンの餌食になっていく。最後に残された女性乗組員のリプリーは正体不明の生命体を相手に一人闘うことに……。

5.『シャイニング』

スタンリー・キューブリック監督/1980年/アメリカ

スタンリー・キューブリック監督による名作ホラー。小説家志望のジャック・トランスは、妻と息子と共に、冬の間、豪雪により閉鎖されるホテルに管理人として訪れる。しかし、そのホテルではかつて精神に異常をきたした管理人が家族を惨殺するという事件が起きており、何の因果か、次第にジャックも邪悪な意思に飲みこまれていく。2019年冬に続編『ドクター・スリープ』の公開が決定している。

6.『エルム街の悪夢』

ウェス・クレイヴン監督/1984年/アメリカ

その後リメイク版も制作された人気ホラー作品。高校生のナンシーは、鋼鉄の爪を持った恐ろしい男フレディ・クルーガーに追われる夢に毎晩うなされていた。そしてある夜、彼女の体には夢の中で負ったはずの傷が現実に残っており……。ジョニー・デップのデビュー作でもある。

7.『愛と死の間で』

ケネス・ブラナー監督/1991年/アメリカ

本作がハリウッドデビューとなったケネス・ブラナー監督によるサイコ・サスペンス。私立探偵のマイクはある日、一人の記憶喪失の女の面倒を見ることになる。催眠術により彼女の失われた記憶を調査する一方で、いつしか互いに惹かれ合うようになる二人だったが、前世で二人の間で起こったある惨劇を知り…。

8.『自殺サークル』

園子温監督/2002年/日本

『愛のむきだし』などの園子温監督による異色サスペンス。新宿のプラットホームで楽しげにおしゃべりをする女子高校生54人は、ホームに入ってきた列車の前に、手をつないだまま飛び降りた。同じ頃、各地で集団自殺が次々と起こり始める。事件なのか事故なのか。警視庁の刑事・黒田と渋沢はなんとか集団自殺をくい止めようと奮闘するが……。

9.『箪笥』

キム・ジウン監督/2003年/韓国

韓国の古典的怪談「薔薇紅蓮伝」を独創的な映像美で映画化。ある日、ソウル郊外の一軒家にスミとスヨンの美しい姉妹が長期入院を終えて帰宅。継母は二人を笑顔で迎えるが、姉スミは彼女を毛嫌いし、スヨンは怯えていた。その夜、実母の悪夢を見たことを発端に、次々と怪奇現象が起こるようになる。

ジョーダン・ピール監督作『アス』場面写真

上記9本の中でも、ジョーダン・ピール監督は『エイリアン』を絶賛する。「『エイリアン』ほど独創的かつ巧妙にデザインされた作品はない」「今日まで人気を誇っているだけでなく、唯一無二のエレガントなモンスターや新しい舞台環境を生み出した名作だ。魔法のような映画としか言いようがない」

また『ナイト・オブ・ザ・リビング・デッド/ゾンビの誕生』からは特別に強い影響を受けている。「『ナイト・オブ・ザ・リビング・デッド/ゾンビの誕生』は映画の中で声高に人種について語られてはいないが、あれは人種を題材とした作品だよ。私も『アス』でその流れを受け継ぎたかった」。社会的なメッセージを作品に入れ込むのはもはやジョーダン・ピールのトレードマーク。ジョーダン・ピールはしっかりとジョージ・A・ロメロの系譜をたどっている。

またアルフレッド・ヒッチコックの大ファンというピール監督は、『アス』の舞台について『鳥』から影響を受けたと語る。「サンタクルーズには遊園地やボードウォークがあって楽しい雰囲気にあふれている。そういったのどかな場所で恐ろしいことが起こった方が面白いと思った」。ピールは『鳥』を参考に、あえて不気味な古家や森の中のキャンプ場といったホラー映画の定番とも言えるロケーションを避けた。

音楽で参考にしたのは『ローズマリーの赤ちゃん』や『エルム街の悪夢』だ。これらの作品の音楽について「なじみがなくて“間違っている感じ”がすると同時に、拍子抜けするくらいに気分が上がるサウンド」と語る。本作の冒頭で流れる「ザ・テザードの賛歌」にも当初「これはナシだ」と首をかしげるが、何度も聴いているうちになじんでいき、『ローズマリーの赤ちゃん』の子守歌や『エルム街の悪夢』の音楽に通じるものを直観したそうだ。


動画:『アス』サウンドトラックより『ザ・テザードの讃歌』

『アス』
9/6(金)TOHOシネマズ 日比谷他、全国ロードショー

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レイナス

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