【悲報】経済評論家の上念司氏,実質賃金指数を理解していなかった(モノシリンの3分でまとめるモノシリ話)
今回はモノシリンさんのブログ『モノシリンの3分でまとめるモノシリ話』からご寄稿いただきました。
【悲報】経済評論家の上念司氏,実質賃金指数を理解していなかった(モノシリンの3分でまとめるモノシリ話)
経済評論家の上念司という人がいる。
この人,「実質賃金が下がるのは大した問題ではない」旨を喧伝し,熱烈に安倍政権を応援する人々の一員なのだが,そもそも前提を理解していなかったことが分かった。
最近話題になっている「実質賃金」とは,正確に言うと,実質賃金指数のこと。
厚生労働省の説明によると,実質賃金指数の算定式は下記のとおり。
「毎月勤労統計調査全国調査で作成している指数等の解説(平成30年1月分部分入替え)」『厚生労働省』
https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/monthly/sisuu/sisuu.html
要するに,実質賃金指数=名目賃金指数÷消費者物価指数×100
ここで,厚労省による指数の説明は下記のとおり。
要するに,ここでいう指数というのは,「ある時点の基準数値を100とした数字」のこと。
ここで上念氏のツイートを見てみよう。
そうか!マスコミは実質賃金を「手取りの賃金」としてミスリードしようとしてるんだ!実質賃金は名目賃金を物価上昇率で割り戻した指数な。手取りと勘違いしてたらバカ丸出しだぞ!
— 上念 司 (@smith796000) 2019年2月5日
そうか!マスコミは実質賃金を「手取りの賃金」としてミスリードしようとしてるんだ!実質賃金は名目賃金を物価上昇率で割り戻した指数な。手取りと勘違いしてたらバカ丸出しだぞ!
「名目賃金を物価上昇率で割り戻した指数」と言っている。
いや,違うんだが・・
物価指数で割らないといけないんだが・・率で割ったら全然違う数字になるぞ。
そして,彼が計算した実質賃金指数と称する数字が次のツイートに掲載されている。
悲劇的な間違いが,そこにある。
大好評なので応用編作ったよ。今度は就職をあきらめた人も入れて失業率、物価上昇率も0.5%から徐々に上がったことにしてみて実質賃金指数も計算してみた。完全雇用を達成して全員給料増えてるのに実質賃金は減ってるよ。つまり、実質賃金は割合なんだよ。手取りの賃金じゃないよ。 pic.twitter.com/PmmdBSgAWz
— 上念 司 (@smith796000) 2019年2月5日
大好評なので応用編作ったよ。今度は就職をあきらめた人も入れて失業率、物価上昇率も0.5%から徐々に上がったことにしてみて実質賃金指数も計算してみた。完全雇用を達成して全員給料増えてるのに実質賃金は減ってるよ。つまり、実質賃金は割合なんだよ。手取りの賃金じゃないよ。
この表を拡大したのがこちら。
おいおい・・・そもそも,この名目賃金指数の列にある「30」っていうの,指数じゃなくて「実数」だぞ。
この時点から既に間違えている。
再掲すると,実質賃金指数=名目賃金指数÷消費者物価指数×100
再度言うが,ここでいう指数というのは,「ある時点の基準数値を100とした数字」のこと。
しかし,この30というのは明白にただの30万円を意味している。つまり,指数ではなく実数である。
で,思い出してみよう。上念氏の脳内では実質賃金の計算式は「名目賃金÷物価上昇率」ということになっている。
そして・・・彼は,実数を物価上昇率で割るというとんでもないことをしている。
その結果,実質賃金指数と彼が勘違いしているものの数字は「6000」になるのだ。
(「1年目」の行。最後に100をかける,という点だけ合ってる。)
本当にびっくりした。
日頃から統計分析していればこんな間違いは絶対にしない。
6000なんていう桁違いの数字になってる時点で気付くだろ普通。
で,もっと驚くのがリプ欄。
だーれも気づかない。突っ込まない。
それどころか「分かりやすい」とか言ってるし。
そういうレベルの人達がヨイショしているということ。
このように,上念氏は実質賃金指数を全然理解していない。基本中の基本なのだが。
ちなみに,私が野党合同ヒアリングで提出した実質賃金指数の計算表がこちら。
これは前年同月を100とする指数を算出して計算している。
これが実質賃金指数計算の見本。
なお,上念氏は以前にもエンゲル係数でトンチンカンなことを言って私につっこまれていることを付記しておく。
「上念司氏のエンゲル係数を巡る発言にツッコミを入れてみる」2018年2月3日『モノシリンの3分でまとめるモノシリ話』
http://blog.monoshirin.com/entry/2018/02/03/130825
それでも彼を信じたいなら私はもう何も言うまい。
なお,上念氏らリフレ派の財政楽観論を完全否定する拙著が明日7日発売。
「データが語る日本財政の未来 (インターナショナル新書)」『amazon.co.jp』
https://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4797680334/hatena-blog-22/
関連記事
「 「2018年の実質賃金大半がマイナス」の舞台裏」2019年2月4日『モノシリンの3分でまとめるモノシリ話』
http://blog.monoshirin.com/entry/2019/02/04/004920
執筆: この記事はモノシリンさんのブログ『モノシリンの3分でまとめるモノシリ話』からご寄稿いただきました。
寄稿いただいた記事は2019年2月7日時点のものです。
ガジェット通信はデジタルガジェット情報・ライフスタイル提案等を提供するウェブ媒体です。シリアスさを排除し、ジョークを交えながら肩の力を抜いて楽しんでいただけるやわらかニュースサイトを目指しています。 こちらのアカウントから記事の寄稿依頼をさせていただいております。
TwitterID: getnews_kiko
- ガジェット通信編集部への情報提供はこちら
- 記事内の筆者見解は明示のない限りガジェット通信を代表するものではありません。