「結婚、出産、夫の転勤」にふりまわされない!女性の「一生モノの職業」とは

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「結婚、出産、夫の転勤」にふりまわされない!女性の「一生モノの職業」とは

「転妻」という言葉をご存じですか? 「転勤族の妻」の略称で、以前NHK『おはよう日本』でも取り上げられ話題を呼びました。女性は結婚、出産といったライフイベントのほか、夫の転勤でもせっかく積み上げたキャリアを手放してしまうことがあります。

全国どこに行っても続けられる仕事は何か。世間で安泰と言われる職業は、出産後も本当に続けやすいのか。『女子のための一生困らない「手に職」図鑑』(光文社)を上梓した華井由利奈さんは、「女性の働きやすさ」の観点から100職種を選び、実際に働くリアルな女性の声を書籍に反映させました。自著を書くきっかけや、取材を通して初めて知った女性が働きやすい職種に焦点を当て、華井さんに話を伺いました。

プロフィール

華井由利奈

ライター。愛知県出身。椙山女学園大学卒業後、印刷会社に就職。デザイン業務を1年間担当した後、コピーライターとしてトヨタ系企業など100社以上の取材を行う。2016年に独立。現在は、女性活躍、ビジネス、教育、生活情報など幅広い分野で執筆している。今までに取材した人数は700人以上。大学や教育講座での講演も行っている。『一生困らない 女子のための「手に職」図鑑』を執筆。

本を書くきっかけは、お世話になった先輩の理不尽な退職

――ご著書を拝読しました。本当に労作で、職種がどんな人に向いているのか、子育て中も続けられるのかなど、1つの仕事をさまざまな角度から掘り下げています。なかでも華井さんの個性が出ていたのは、職種に関する「この本を読んでみて」のコーナーです。小説もたくさん紹介されていますが、本当に漫画がお好きですね。

もともと漫画の編集者になりたいと思っていました。でも子どもの頃から夢が多かったもので、編集者だけでなく中学の国語の先生にも小説家にもなりたかったんです。

国語の先生は、教育実習でカリキュラムをこなすのに精一杯になり、教えたいこととのジレンマを感じて諦めました。小説家は文学賞の二次選考で落ちていたので、出版社に入って編集者になってから腕を磨こうと考えたのです。ところが、出版関係の会社を20社受けたのに落ちてしまいまして、名古屋の印刷会社でコピーライターとして働いて、2016年に独立しました。

 

――小説家ではありませんが、ご自身の著書を出されるまでになりました。御本を書かれたきっかけを教えてください。

印刷会社に勤めて2〜3年目の話です。入社した時に、産休で私に仕事を引き継ぐコピーライターの先輩がいました。

無事にお子さんも産まれて、先輩は会社に産休明けで戻って来ました。その後、2人目も出産されて次の産休明けに会社に復帰すると、厳しい上司と働き方について話がこじれてしまったんです。入社前に、結婚・出産しても続けられる会社だと調べて入ったにもかかわらず、先輩が退職に追い込まれた。それを目の当たりにしたのがきっかけですね。

女子の人気職種や親御さんから支持される職業は、働きやすさに黄色信号!?

 

――産休・育休制度があるだけでは仕事と子育てが両立できなかったり、場合によっては仕事を続けられなくなったりする現場に居合わせてしまったのですね。さまざまな方に取材する中で、世間的にも続けやすいと思われているのに、意外と大変に思われた仕事はありますか?

公務員ですね。仕事内容が安定していて、誰でも続けやすいイメージがありますが、別居婚の多いことに驚きました。

たとえば結婚前に、彼氏と別々の自治体で働いていたとします。結婚後にどちらかが相手の自治体に転職しようとすると、どうも採用されづらいらしいんですよ。そのため新婚でも、やむなく別居を選ぶのだそうです。お給料や仕事内容は安定していますが、一度その自治体を離れたら、同じ職に就きにくいのが意外でしたね。

 

――読者の中にはこれから転職を目指す人もいれば、お子さんが就職される方もいらっしゃると思います。女性に人気なのに離職率の高い職種を教えてください。

あくまで私の主観ですが、世の中にあまり知られていないところでいうと、パティシエとウエディングプランナーでしょうか。

まずパティシエは大きな袋の小麦粉を運ぶなど、想像以上に重労働の多い職種です。冷蔵庫の中で作業することもあるので、冷え性の女性は特に大変です。

そのほかの大変さでいうと、バレンタインやクリスマス前は休日返上で深夜までケーキを作り続けるなど時間拘束が長いこと、キラキラした表向きのイメージとのギャップが挙げられます。就職して10年以内の離職率が99%というのに驚きました。

 

――ウエディングプランナーはいかがですか?

ウエディングプランナーは5〜10年働ける印象がありましたが、実際には3年で辞める人が多かったです。これは、100職種の中でもかなり短いですね。

打ち合わせは土日に集中して入るため、週末家にいることができません。お子さんがいても、学校が休みの土日に家族とゆっくり過ごせなくなります。

また、お客さまの要望に応えるため、調べ物と書類作りが欠かせません。たとえば、披露宴でバルーンを飛ばす希望があった場合、バルーンの値段を調べたり、予算内で収まるかどうかを確認したりして、自然と残業になりやすい。式当日の華やかな印象とはかけ離れた裏のすさまじさを垣間見て、辞める傾向があると感じました。

 

――パティシエやウエディングプランナーは、土日に家族と一緒にいられないことが多いのですね。家族にしわ寄せが行ってしまった例はありましたか?

50代のシステムエンジニアのお話は、とてもショッキングでした。その方は、男女雇用機会均等法が施行されてすぐに社会に出られたので、今よりもはるかに仕事と子育てのバランスが取りづらかったんですね。

ある日家に帰ったら、お子さんが一人真っ暗な部屋で体育座りしていた。自分がうまく両立できないばかりに、お子さんに負担がいってしまったことを悔いていらっしゃいました。

そのほかですと、小中学校の先生の間で「生徒と自分の子、どっちが大切なんだ?」という答えのない議論になり、先生同士が対立した話もありました。自分のお子さんが精神的に追い込まれている状況で、学校の生徒をフォローしたりして。「本当に自分の子どもには申し訳ないことをした」と話されるのを、私も泣きながら聞きましたね。

どんな職種でもやっぱり大切なのは「家族の協力」

――女性の「働きやすさ」の点から見て難しい職種や、仕事と子育ての両立をする上でぶつかった壁について話していただきました。取材を通して華井さんが実感したことを教えていただきたいのですが、女性はやはり結婚、出産といったライフイベントを乗り越えて仕事を続けるのが難しいと思いましたか?

出産後も同じ仕事を続けることは難しいには難しいのですが、家族の協力など環境が整えばできると思いました。

ハウスキーパーの方に家事代行を頼む方もいらっしゃいますが、全員が全員そんなにお金をかけられるとも限りません。となると、やっぱり家族の協力を含めた環境づくりがキモなのだと思います。本の中でほぼすべての職種に対して、「家族の協力が必要」と書きましたね。

 

――旦那さんの協力を得るために、取材で参考になった話はありますか?

テーマパークのキャストさんです。人に手順を教えるのが、とにかくうまいんですよ。上司も絶対に怒りません。

担当上司に書類を提出し忘れたとします。すると上司から「なんでこの書類を速く出さなくてはいけなかったかわかる?」と聞かれます。「すみません。わかりません」と言うと、「この書類はこの後、○月○日までに○○部署で処理をする。期限に遅れると、他の誰かが部署間を特急で届けにいかないといけない。その間、通常業務ができない人が出てきてしまうから、今日のこの時間までに出さなくちゃいけなかったんだよ」と、一切怒ることなく、会社の仕組みがわかるように説明してくれるんです。

同じように家庭でも、旦那さんに怒らないように話をするのだそうです。「洗濯物はこういうふうに干したほうがよく乾くよ」「テレビを夜中点けっぱなしにして寝るとよくないかわかる?」と。まるで、家にデキる上司が1人いるようですよね。子育てをしながら仕事を続ける女性は、自ら働きやすい環境を作り出していることがよくわかりました。

全国どこでも続けられる仕事。年齢にかかわらず手に職がつく仕事

――女性は結婚、出産以外でも、慣れ親しんだ仕事を辞めなくてはいけないことがあります。それが旦那さんの転勤です。最近では「転妻」と呼ばれますよね。住む場所が変わっても、以前の仕事が続けやすい職種を教えてください。

歯科衛生士は国家資格があるので、再就職しやすい職業です。お給料がよいところも魅力ですね。旦那さんの転勤などで引っ越しをしても、歯医者さんは全国どこにでもあるため、働きやすく人気があります。

そのほかですと私が選んだライターをはじめ、Webデザイナー、税理士、社会保険労務士は、フリーランスとして自宅で仕事がしやすいです。あとは、おじいちゃんおばあちゃんにパソコンを教えるパソコンインストラクターがあります。人生経験を活かして、全国でお仕事ができますね。

 

――以前と同じ仕事に就けなかったとしても、「転妻」や専業主婦の30〜40代の女性が新たなキャリアを築けそうな職種はありますか?

比較的資格を取るのが簡単で、取得後に即仕事に就ける職種ですと、視能訓練士と歯科衛生士がいいと思います。視能訓練士は、眼科検診や目のリハビリをお手伝いする職業ですね。

いずれも国家資格です。新たなキャリアを築く際に、資格取得までにお金がいくらかかるのか、時間がどれだけかかるのか。見極めが大切です。

 

――ということは、結構お金が必要になるのですね?

はい。歯科衛生士の例ですと、専門学校や歯科衛生士の養成学校に3年ほど通い、資格取得までに合計400万ほどかかります。

入学金と授業料は300万ほどですが、そのほか歯の模型に2万、さらに白衣、手袋、教材などもろもろ揃えるとプラス100万ぐらいかかります。もしこの額を用意できるのであれば、一生のお仕事なのでオススメします。なかなか難しいところではありますね。

 

――視能訓練士はいかがですか?

視能訓練士は、全般的に人数が不足気味です。今後は高齢化が進み、視覚障害を持つ人がさらに増えることが見込まれているので、とてもオススメの職業です。

資格試験を受験するまでに、専門学校で学ぶか、視能訓練士養成課程のある4年制大学に進学する必要があります。専門学校ですと、夜間1年制でかかる金額は合計160万ほど。入学金と授業料で約110万、実習費や教材などで50万ほどかかります。昼間の3年制に通っても、同額かそれ以上の学費が必要です。

通信課程で資格が取れるのか、実際に学校で授業を受けないと取得できないのか、最後に実習が待っているのか。判断するのに注意したい点はいくつかあるので、資格取得に必要な学校を見てから考えてもいいですね。本の中には「資格が必要」というアイコンを設けていますので、そこから逆引きをして参考にしていただけると嬉しいです。

 

『一生困らない 女子のための「手に職」図鑑』

華井由利奈 著 光文社

妊娠・出産を視野に入れ、自分にとって働きやすい仕事を探せる一冊。人気業種を中心に、全100種のリアルな情報を掲載しました。夢だけでは働き続けられない現代で、本当の「働きやすさ」を手に入れるための方法が満載です。

 

 

取材・文:横山由希路 PHOTO:刑部友康

 

 

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