自分の感情を「利用できる人」と「爆発させる人」の違いとは?ーーマンガ『エンゼルバンク』に学ぶビジネス

自分の感情を「利用できる人」と「爆発させる人」の違いとは?ーーマンガ『エンゼルバンク』に学ぶビジネス

『プロフェッショナルサラリーマン(プレジデント社、小学館文庫)』『トップ1%の人だけが知っている「お金の真実」(日本経済新聞出版社)』等のベストセラー著者である俣野成敏さんに、ビジネスの視点で名作マンガを解説いただくコーナー(→)。今回は、三田紀房先生の『エンゼルバンク ドラゴン桜外伝』です。

『エンゼルバンク』から学ぶ!【本日の一言】

こんにちは。俣野成敏です。

名作マンガは、ビジネス書に勝るとも劣らない、多くの示唆に富んでいます。ストーリーの面白さもさることながら、何気ないセリフの中にも、人生やビジネスについて深く考えさせられるものもあります。そうした名作マンガの中から、私が特にオススメしたい奥深い一言をピックアップして解説します。

©三田紀房/コルク

【本日の一言】

「仕事をする前に、人間でいなきゃ。もっと、自分の心に正直にね」

(『エンゼルバンク ドラゴン桜外伝』第5巻 キャリア38より)

龍山高校の英語教師だった井野真々子(いのままこ)は、10年目にして仕事に飽きてしまい、転職を決意します。井野は、かつて一緒に働いていた弁護士の桜木建二(さくらぎけんじ)に相談。桜木は以前、経営破綻の危機にあった龍山高校で教鞭を取っていた時期があり、東大合格者を輩出することによって当校を救った救世主でした。

井野から話を聞いた桜木は、転職エージェント会社の転職代理人・海老沢康生(えびさわやすお)を紹介。井野は海老沢の下でキャリアパートナーとして働くことになりますが…。

自分と比べて、他人は幸せそうに見えるもの

友人の結婚式に出席した井野。いまだに結婚の予定もない井野は、仕事と家庭を両立している友人たちの様子を見て、何となく気分が落ち込みます。転職代理人になったものの、結局は他人の世話を焼くばかりで、「自分は本当にこのままでいいのか?」と考え込んでしまうのでした。

翌日、会社に出社すると、上司の海老沢が声をかけてきます。「昨日、友人の結婚式に行ったのに元気がないね。もしかして、友人たちが羨ましくなった?」とズバリ心中を見透かされた井野はうろたえます。

井野の様子を見た海老沢は、「いくら自分が転職代理人だからって、他人が上手くやっているのを見れば、転職したくなるのもムリはない」と言います。井野に向かうと、「『自分は◯◯だから△△してはいけない』などと、自分を抑えつける必要はない」と諭すのでした。

結局のところ、人間の能力に大差はない

人の先入観というのはなかなか根強いものがあります。私ごとで恐縮ですが、時々、私に対して「俣野さんは失敗したことなんかないのでは?」とか「欠点なんてありませんよね?」と真顔でおっしゃる方もいます。どうやら、私が複数の事業を同時並行でこなしている様子を見て、超人的というイメージをお持ちになるようです。

けれど実際の私はと言うと、欠点だらけの人間です。確かに、仕事柄「欠点を見せないように」はしていますが。もう1つ事例を挙げると、たとえば『人を動かす』『道は開ける』などの名著でお馴染みのデール・カーネギー氏が、『こうすれば必ず人は動く』の中でこう述べています。

「…『私のノウハウ』だなんて、とんでもありません。(中略)『人を動かす』といった本を書いた人間はどんな人物かというと…今、あなたの目の前にいるような人間、愚かでヘマで間抜けな過ちを性懲りもなく繰り返して、もうどうしようもなくて、自分のために指針としてそのテーマを研究した、そのような人間なのです」と。謙遜で書いている部分はあるにせよ、要はみんな同じ人間だ、ということです。

©三田紀房/コルク

行動の原動力となっているのは“感情”

多くの人が感じる疑問とは、「どうすれば1度にたくさんのことができるのか?」「行動力の源はどこにあるのか?」といったことだと思います。もともと、人間とは理性よりも感情に走りやすい生き物です。つまり裏を返すと、感情が動けば行動しやすい状態になる、ということでもあります。

私が重視しているのは“憧れ”の感情です。多くは「将来、こうなりたい」「この人に近づきたい」といった気持ちを原動力にしています。実のところ、憧れは嫉妬と紙一重の感情です。嫉妬というと、「他人の足を引っ張る」というような、あまり良くないイメージがあるでしょう。しかし、どちらも成功する上では、必要不可欠な感情だと考えます。

人は「あの人が羨ましい」という気持ちがあるから、「何とかしてオレもあの人と同じようになりたい」というプラスの欲求が生まれてくるのです。本来、人間の基本的感情である喜怒哀楽の、どれでも行動を促す原動力にはなりますが、もっとも強力なのが、怒りや恨みの感情です。これらのエネルギーは非常に大きい反面、総じて「熱しやすく冷めやすい」という傾向があります。

ネガティブな感情が生まれる要因とは

嫉妬にしろ怒りにしろ、こうした感情は、ほとんどが自分の中にある“理想と現実のギャップ”から生まれています。ですから、このギャップを上手く利用すれば、理想にたどり着くための力になります。なのに、「嫉妬や怒りは良くないこと」だと思い込んで抑えつけようとすると、かえって抑制が効かずに感情が爆発してしまいます。

大事なことは、感情を抑えるのではなく、「理想に行き着くまでの間の、できない自分を許容する」ことです。「今は、理想の自分に近づいている道半ばなんだ」と思えば、自然に「今はできなくて当たり前」という気持ちになれます。

私からのオススメは、ご自分が尊敬している人の自伝などを読んでみることです。それを読めば、成功者もいきなり成功したわけではなく、必ず紆余曲折の末に、今日の成功があることがわかるでしょう。「この人も自分と同じなんだ」と思えれば、憧れの人との距離感もぐんと近くなるのではないでしょうか。

先行者をマネるべき最大のポイントは、今現在ではなく、修行時代にあるのですから。

マンガ『エンゼルバンク』に学ぶビジネス 第40回

俣野成敏(またの・なるとし)

30歳の時に遭遇したリストラと同時に公募された社内ベンチャー制度で一念発起。年商14億円の企業に育てる。33歳でグループ約130社の現役最年少の役員に抜擢され、さらに40歳で本社召還、史上最年少の上級顧問に就任。『プロフェッショナルサラリーマン(→)』および『一流の人はなぜそこまで、◯◯にこだわるのか?(→)』のシリーズが、それぞれ12万部を超えるベストセラーとなる。近著では、日本経済新聞出版社からシリーズ2作品目となる『トップ1%の人だけが知っている「仮想通貨の真実」(→)』を上梓。著作累計は42万部。2012年に独立、フランチャイズ2業態5店舗のビジネスオーナーや投資活動の傍ら、『日本IFP協会公認マネースクール(IMS)』を共催。ビジネス誌の掲載実績多数。『ZUU online』『MONEY VOICE』『リクナビNEXTジャーナル』等のオンラインメディアにも寄稿。『まぐまぐ大賞(MONEY VOICE賞)』1位に2年連続で選出されている。一般社団法人日本IFP協会金融教育研究室顧問。

俣野成敏 公式サイト

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