「30歳」は結婚・出産・仕事…人それぞれ、いろんな変化があっていい【多部未華子】インタビュー

「30歳」は結婚・出産・仕事…人それぞれ、いろんな変化があっていい【多部未華子】インタビュー

テレビドラマや映画、舞台でさまざまな役柄を演じ分けている実力派女優のひとり、多部未華子さん。デビュー2年後にブルーリボン賞新人賞に輝き、その後、読売演劇大賞など数々の賞を受賞しています。そんな多部さんも今年で30歳。公開中の映画『トラさん~僕が猫になったワケ~』で働きながら健気に夫を支える母親役として出演した経験を踏まえて、独自の人生観や仕事観について聞きました。

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結婚・出産・移住…「30歳」はいろんな変化があっていい

――2019年1月で30歳になった多部さん。20歳、30歳、40歳と、10年ごとに区切りをつけて過去を振り返ったり、ライフプランを考えたりする人が多いなか、多部さんにとって「30歳」はどんな印象ですか?

多部:一言で言うと、“大きな変化がある年齢”ですね。昨年から今年にかけて、特に同世代の友人には変化がありました。結婚したり、出産したり、海外移住を決めたり。変化の形に正解はないので、「人それぞれいろんな変化があっていいんじゃないかな」と思っています。

会社員として働いている同世代の友人のなかには、「30歳を迎えてお局様のようになってしまった」、「上司にお前には幸せになってほしいんだよと言われた」といったことを聞くことがあります。日本の会社組織だと、変わりつつあると思いますが、年齢によってイメージを付けられやすいのかもしれません。

でも、芸能界ではお局と呼ばれることもなかなか無いですし、結婚を急かされることも無い。あれ? もしかして私が気づいていないだけ?

――いや、そんなことはないと思いますよ(笑)でも多部さんは、変わっていく友人を見て焦りを感じることはありませんでしたか?

多部:29歳あたりまでは、焦りを感じていました。でもニューヨークで過ごした日々を思い出したら、自然に気持ちが切り替わって。アメリカで暮らしていたのは3年前。3ヶ月間だけでしたが、大勢の人に出会い、年齢にとらわれず自由に楽しく暮らす姿を毎日見ていました。子どもやパートナーがいてもいなくても、自分がやりたいことにまっすぐ突き進んでいくんです。

そんな生き方を間近で見た経験を思い出し、私の考え方も少しずつ変わっていきました。今でもたまに変に焦ってしまうこともありますが、海外に住んでいる友達と話をして気持ちをリセットしています。旅行で会いに行ったり、電話をしたり。電話は多い時で週に3〜4回、2時間くらい話すこともあります。できないことが一つもないかのように、壮大な夢を語る友人たちの姿に元気をもらっています。

仕事とは何か 自分に都合よく解釈すると楽になる

――映画の撮影や舞台への出演など、忙しい毎日ですよね。仕事でストレスを感じたことはありますか?

多部:ストレスはほとんどないですね。早朝から深夜までスケジュールが詰まっていたり、休みがなかったりして、疲れがたまることはありますが……。私、「芸能界で仕事をしているから◯◯できない」と思ったことがないんです。

「芸能人だから普通に街を歩けなくて大変だね」「電車にも乗れないんでしょ」とよく言われますが、電車にも乗りますし、街も歩きます。基本的に周りの目は気にならないですね。さすがにこの着物姿で竹下通りを歩くとなると、確実に注目を集めてしまうので、心の準備が必要ですけど(笑)

もし仕事がつらいと感じたら、仕事を自分にとって都合がいいように解釈すると楽になります。例えば、「毎日とても忙しいけれど私はお金を稼げたらそれでいい」とか「恋人に振られたけどオレには没頭できる仕事がある」とか。

解釈の仕方一つで、つらい仕事が精神安定剤になる。だから必ずしも、すべての仕事にやりがいを感じないといけないわけではないと思います。自分にとって仕事はどういうものか、都合よく捉えるのが一番です。

夫を失う妻を演じて感じた「言葉で伝える大切さ」

――映画『トラさん~僕が猫になったワケ~』は、死んだ男が猫になって家族の元に戻ってくるという心温まる物語。原作の「トラさん」(板羽 皆/集英社マーガレットコミックス刊)を読んだ時、多部さんはどう感じましたか?

多部:純粋に「面白い!」と思いました。でも一方で、猫になった姿をどのように撮るのだろうという疑問もあって……。猫の着ぐるみを使うのか、本物の猫を使うのか。結局両方を組み合わせることになり、夫役の北山さんが猫スーツを着ていました。

動きづらかったと思いますが、猫スーツを着たまま高いところから落ちて、猫のようにしなやかな動きで着地するシーンは圧巻でした。この場面にはぜひ注目してもらいたいですね。

――コメディ要素がある一方で、この映画にはシリアスなシーンもありますよね。多部さんが演じた高畑奈津子の最愛の夫、寿々夫は、妻と娘を残して突然亡くなってしまいます。大切な家族を失う場面を演じて、どんな気持ちになりましたか。

多部:いかに普段から愛情表現ができるか、言葉で気持ちを伝えられるかが大事なんだなと思いました。私自身、家族に感謝の気持ちを伝えるのは苦手で、なかなか言えませんが…。

でもこの歳になって、明確な言葉にはできなくても、自分から相手に寄り添えるようになりました。例えば母親に「いや、そういうことを言ってるんじゃなくて」とイライラしてしまったとき、「さっきはあんなこと言ってしまったけど、私が言いたかったのはこういうことだよ。別に怒ってないからね」と後で本心を伝えたり……。

毎日健康に暮らしていたら、いつも隣にいる人が突然いなくなってしまう怖さを感じる機会はほとんどないと思います。でも、そんな当たり前の毎日を愛しく思う温かい気持ちを、この映画を通して感じてもらえたら嬉しいです。 文:華井由利奈
写真:平山 諭

編集:丸山香奈枝

<映画『トラさん~僕が猫になったワケ~』公開中>

【STORY】売れないマンガ家の高畑寿々男(北山)は、妻・奈津子(多部)がパートで稼いだお金をギャンブルに使い、お気楽な生活を送っていたが、ある日突然、交通事故であっけなく死んでしまう。そんな寿々男に“あの世の関所”が下した判決は、「執行猶予1ヶ月、過去の愚かな人生を挽回せよ。但し、猫の姿でー」。トラ猫の姿で奈津子と娘・実優(平澤)のもとに戻った寿々男は、「トラさん」と名付けられて高畑家で飼われることに。愛する家族のために何かしたいと思うトラさん=寿々男だが、猫だから言葉さえ通じない。限られた時間の中で、トラさん=寿々男は、家族に何ができるのか―?

出演:北山宏光、多部未華子、平澤宏々路、飯豊まりえ、富山えり子、要 潤、バカリズム

原作:「トラさん」板羽 皆(集英社マーガレットコミックス刊)

監督:筧 昌也 脚本:大野敏哉 音楽:渡邊 崇

主題歌:Kis-My-Ft2「君を大好きだ」(avex trax)

配給:ショウゲート

©板羽皆/集英社・2019「トラさん」製作委員会

 

 

 

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