共働き世代を襲う「パタハラ」の恐怖…今からできる”4つの備え”とは?~川崎貴子の「チーム家族」痛快コラム

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共働き世代を襲う「パタハラ」の恐怖…今からできる”4つの備え”とは?~川崎貴子の「チーム家族」痛快コラム

仕事が終わってからも、家事に育児にと時間に追われ、気づくと寝落ちの日々…。家事も育児も積極的に行う男性も増えてきたとはいえ、「家庭のことは女性」という認識はまだ根深く、共働き妻の悩みは尽きません。そんな女性たちを応援するこの連載(→)。女性のキャリア支援や結婚コンサルタントまで幅広く活躍中の川崎貴子さんから、家族を「チーム」としてとらえ、より効率的に日々を運営していくアドバイスをいただきます。

今回は「うちの夫が会社でパタハラに遭ったらどうしよう…!」という不安と疑念を抱える共働き妻たちへ、今できる事、夫と話しておく事をお伺いしました。

パタハラとは

パタニティ(父性)ハラスメントの略。男性が職場において、育児を理由に休業、短時間勤務、フレックス制度を利用しようとする際に、上司や同僚などから妨害を受ける事を表す

厚生労働省の「平成30年度雇用均等基本調査(速報版)」によると、現在、男性の育休取得率は6.16%。

過去最高値(微増)とはいえ、女性の育休取得率82.2%、政府が発表している2020年の男性育休取得率目標13.0%という数字から見ると「低迷している」と言っても過言ではありません。

少子化対策として統計をスタートしたのが1996年ですが、「2012年には10%」と掲げた目標が達成できずに先送りとなり、2020年の目標も現在の数字を見る限り未達に終わりそうです。

夫の育児参加を阻み、妻がワンオペ育児になる根本原因

夫婦共働きがスタンダードになり、積極的に子育てをしたい男性が増加した令和の日本で、なぜ男性育休取得率が上がらないのか?

その根本原因が浮き彫りになるような「パタハラ」疑惑ツイートがSNS上を席巻したのは記憶に新しいでしょう。

「育休を取得した夫が復帰後数日で遠方に転勤内示」

「建てたばかりの家に引越してすぐ」

「2歳児は保育園に入れたばかり、0歳児は入園決定したばかり」

「妻は復職まで2週間」

「転勤時期を交渉しても会社は取り合わず」

「退職時期を交渉しても有休消化も認められず」

「住宅ローン支払い開始月に夫が退職」

「産後4カ月で妻が4人家族の大黒柱に」

真相は分からずも、数々のパワーワードが散りばめられたこのツイートは

似たような環境下にいる多くの共働き夫婦を震撼させた事でしょう。

そんな私も、これを機に次々と出てくるパタハラ問題を聞くにつれ

「そりゃ少子化にもなるわ!」「ワンオペ育児にもなるわ!」

と心の中で叫び、メラメラと怒りを鎮火できずにおります。

過去には某証券会社でも、つい先日も某スポーツメーカーでもパタハラ問題が顕在化しましたが、これらは氷山の一角にすぎないのでしょう。

以前から会社によっては「サラリーマンに転勤はつきもの」的なイメージは一般的にありますし、転勤内示は法律違反ではありません。

しかしこのご時世において、会社側の「一切の事情は配慮しない」という頑なな姿勢は、育休を取った男性へのいじめ・周囲へのみせしめだと受け取られても仕方がないように感じます。(ほんと、軍隊かよ…)

よしんば、本当に本当にパタハラをうけた彼らの代わりの人材が「一人も」おらず、それも彼らの育休明けすぐに「たまたま」必要だったとしても

「社員の家庭の事情を全く考慮しない辞令を強行するのは、本人やほかの従業員のモチベーションに悪い影響を与えるのではないか?」

「本人や家族から恨みを買うのではないか?」

「このタイミングだとパタハラに見えてしまいかねないから止めよう」

と、方向転換しなかった上司と組織の危機管理能力に大きな疑問が残ります。

女性が育休を取って復帰できる体制が、やっと8合目ぐらいまで到達したというのに(マタハラ問題、保育園落ちた日本死ね問題など未だ深刻ですが)

男性が当たり前に育休を取れる山(世の中)は、どうやらそれ以上に高く、険しそうです。

他人事ではない「パタハラ」問題、今からできる事

しかし、憂いていてもしかるべき有事に対処はできません。

夫がイクメン、そして勤め人であれば誰しもが他人事ではないこのパタハラ問題に、家族でどのような「備え」や「心構え」が必要かを今回シェアしたいと思います。

1.社内の情報収集に励むべし

会社が例え「くるみんマーク」(*子育てサポート企業の証)を取得していたとしても、実際の所、男性が育休を取得する事に対して会社はどのようなスタンスなのかを実績や予定の有無をしっかり調べましょう。

実績があるならば

・育休はどの程度の期間が許容されるのか?

・育休明けのポジションや仕事内容、諸々の処遇はどうなったのか?

など社内の情報を集めておく必要があります。会社に育休取得の先輩がいる場合、どのようなプロセスや工夫を得て円満育休期間を過ごし復帰できたか、聞きに行くと良いでしょう。

そして、肝心なのは、直属の上司の考えを事前に把握しておく事です。

もし会社に前例がなくても、盾になってくれる上司なのか、逆に「男のくせにけしからん!」と報復する上司なのかで戦略が変わってくるからです。

社内の意見を聞いてみると、その会社のダイバーシティ度がよく把握できると思います。育休取得希望の男性が想像するよりずっと、「奥さんがいないならともかく、なんで男が育休取るの?」と疑問に思う人は日本中にたくさんいるからです。

知らない会社の知らない男性が取得したと聞いたら「多様な生き方があるなぁ」と思えても、同じ部署の部下や同僚が取得するとなった途端、「なんで?」と真顔になる。

それがその人の本音です。

勤めている会社にはどういう考えの人が多いのかを知る事は、育休取得のためだけではなく、今後、将来のキャリアビジョンをその人らしく描くためにも必要な事ですので、幅広い情報収集をおすすめします。

2.イクメン宣言するべし

お勤めの会社が「男性の育休」に前向きだったとしても、現場は仕事の穴埋めに大変になるでしょう。これは女性でも同じ事ですが、その女性が既婚者で子どもを希望している人であれば、現場はなんとなく「いつかは~」とうっすら覚悟しているものです。なので、同じように大変でも「おめでたい事」と前向きに対処してくれる職場もだいぶ増えました。

ところが、思いもよらない男性の育休(今は未だその段階)には衝撃も大きく、特に妊娠とは突然やってくるものなので、現場はどうしても後ろ向きな気持ちで穴埋めに対処せざるを得ない。

その「突然」を一つ減らせるのが、「僕は子どもができたら育休を取る予定です!」もしくは「ある一定期間時短勤務をしたいと思っています!」と、事前に周知させておく事です。

事前に宣言する事で重要な仕事を任せられなくなったとか、閑職に追いやられたという事であれば、パタハラ同様にそのような会社や部署は見限って、部署異動願いを出したり、転職活動をするべきではないでしょうか。

今回の騒動が明らかにしたように、ハラスメントが横行している企業は時代と逆行するため、顧客や優秀な人材を失いますので、多大な未練を感じる必要はないかと。

3. 来る育休取得期間に備えて「実績と環境」を作るべし

これまた女性の育休取得も全く同じなのですが、例え当然の権利であろうとも、人間関係が大切な「職場」で、その正義だけを振りかざしても上手くいきません。

育休を取るまで、その会社や部署で頼りにされ、実績を出し、「早く復帰して欲しい!」と乞われる人材になると、当然ですが円満復帰がしやすくなります。

また、積極的に現在育児中の人や介護中の人のアシストをしたり、イレギュラーに発生した残業を代わったりする事によって、「家庭の事情がある時はお互い様」という暗黙のルールを、自ら精力的に作ってゆくと良いでしょう。

4. 育休取得のメリットを夫婦で度々話し合うべし

ここ最近のパタハラ騒動に対してネット上では、企業側の対応を問題視する声が大きかった半面、「休んでいたのだから今までのポジションをなくすのは当たり前」「もともと問題のある人だったのでは?」などと、当該男性を責める声もあちこちで見受けられました。

その一連の騒動を見て、「将来は育休を取ろう!」と思っていた男性たちが怯んでしまっていないか、私は心配です。企業と揉め、職場と揉め、ネット上で叩かれというマイナスなイメージも問題定義と共に流れたからです。

そして、思うのでした。

かつて、女性の育休が絵に描いた餅状態で暗黙の了解で辞めざるを得なかった所から、いま82%の取得率になったのは、全国の職場でパイオニアたちが頑張ってくれたからなのだと。先人女性たちが当時、肩身の狭い思いをしたり、嫌がらせを受けたりしながらも歯を食いしばって実績を作ってきたから今があるのだと。

男性育休取得は、数字だけで見ると未だ始まったばかりのようなものです。男性育休パイオニアの歩く道は未だ茨の道だけれど、いつかきっと、多くの男性たちが当たり前に取得する未来が来ると私は思っています。そして、一番手がかかって一番かわいい時期に積極的に子育てする事で、一皮も二皮もむけた男性たちが再び活躍する社会も。

今は過渡期であるが故、疑問を持たれたり、非難されたりがあるやもしれません。それでも、夫婦で定期的に「共働きで家庭を運営していく事」「子育てにスタートから参加する事」のメリットを確認し合い、茨の道を勇気を持って、幸せに歩いていって欲しいと願います。

川崎 貴子

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リントス(株)代表。「働く女性に成功と幸せを」を理念に、女性のキャリアに特化したコンサルティング事業を展開。

1972年生まれ、埼玉県出身。1997年、人材コンサルティング会社(株)ジョヤンテを設立。女性に特化した人材紹介業、教育事業、女性活用コンサルティング事業を手掛け、2017年3月に同社代表を退任。女性誌での執筆活動や講演多数。(株)ninoya取締役を兼任し、2016年11月、働く女性の結婚サイト「キャリ婚」を立ち上げる。婚活結社「魔女のサバト」主宰。女性の裏と表を知り尽くし、フォローしてきた女性は1万人以上。「女性マネージメントのプロ」「黒魔女」の異名を取る。2人の娘を持つワーキングマザーでもある。

イラスト:かしえみ

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