成功するために不可欠な「失敗」の考え方とは?ーーマンガ『エンゼルバンク』に学ぶビジネス
『プロフェッショナルサラリーマン(プレジデント社、小学館文庫)』や『トップ1%の人だけが知っている「お金の真実」(日本経済新聞出版社)』等のベストセラー著者である俣野成敏さんに、ビジネスの視点で名作マンガを解説いただくコーナー(→)。今回は、三田紀房先生の『エンゼルバンク ドラゴン桜外伝』です。
『エンゼルバンク』から学ぶ!【本日の一言】
こんにちは。俣野成敏です。
名作マンガは、ビジネス書に勝るとも劣らない、多くの示唆に富んでいます。ストーリーの面白さもさることながら、何気ないセリフの中にも、人生やビジネスについて深く考えさせられるものもあります。そうした名作マンガの中から、私が特にオススメしたい奥深い一言をピックアップして解説します。
©三田紀房/コルク
【本日の一言】
「愛情の反対は憎悪ではなく無関心である」
(『エンゼルバンク ドラゴン桜外伝』第5巻 キャリア36より)
龍山高校の英語教師だった井野真々子(いのままこ)は、10年目にして仕事に飽きてしまい、転職を決意します。井野は、かつて一緒に働いていた弁護士の桜木建二(さくらぎけんじ)に相談。桜木は以前、経営破綻の危機にあった龍山高校で教鞭を取っていた時期があり、東大合格者を輩出することによって当校を救った救世主でした。
井野から話を聞いた桜木は、転職エージェント会社の転職代理人・海老沢康生(えびさわやすお)を紹介。井野は海老沢の下でキャリアパートナーとして働くことになりますが…。
「部下の成功を喜ばない上司」のわけとは
キャリアパートナーの井野が担当している転職希望者・尾形麻由子は、信託銀行に勤めているOL。資格マニアの尾形は、夢見がちなところがあり、持っている資格もてんでんバラバラです。「自分らしく働きたい」と言う尾形に、井野は「もっと現実を見ましょう」と冷や水を浴びせます。その言葉に傷ついた尾形は、席を立って帰ってしまいます。
報告を受けた海老沢は、井野に「会社を絞り込んで、尾形さんが納得できるレベルにしない限り、帰ってはこないだろう」とアドバイスします。それを聞いて、思案する井野。「資格を否定された尾形さんは、感情をかき乱された。人は感情によって動かされる生き物。だとしたら…」。後日、メールを見た尾形が井野のところへやってきます。井野が尾形に紹介したのは、通信教育関連の会社。資格を活かせる会社ではなく、資格を仕事にしている会社を紹介したのでした。
尾形の転職を成功させ、意気揚々の井野。ところが、そんな井野を見て海老沢は「つまらない」と呟きます。「君には大きな成功をつかんで欲しい。そのためには、失敗は避けられないことだ」と言うのです。「部下の小さな成功を喜んでいるだけの上司は、本当の愛情を抱いていない証拠。『愛情の反対は憎悪ではなく無関心である』。こう述べたのは、あのマザー・テレサだよ」と井野に話すのでした。
挑戦しないことが、本当の失敗要因
ここでは、対義語についての話をしています。通常、愛情の反対は憎しみだと思われていますが、実際は無関心こそが愛情の反対だ、というわけです。他に間違っている対義語の例として「成功の反対は失敗ではなくて、挑戦しないこと」だとあります。どちらも、言われてみればその通りです。
これらを聞いて「何だ、そんなのは単なる言葉の言い回しに過ぎないじゃないか」と思われる人もいるかもしれません。しかし作者の三田紀房先生は、登場人物の口を借りて「成功するためには逆の発想が不可欠だ」と述べています。
例えば「成功」についてですが、「失敗したくない」という思いが、実は成功の阻害要因になっていることに、多くの人は気づいていません。「成功の反対は失敗だから、それを避けなければ」という間違った思い込みが、成功を阻む要因になっているのです。このように、言葉を正確に捉えていないと、それが時として間違った行動を採らせてしまうことがあります。
©三田紀房/コルク
「その情報が流されているのには、必ず理由がある」
三田先生は、作品中で「マスコミの情報を鵜呑みにしていることが、真実を見えなくさせている一因だ」とも述べていますが、私もその意見には全く同感です。
今、世の中には無料の情報が氾濫しています。インターネット然り、テレビで流れている情報も、無料の情報であふれています。けれど、発信される情報には必ず意図が存在します。テレビを無料で観られるのは、その裏でスポンサーが高い報酬を支払っているからであり、それは結局、巡り巡って私たち消費者が支払うから成り立っているというように。
物事にはA面とB面がある
見えなくても存在しているものに意識を向けていくと、見えてくるものが変わってきます。では、どうすればそうした見えない真実に気づけるようになるのかと言うと、まずは「ものごとには必ずA面とB面がある」ということを知っておくことです。
例えば最近、世間で話題になっている「働き方改革」ですが、労働環境の改革が推し進められている一方で、退職金がなくなったり、年金の支給開始年齢が繰り下げられたりと、「自己責任」に対する布石が着々と打たれています。実は、「働き方改革」と「自己責任」は裏でつながっているのです。
この文章をお読みの方の中で、「私は今まで、ものごとをA面からしか見ていなかった」という方も、以後はぜひ「この情報の裏に見えていない部分があるとしたら、それはどんなことだろう?」と考えるようにしてみてください。それを習慣にしていけば、今まで見えていなかったB面が見えてくるようになるに違いありません。
A面とB面。
その両側を見る癖をつけることで物事の本質がより見えやすくなりますし、何かを判断する際についつい他人に依存してしまう傾向が弱くなっていきます。
――マンガ『エンゼルバンク』に学ぶビジネス 第37回
俣野成敏(またの・なるとし)
30歳の時に遭遇したリストラと同時に公募された社内ベンチャー制度で一念発起。年商14億円の企業に育てる。33歳でグループ約130社の現役最年少の役員に抜擢され、さらに40歳で本社召還、史上最年少の上級顧問に就任。『プロフェッショナルサラリーマン(→)』および『一流の人はなぜそこまで、◯◯にこだわるのか?(→)』のシリーズが、それぞれ12万部を超えるベストセラーとなる。近著では、日本経済新聞出版社からシリーズ2作品目となる『トップ1%の人だけが知っている「仮想通貨の真実」(→)』を上梓。著作累計は42万部。2012年に独立、フランチャイズ2業態5店舗のビジネスオーナーや投資活動の傍ら、『日本IFP協会公認マネースクール(IMS)』を共催。ビジネス誌の掲載実績多数。『ZUU online』『MONEY VOICE』『リクナビNEXTジャーナル』等のオンラインメディアにも寄稿。『まぐまぐ大賞(MONEY VOICE賞)』1位に2年連続で選出されている。一般社団法人日本IFP協会金融教育研究室顧問。
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