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アイデアとロジックの名手!

アイデアとロジックの名手!

 草上仁、ひさしぶりの作品集である。草上さんは〈SFマガジン〉をホームグラウンドとしてコンスタントに作品を発表しているのだが、このごろの長篇偏重の出版事情のせいか、なかなか一冊にまとまらなかった。コアなSF読者およびプロ作家のあいだでは、草上作品の評判は高く、こんかいの『5分間SF』はかねてより待ち望まれていた、ちょっと大袈裟にいえば慈雨のような一冊である。YOUCHANの装画もシャレている。

 そのタイトルのとおり、通勤でも生活でもかまわない、ちょっとしたあいまにさらっと読めるショートショートが十六篇収められている。

 若きライジングスター田丸雅智さんの登場以来、ショートショート・ルネッサンスのような様相を呈しているが、もちろん、その前から才能ある書き手は数多くいて、それぞれ独自の作風で競ってきた。そのなかで、もっとも伝統的なSFの良さを受けついでいるのは草上仁だろう。フレドリック・ブラウンやロバート・シェクリイの切れ味の良い短篇を思い浮かべていただければよいだろう。要になるのはアイデアとロジックだ。草上作品は、そこに現代的な洗練が加わる。

 収録作品のなかでは、とくに「断続殺人事件」が秀逸。時間SFの新基軸にして、ミステリ的な興味もふんだんにこらされている。男を恨んで「何度も殺してやる」と宣言した女が、巧妙な手段でそれを実行する。語り手は時間警察官で、女の犯行を阻止しようと待ち構えている。「今度こそ、捕まえてやる」。

 タイムトラベルSFの常套からすれば、犯行がわかっているのなら、先回りできる警察官(タイムパトロール)のほうが有利だ。しかし、犯人の女には秘策があった。人を殺す方法はひととおりではなく、時間警察の予想をあっさりと超えていく。なによりも「因果律は消えても、記憶は消えはしない。それに憎しみも」の独白に戦慄する。

「半身の魚」は、ロジックのヒネリが効いた一篇。異星の砂漠を歩きつづけた語り手が、ようやく小さな池にたどりつく。そこでは男が釣りをしていた。男は釣りあげた魚を手早くさばき、半身を語り手に提供する。男はこう言う「この魚は、尽きることがない。ただし、勝手に取るな。ここは、私は管理している」。

 しかし、語り手は言いつけをまもらない。「尽きることがないなら一匹くらい良いだろう」とひそかに一匹釣りあげ、丸々一匹喰ってしまう。それが悲劇を引きおこすとも思わず……。

「マダム・フィグスの宇宙お料理教室」は、想像力のおよぶかぎりをつくしたゲテモノ物料理の描写が楽しい。料理研究家のマダムは料理実況をしながら、助手に「ちょっと、手伝ってちょうだい。(略)このハンドショットを持ってて、飛び出してきたら撃つのよ」などと指示をする。うわっ、揚げていると、甦ってくる食材とは!

 この「お料理教室」はシリーズもので、まだ未収録の作品がいくつもある。面白いけれどいっぺんに読むと胸焼けするので、これから草上さんの作品集を継続してつくり、そのなかに一篇ずつ収録するとよいと思う。早川書房さん、ぜひ!

(牧眞司)

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