金運に“トレンド”はあるのか? 金運専門誌の編集長に話を聞いてみた(前編)
世の中には様々な雑誌があるが、「金運」をテーマにした雑誌があることを知っているだろうか。マキノ出版から季刊で刊行されている『ゆほびかGOLD 幸せなお金持ちになる本』だ。
今年1月に刊行された『ゆほびかGOLD Vol.41』の表紙に書かれた特集は「大金運の法則2019」。そして4月8日に出版される最新号の特集は「神様に愛されてお金持ちになる!」となっている。
この『ゆほびかGOLD』、2008年創刊以来の各号の特集を並べていくと、金運の世界の流れが見えてくる。近年は「龍」「神社」「マインドフルネス」といったワードが並び、それ以前を調べていくと「口ぐせ」「財布」「般若心経」「引き寄せの法則」、さらには「宇宙音」「手相」といったその時々の“トレンド”らしきものが見えてくる。
では、こうした金運の世界のトレンドはどのように生まれているのか? 気になった新刊JP編集部は『ゆほびかGOLD』編集長のマキノ出版・高橋真人さんにお話をうかがった。
(新刊JP編集部)
■財テクを載せると読者から不評が集まる!?
――『ゆほびかGOLD』は2018年で創刊10年を迎えました。「金運」をテーマにした雑誌というのは極めて珍しいですが、どのような経緯で立ち上がったのですか?
高橋:もともとは『ゆほびか』という月刊誌がありまして、今はちょっと毛色の変わった健康誌として知っていただいているかと思いますが、1990年代の創刊当初はライフスタイル誌の色合いが強かったんです。
その後、読者さんの反応などから健康誌にシフトしていくのですが、美容やダイエットを中心に扱っていたのが、2000年代の半ばから自己啓発・スピリチュアル関連の記事を載せるようになり、それらがビビッドな反響をいただくようになりました。中でも特に良い反応があったのが2006年の「『幸せなお金持ち』になる方法」という特集だったと聞いています。私はまだ『ゆほびか』編集部ではなかったので詳しいことは分かりませんが。
――「幸せなお金持ちになる」は今でも『ゆほびかGOLD』の誌名の一部に使われていますよね。
高橋:そうですね。2007年に『幸せなお金持ちになる本Vol.1』というムックを出していますが、このムックでは『ユダヤ人大富豪の教え』の本田健先生のコンセプトを強く打ち出しています。実質的にはこのムックが創刊号なのですが、これを引き継いで2008年に創刊したのが『ゆほびかGOLD 幸せなお金持ちになる本』でした。
――「幸せなお金持ち」というフレーズには、本田健さんのコンセプトが強く出ているということですね。
高橋:大枠は変わっていませんね。幸せなお金持ちになるにはどうすればいいのか。その軸に合うようにいろんな先生方に出ていただいています。ただ、以前は株やクレジットカードのような企画もあったんですよ。
――いわゆる「財テク」ですね。
高橋:そうです。でも、今はほとんどリアルマネーの記事を載せていません。というのも、読者の方々からあまりよい評価をいただけないんです。投資だったりポイント率だったり保険の見直しだったりという、リアルなお金の話は求められていないと。
――それは意外ですね!
高橋:私が『ゆほびかGOLD』に関わったばかりの頃に、電子マネーの企画を出して、通ったので記事を担当したんです。当時はまだ電子マネーが普及しはじめたばかりで、気になる人もいるだろうと。ところが読者アンケートの反応を見てみると、あまり票が入っていないばかりか「せこせことポイントを貯めたりするのが、果たして豊かな人生と言えるのでしょうか」というような声まであがっていまして。
――いくらお得とかそういう話ではなく、心の豊かさを求めているわけですね。では、『ゆほびかGOLD』の主な読者層は?
高橋:50代がピークで、上は70代、80代ですね。40~60代がコア層で、7割が女性です。
――部数はいくつになるんですか?
高橋:刷りで4万5000部です。
――今回は「金運」の中でのトレンドについて探るというテーマでお話を聞いているのですが、実際にトレンドっていうのはあるんですか?
高橋:トレンドと言えるのかどうかは分からないのですが、読者の皆さんが興味を持つものの変化はありますね。その興味に当てはまらない記事はあまり反応がないですし、興味があるものをやれば反応はすごくありますし。
ただ、金運アップとか開運とかの根拠は、多くが古くから伝わっている教えなんですね。例えば神道とか仏教とか風水とか西洋魔術とか。近現代の成功哲学も含まれるかもしれません。
それらの1つを現代風にアレンジしたり、いろんな別のものに置き換えて上手に説明されたり、はたまたいろいろな教えから引用して融合させたりする方がいらっしゃって。そういう方々が人気を集めて、書いた本が売れたりします。『ゆほびかGOLD』ではこれまで、そういう方々にご登場いただいてきました。
開運の考え方の根幹は、つながっていると思うんです。いろんな先生がまったくバラバラのことを仰っているように見えて、実は根底に共通点があります。ですから、ずっと開運誌を作り続けていると、「それは知らなかった!」と思うことはさまざまあっても、「これはまったく触れたことのない考え方だ!」と思うことはあまりなくなってきますよ。
――最近は「龍」ブームがありましたが、「龍」もそういうものの一つと。
高橋:そうですね。ずっと昔から開運の象徴として「龍」はあったんです。でも今、「龍とつながると幸せになれますよ」という考え方を牽引する人が登場して、注目が集まるようになった。『ゆほびかGOLD』でも何度か取り上げていますが、皆さん、龍がほんとうにお好きなんですよね。最初は少し驚きましたけれど(笑)。
龍のブームは、サンマーク出版さんから大杉日香理先生の『「龍使い」になれる本』という本が2016年に出ているんですけど、それが一つのきっかけだったと思います。その後、龍関連の本が怒涛のように出版されて、龍に関する話で人気を集める方も続々登場されました。
実は昨秋に『ゆほびかGOLD』で田宮陽子先生にご登場いただいたときに、記事中で「龍のかたちの雲の写真」を募集したのですが、なんと1200点以上寄せられました。4月8日発売の号で優秀作を発表する予定です。
――1200点以上集まったってすごいですね。
高橋:田宮先生がブログで告知してくださったことも大きいのですが、何より、こんなに龍の写真を撮っている人がいるんだ、ということに正直、驚きましたね。
――開運関連で人気を集めてきた方がいらっしゃるとお話されていましたが、どのような方でしょうか。
高橋:『ゆほびかGOLD』の歴史でいうと、やはり本田健先生を外すことはできません。また、創刊間もない頃では「Vol.3」の佳川奈美先生の「黄金の1億円札」は人気がありましたね。
あと、印象深いのは、もうお亡くなりになったのですが、渡部昇一先生でしょうか。一般に、保守派の論客というイメージがあると思いますが、実は自己啓発で知られるジョセフ・マーフィーの『マーフィー 眠りながら巨富を得る』という本を翻訳していたりするんです。
――その本の翻訳者の名前を見ると大島淳一とありますが。
高橋:そのお名前はペンネームですね。そこで、「Vol.9」の「眠りながら巨富をつかむCD」という特集で渡部昇一先生にご登場いただきました。人気を集めたので、ムック化もされました。ただ、この特集は開運というよりは自己啓発寄りで、ビジネス色もある内容になっています。
■スピリチュアル系ブロガーの影響力は「すさまじい」
――これまでの『ゆほびかGOLD』を見てくると、認知科学者の苫米地英人さんですとか、キングコングの西野亮廣さんなどの名前も出てきますし、実は幅広い人選なんだなと思わされます。
高橋:苫米地先生には幾度も大きな特集でご登場いただいて、すごくお世話になっています。また、キングコングの西野さんはVol.36の「嫌いなことは今すぐやめよう!」という特集で、ブロガーのHappyさんとの対談イベントを記事化させていただきましたね。
――Happyさんやキンコン西野さんはこのムックに載る方々からすると比較的若い世代になります。
高橋:そうですね。2000年代に『ザ・シークレット』などで知られるロンダ・バーンに代表される「引き寄せの法則」のブームがありました。で、そのあと2014年ごろから、ブログが大人気になったHappyさんをはじめ、もう引退された子宮委員長はるさんとか、いろいろな方が「引き寄せ」というキーワードのもとにつながって、いっしょにイベントを開催して、人気を集めた時期がありました。こうした方々には、2000年代とは異なる新しさを感じましたね。
――世代が違うんですね。
高橋:当然、開運の大家には年を重ねた方も多いんですけど、最近は30代前後の若い方々が支持を集めるようになっています。それは見ていて新鮮ですね。
――Happyさんも子宮委員長はるさんもブログで情報発信をしていましたが、今の開運系の著者さんの多くはブログやSNSから発掘されているというイメージがあります。
高橋:おっしゃる通りで、最近はまずブログやSNSで有名になった方に、出版社がお声がけをする。そして、本とネットの相乗効果でさらに人気が広がるというパターンが多いです。これはマキノ出版に限ったことではありません。
例えば、アメーバブログの「占い・スピリチュアル」とか「プロフェッショナル」といったジャンルの上位ランカーのブロガーさんは本もすごく売れます。その影響力はすさまじくて、ブログで一声かけるだけで即イベントが埋まっちゃったりします。あとは、最近はオンラインサロンを始めるかたも出てきているようですね。
――今お話で出ていた「引き寄せの法則」は「開運・金運」というよりも「自己啓発」に近いところで語られるように感じます。他に、マインドフルネスも特集されていますし、「金運」だけに特化せず自己啓発トレンドを抑えていらっしゃるのかなと思いますが。
高橋:『ゆほびかGOLD』の場合、企画は著者の考えが前提となっているのが基本です。今、最もためになることをおっしゃっていただける先生に誌面に出ていただく。そうなると、自然に幅広いトレンドを抑えることになるんです。ただ、ここ直近では自己啓発色の強いものよりも、開運に振っています。特に神社や神道関連は人気ですね。
――確かに近年は神社がブームです。
高橋:いつも大きな反響をいただきますので、最近はよく特集していますね。1月に出た「Vol.41」でも巻頭で神社の話が出ていますし。
個人的には自己啓発と開運スピリチュアルは別物といいながらも地続きで、はっきりした境界線は見えづらいと思っているのですが、自己啓発に寄りすぎると少し理屈っぽく思われてしまうせいか、このところは反響が薄い感があります。そこに、今の読者の皆さんのニーズが出ているように感じます。
――斎藤一人さんは「Vol.1」からずっと『ゆほびかGOLD』に寄稿されていますよね。やはり欠かせない存在なのでしょうか。
高橋:連載といってもいいくらいのレベルで毎号欠かさずご登場いただいています。斎藤一人さんの文章を読むためだけに『ゆほびかGOLD』を買って下さっている方もいらっしゃいますね。一人さんはものすごくお話が上手で、人を惹きつける力があります。講演の音声なんかを聞くと、まさにそのまま記事に起こしてもいいくらいです。
(後編は後日配信予定!)
■『ゆほびかGOLD』vol.42 幸せなお金持ちになる本
2019年4月8日発売
『ゆほびかGOLD』vol.42の大特集は、「神様に愛されてお金持ちになる!」。
いつも私たちを見守ってくださる神様に愛をいただき、福運と豊かさに恵まれるための習慣から参拝法、お勧め神社までを第一線の著者陣が明かします。
大好評のCD付録は、女僧の頞真(ANJIN)さんが「あわ唄」や「般若心経」を歌う美しい楽曲を収録した「古神道のことだまCD」。
このほか、新年度・新生活を最高の金運で満たす法則を満載!
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