映画『シュガー・ラッシュ』の英語タイトルを知っていますか?
2018年末に公開されたディズニー映画『シュガー・ラッシュ:オンライン』は、興行ランキングで3週連続の1位になる人気ぶりですので、年末年始でご覧になった方も多いかもしれません。
アニメ映画は、親子で楽しめるようにという配慮なのか、映画館では吹替版での上映が多いです。字幕版は、上映館を探す必要がありますが、英語を学ぶ方にはぜひそちらも味わっていただくことをオススメします。
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『頑張らない英語』シリーズ(あさ出版)や『TOEIC最強の根本対策』シリーズ(実務教育出版)など数々の英語学習に関する著書を出されている西澤ロイさん。英語の“お医者さん”として、英語学習の改善指導なども行っている西澤さんに教えていただく「映画に学ぶ英語フレーズ」(→)。
今回は『シュガー・ラッシュ:オンライン(→)』、およびその前作である『シュガー・ラッシュ(→)』の英語版を楽しんでいただくために、吹替版では味わえない英語のポイントを解説します。
プロフィール
西澤ロイ(にしざわ・ろい) イングリッシュ・ドクター
英語の“お医者さん”として、英語に対する誤った思い込みや英語嫌いを治療し、心理面のケアや、学習体質の改善指導を行なっている。英語が上達しない原因である「英語病」を治療する専門家。ベストセラーとなっている『頑張らない英語』シリーズ(あさ出版)(→)や『TOEIC最強の根本対策』シリーズ(実務教育出版)(→)他、著書多数。さらに、ラジオで4本のレギュラーがオンエア中。特に、木8の番組「めざせ!スキ度UP」が好評を博している。
『シュガー・ラッシュ』の英語タイトルは?
日本語版のタイトルは、前作が「シュガー・ラッシュ」であり、2が「シュガー・ラッシュ:オンライン」。
しかし、これをそのまま訳して I watched “Sugar Rush (Online)”.
などと英語で言っても(特に続編は)通じづらいでしょう。
なぜなら、英語でのタイトルはそれぞれ Wreck-It Ralph(壊し屋ラルフ)
Ralph Breaks the Internet(ラルフがインターネットを壊す)
だからです。
元々、映画の中で登場する
Fix-It Felix Jr.(修理屋フェリックスJr.)
という架空のアーケードゲームがあります。その中での悪役が「壊し屋ラルフ」なのです。
「壊し屋」と言われると「destroyer(デストロイヤー)」のような単語を思い浮かべる人もいるかもしれませんが、ここで使われている単語はwreck。例えばshipwreckで「船の難破や沈没」を表し、wreckを動詞で使うと「めちゃくちゃに破壊する」という意味があるのです。
ゲームの中では、ラルフが I’m gonna wreck it!(壊してやる!)
と言います。「Wreck-It Ralph」という名前はそこからついているのです。
また、ラルフに窓などを壊されて困っている住人たちが Fix it, Felix!(フェリックス、直して!)
とフェリックスJr.に助けを呼びます。それがゲームの名前になっているわけですね。
ちなみに、カタカナだと「フェリックス」になってしまっていますが、実際の発音は「フィリックス」に近いです。Fixの「フィ」の音と同じであり、頭韻を踏むことで言いやすくなっているのです。WreckとRalphも同様に韻を踏んでおり、どちらもRの音で始まっています。
「シュガー・ラッシュ」もゲームの名前
では、「シュガー・ラッシュ(Sugar Rush)」とは何かというと、こちらもアーケードゲームの名称です。主人公の一人、ヴァネロペ(Vanellope)はこのゲームのレーサーです。
ちなみに、Vanellopeの英語での発音は「ヴァネロペ」というよりも「ヴァネロピー」に近いです。映画の中では、「V(ヴィー)」という愛称でも呼ばれていますね。
そして、今作の「シュガー・ラッシュ:オンライン」というタイトルですが、映画中にこのような名前のゲームが登場するわけでは全くありません。
ラルフとヴァネロペがインターネットに入り込み、そこで騒動が起こる……というところから、 Ralph Breaks the Internet(ラルフがインターネットを壊す)
という原題になっているのです。
Internetに通常使われる前置詞は?
インターネットという言葉は、英語では「the Internet」のようにtheをつけます。そして「インターネットで」などと言いたい場合には、前置詞はonを使って「on the Internet」と表現するケースがほとんどです。 I found this article on the Internet.
(この記事はインターネットで見つけました)
Don’t put this photo on the Internet.
(この写真はインターネットに載せないで)
このonの用法は、ただ丸暗記している人が多いかもしれませんが、理由を説明するならば「システム上に乗っているから」と言うことができるでしょう。「on the Internet」という表現は、インターネットというシステムの上に乗っかっているという捉え方をしているのです。
しかし、映画『シュガー・ラッシュ:オンライン』の中において、onではない前置詞を使った表現がいくつか登場していました。これは日本語には訳すことのできないポイントですので、英語のままで味わう必要があります。
1つ目は、ラルフが言う以下のセリフです。 We’re going to the Internet.
(インターネットに行くぞ)
ラルフたちは最初、インターネットというものが何だかよく分かっていないのですが、映画の中では最初「オンラインコミュニティ」だと説明されます。ですから、どこかの国や町、もしくはディズニーランドなどのような「行き先」としてインターネットを捉えているために、前置詞にtoを使って「go to the Internet」と表現しているのです。
そして、インターネット内に無事に到着した時のヴァネロペの発言が以下です。 We are in the Internet!
(インターネットに入れたよ!)
ラルフとヴァネロペの2人は、インターネットの世界に入り、街なかにいきなり出現しました。例えば、札幌の街なかにいるのであれば「We are in Sapporo.」と言えるのと同様に、前置詞はinを使うことが自然なのです。
前置詞に関するムダな暗記を減らす秘訣
このように前置詞が異なるのは、物事の捉え方が違っているため――。そのことをぜひ知っておきましょう。「インターネットにはonを使う」などと暗記していては、こういったニュアンスを感じることはできなくなってしまいますので。
onという前置詞は、物事を2次元、つまり面として捉える場合に使います。インターネットを“網(net)”だと捉え、その上に乗っている(利用している)と認識しているのが「on the Internet」という表現なのです。
それに対して、inという前置詞はいわば3次元。空間が存在し、その中に入っているという捉え方なのです。「インターネットにはinではなくてonを使う」と暗記していた人もいるかもしれませんが、別に、Internetという単語に対してinが使えないわけではないのです。現実世界において、インターネットを空間として捉えるケースが滅多にない、というだけ――。もしそういう捉え方をしたならば、inももちろん使われます。そういう非常にシンプルなお話なのです。
また、前置詞toは基本的に「矢印」を表します。そこから「行き先」などを表す場合に使われます。例えば「インターネットに接続する」と言いたければ、インターネットは「接続先」に当たりますのでtoを使って「connect to the Internet」のように言いますね。
吹替版や日本語訳では、英語でのこういった使い分けによる意味やニュアンスの違いを感じることはできません。このようなポイントを英語のまま理解できることは、英語が分かる醍醐味の一つです。ぜひ『Ralph Breaks the Internet』をオリジナルの英語版でご覧になってみてはいかがでしょうか。また、あらかじめストーリーなどを味わっておきたい方は、まずは吹替版の『シュガー・ラッシュ:オンライン』からどうぞ。
<映画情報>
映画『シュガー・ラッシュ:オンライン』製作会社 ウォルト・ディズニー・アニメーション・スタジオ / ウォルト・ディズニー・ピクチャーズ
配給:ウォルト・ディズニー・スタジオ・モーション・ピクチャーズ / ウォルト・ディズニー・ジャパン
(→)
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