コンビニ弁当と地方分権

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mekaag

期限切れ間近のコンビニ弁当の値引き禁止は不当であるという流れになったらしい。環境に優しくないし各店舗の裁量を不当に制限している、と。

まあそれはその通りなんだけど、そもそもの問題はそういうことではなくて、コンビニオーナーの苦しい経済的立場なのだろう?そこから苦し紛れに期限切れで破棄される弁当も値下げして売ることができれば少しはマシになるという話が出てくる。環境云々は後付けの理由に過ぎない。

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しかしこれは勘違いしているのではなかろうか。制限を外して自由競争の範囲を広げれば、基本的に当事者は更に苦しくなる。生き残りをかけて自由に競争するのだからね。

俺は基本的に「自由競争=善」という立場をとるが、それは巨視的には社会の文化や文明の発展につながると考えているから自由競争を肯定しているのであって、競争する当事者にとってはそれはむしろ非常に辛い社会だ。自由競争のメリットというのは社会のためであって、個人の幸せののためではない。個人の苦痛を原動力に社会全体を発展させようというのが自由競争だ。

弁当の値下げを各店舗の裁量に任せれば店舗間で過当競争が進み、結局はすべての店舗の売り上げが落ちるのは目に見えている。店舗のオーナーは他店はそのままで自分の店だけが値下げした状況をイメージしてるのだろうけれど、他店が自分のところより値下げしたらどうするのか考えないのだろうか。

いや、考えてはいても目の前の苦境でそこから先のことまで冷静に分析する余裕がないのだろう。「とにかく現状ではもう限界だ。良くなるか悪くなるかは分からないが、現状を変えたい」と。

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なんか現在の日本の縮図のような気がする。東国原知事や橋下知事は地方分権を進めれば様々な問題が一気に解決すると言わんばかりだ。国という大規模な官僚組織で上手く処理できない問題を地方という小規模な官僚組織なら上手く処理でいるというのは安直な発想だと思う。

もちろんこれまでダムや箱物など無意味な口実でしか国から金を引き出せない病んだ行政システムは問題だろう。何らかの方法で改善しなければならない。しかし地方に権限を移せば魔法のように問題が解決するのだろうか。今度は地方の有力企業などが利権をむさぼり自分たちが得するような事にばかり地方自治体に金を使わせることになると思う。実際に現在も地方の公共事業なんてそんな感じではなかろうか。

地方分権を進めたら地方自治体同士で利害の競合が増えるだろう。九州と東京が経済で対等に競争できるとは思えないから、当然そのハンデを埋める仕組みが必要になるはずで、結局それは中央政府に頼らなければならない。地方分権に走りすぎれば結局は規制緩和と同じ弊害が出てくる。少なくとも不景気にあえぐ現在の日本がそれをやっても、地方が幸せになるとは思えないんだけどね。

「もっと地方に金をよこせ」と言うのなら分かるが、「権利(自由裁量)をよこせ」というのは……。つまり自己責任の範囲を広げろってことだよね。本当にあなたたちそれが欲しいの?それで幸せになれるの?と思ってしまう。

(こちらの記事はメカAG様のブログより寄稿頂きました : 元記事はこちら

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