コンビニが団地で生活支援! 1号店「セブン-イレブンJS森之宮団地店」反響は?

コンビニが団地で生活支援! 1号店「セブン-イレブンJS森之宮団地店」反響は?

大阪市城東区にあるUR賃貸住宅・森之宮&森之宮第二団地は総戸数約2000戸の大型団地。JR大阪環状線の車窓からも望むことができるこの団地に、今までにないタイプのコンビニが誕生したという。さっそく現地を訪ねてみた。

高層棟の1階に登場した「セブン-イレブンJS森之宮団地店」

JR大阪環状線&大阪メトロ中央線「森ノ宮」駅から徒歩数分、幹線道路に面し、利便性の高い立地の森之宮団地。この5号棟の1階部分に2019年5月10日にオープンしたのが「セブン-イレブンJS森之宮団地店」だ。現地を訪ねてみると、片側2車線の道路に面した「団地の顔」となる場所に、見慣れた「セブン-イレブン」の看板があった。コインパーキング形式の駐車スペースもあり、一見したところ他店との違いは分からない。マンションの1階がコンビニというスタイルは都市部ではよく見かけるし、あえて探すなら「JS」という文字が入っているところが違いだろうか?(左)15階建ての高層棟の向かいには大型の医療機関(右)JSという文字が入った看板は珍しい?(写真撮影/井村幸治)

(左)15階建ての高層棟の向かいには大型の医療機関(右)JSという文字が入った看板は珍しい?(写真撮影/井村幸治)

何が新しいのか? UR都市機構 西日本支社住宅経営部ウェルフェア推進課の高橋俊氏にお聞きしてみた。

「URでは初となる、生活支援サービス拠点としてのコンビニエンスストアという点がポイントです。2016年度から検討を始め、試行店の運営などを重ねて、本格展開の全国1号店となります。通常のコンビニ機能に加えて、団地の管理窓口の営業時間外には集会所の鍵や駐車場ゲートコインの貸し出しを行います。また、森之宮団地と森之宮第二団地にお住いの方への商品配達サービス、多世代コミュニティづくりを目的とした掲示板設置、パンフレットの配布などを実施しています」とのこと。

団地住民の生活支援サービスの拠点となること、同時に住民同士のコミュニティづくりの拠点となることを目指している点が一般のコンビニとの違いになりそうだ。

500円以上で団地の部屋まで配達をしてくれる!

配達サービスは森之宮&森之宮第二団地の居住者限定で500円以上の購入で無料配達を行ってくれる。トイレットペーパーなどかさばるもの、お米やお水など重たい商品も含めてお店の商品は全てが対象。翌日の昼食・夕食の配達もオーダーできるし、電話・FAXでの注文も可能だ。高齢の方には助かるサービスだし、普段から顔を知っているスタッフが配達にも来てくれるという安心感もあるだろう。レジの下には配達サービスの告知があった(写真撮影/井村幸治)

レジの下には配達サービスの告知があった(写真撮影/井村幸治)

団地住民に対して行った事前アンケートによると、大型スーパーは森ノ宮駅周辺の徒歩圏にあるのだが、幹線道路を横断して買い物にいくのがおっくうになるとの、心理的なハードルから生鮮食品も扱ってほしいとの声が上がっていた。その結果も踏まえて野菜など食料品の取り扱いも増やしている。野菜などの生鮮食料品も販売(写真撮影/井村幸治)

野菜などの生鮮食料品も販売(写真撮影/井村幸治)

店内の掲示板では、集会所で開催されるヨガ教室の案内など、コミュニティを活性化する情報を提供。このほか、AEDの設置もしており、緊急時に対応する場としても期待されている。また、店頭の屋根付きスペースに3つのテーブル席を設置することで、自然なコミュニケーションが生まれるようにしているとのことだ。店内の掲示板には団地内のイベントも告知されている(写真撮影/井村幸治)

店内の掲示板には団地内のイベントも告知されている(写真撮影/井村幸治)

店員にも気さくに話しかける、大阪のお客さん!

オープンから約3カ月が経過し、住民の反応はどうなのか?運営を担っている日本総合住生活株式会社(JS)事業企画課副長で店長の那須俊吾氏にお客さんの反応をお聞きしてみた。

「ご好評をいただいています。想定した以上に高齢のお客様が多いですね。高齢者に特有の反応も含めて、これまでの接客経験からいくつかの特徴や課題も見え始めてきました」とのこと。お聞きした特徴を整理してみた。

【特徴 その1】買い物を楽しみたいから店に来る

団地住民には無料配達のサービスを実施しているので、高齢のお客様には「次回から家までお届けしましょうか?」とレジで申し出ると「いや大丈夫、お店に買い物に来るのが楽しみだから、自分で来るよ」という方が結構いるそうだ。必要品を手に入れるだけの場所ではなく、散歩感覚、散歩や、自宅以外の外の空気に触れることを楽しむ目的で店を訪れる方が多いのだろう!

【特徴 その2】店員にとても気さくに話しかける

「あんた、5階の●●さんの息子さんやな、大きなったなぁ、がんばりや」と、スタッフにとても気さくに話しかけるお客様が多いそうだ。実は、スタッフの約4割は団地住民が担っており、地域の雇用創出にもひと役かっている。そのため「店員さんは知り合い」というケースも多いことで、コミュニケーションが生まれやすいのだろう。もうひとつ「買い物は店員さんとやりとりすることが当たり前、それが楽しい」という大阪特有の距離感もありそうだ。私の友人にもコンビニ店員さんにいつも話しかける人がいるが、東京ではあまり見かけない風景だと思う。ただし、「値段、まけてや!」という本気の値引き交渉はないようだ(笑)。

【特徴 その3】店頭のテーブルは「お茶会」の場に

店舗外側のテーブル席も想定以上に利用されていて、“お年寄りの社交場”となりつつある。淹れたてのコーヒーが買え、お茶菓子もそろっていて雨にも濡れない。朝早くからお友達同士が集まって数時間おしゃべりしていることも増えているとのこと。“団地カフェ”の誕生だ(笑)。店頭にはテーブル席があり、のんびり時間を過ごす方も多い(写真撮影/井村幸治)

店頭にはテーブル席があり、のんびり時間を過ごす方も多い(写真撮影/井村幸治)

【特徴 その4】孫が遊びに来る機会が増えた

「孫と一緒に買い物に行ける場所ができてうれしい」という声もあった。お孫さんが「おばあちゃんの家に行って、コンビニでアイスを買ってもらうのが楽しみやねん」と言ってくれるそうだ。コンビニのお陰で、孫が来てくれる回数が増える……これもコミュニティ創造効果のひとつと言えそうだ。

【特徴 その5】商品に関するさまざまな要望

「いつも使っている角砂糖はないの?」「●●カレーが欲しいの」「健康器具は置いてないの?」などなど、商品や品ぞろえに対する細かな要望の声が多いそう。特に高齢の方は長年培ってきたこだわりや商品への愛着があるのだろう。しかしコンビニのスペースと品数は限られている。「角砂糖はないからスティックシュガーではどうでしょうか?」「XXXカレーはないけれど、このブランドの商品はいかがでしょうか?」というように細やかに案内をすることで理解してもらうとのこと。新しく紹介したものを「これ、おいしかったわ」と喜んでいただけると、スタッフも笑顔になるそうだ。トイレットペーパーなど日用雑貨も豊富にそろう(写真撮影/井村幸治)

トイレットペーパーなど日用雑貨も豊富にそろう(写真撮影/井村幸治)

団地の住民に、もっと認知度をあげていくことが課題

一方で課題も見えてきたという。

「団地の住民へのコンビニ認知ですが、まだ100%には至っていないように思います。分かりやすい場所にはありますが、日常の動線が違うと気が付いていない人もいらっしゃるようです。認知度アップをはかり、コミュニティの一員となるために5月には森ノ宮フェスティバル、8月の盆踊り(予定)といった地域イベントにも積極的に参加しています」と話すのはJS住生活事業部事業企画課長の北野雅之氏。

認知度アップには団地住民を代表する自治会もバックアップしてくれている。自治会とも定期的にミーティングを行っている北野氏によると、今年(2019年)6月に大阪で行われたG20の際には、商業施設や交通機関が自粛営業など大きな影響を受け「コンビニは臨時閉店するの? 変更があるなら自治会で広報するよ」との声を掛けていただいたそうだ。「自分たちの店なので、つぶしたくない、自分たちで支えていく」「つぶれたら元も子もないので、ぼちぼち頑張って長く続けてほしい」といった温かい声をいただいているとのこと。コンビニの裏側、団地の中庭は静かな空間(写真撮影/井村幸治)

コンビニの裏側、団地の中庭は静かな空間(写真撮影/井村幸治)

ウェルフェアの取り組みの一環として位置づけられるコンビニ

「自分たちの店」という言葉はとても重要なフレーズだと思う。

他人事ではなく、自分事として考える人が増えると、事業や組織は活性化していくもの。この団地ではコンビニの開店によって着実に新しい団地コミュティが育っているように思う。取材させていただき、そんな感想を話しているとUR都市機構ウェルフェア推進課の石井里絵氏が改めて解説してくれた。

「私たちウェルフェア推進課は、団地という住み慣れた住まいで、より長く住み続けていただくために住宅提供者として何ができるかという課題に取り組んでいます。その仕掛けのひとつが生活拠点サービスの拠点となるコンビニの誘致なのです。ほかにも、城東区や隣接する大型医療機関、薬局ともこの団地との連携を進めています」とのこと。

なるほど! ウェルフェアの推進という大きなミッションの取り組みの一つとして、団地でのコミュニティづくりがあり、その実現策としてコンビニ誘致があるのか。合点がいった。UR都市機構の石井里絵氏と高橋俊氏(写真撮影/井村幸治)

UR都市機構の石井里絵氏と高橋俊氏(写真撮影/井村幸治)

コンビニが団地の鉄の扉を開かせるきっかけになってほしい

このような形態での団地内コンビニは今後も拡大を進めていく方針とのこと。コンビニ出店のスペースを確保しやすい中層&高層住宅で、一定規模の住戸数がまとまっている団地が候補として挙げられそうだ。

「高齢者には鉄の扉を開けて、外に出て行くこと自体がおっくうに感じる人もいる」。

これは以前、団地の取材で聞いた言葉だ。団地の鉄の扉を開かせるきっかけとして、各地でコンビニが活躍してくれるといいなと思う。●取材協力

UR都市機構ウェルフェア情報サイト
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