【2018年米音楽界を歌詞でプレイバック】「I Might Need Security」チャンス・ザ・ラッパー~現代におけるアーティストとメディアの関係性
2018年の米チャートを賑わせたヒット曲や話題曲の中には、今年の米音楽界におけるトレンドや、社会の動きが歌詞に凝縮されているものがいくつも見られた。
米ビルボードがこれらの楽曲を起点に、米国における2018年の音楽事情/社会情勢を振り返っている。本日は、昨年8月に【SUMMER SONIC】に出演するために初来日を果たしたチャンス・ザ・ラッパーの「I Might Need Security」をピックアップする。
「I donate to the schools next, they call me a deadbeat daddy/ The Sun-Times gettin’ that Rauner business/ I got a hit-list so long I don’t know how to finish/ I bought the Chicagoist just to run you racist bitches out of business」(俺が学校に寄付してるうちに、あいつら俺のことを無責任な父親だと呼んでやがる/(シカゴ・)サンタイムズ紙は(元米イリノイ州知事ブルース・)ラウナーから仕事をもらってる/俺の“殺害対象リスト”は長すぎて、どうやって終わらせればいいのかわからない/お前ら不愉快なレイシストどもを廃業に追い込むためだけに、俺はシカゴイストを買ったんだ)
チャンス・ザ・ラッパーは2018年7月19日にサプライズ・リリースした「I Might Need Security」で、地元シカゴのローカル・ニュース/カルチャー・サイトのシカゴイストを買い取ったことを自慢し、自身のことを不当に報じたと感じたメディアをディスった。つまり、既存のマスコミが気に入らないのなら自分で経営すればいい、とばかりに行動に移したのだ。
チャンスは以前も、MTV Newsが自身のライブについて少し否定的なレビューを公開したことから、MTVとの提携を断つことも辞さないと言ったと報じられたことがある(このレビューはその後削除された)。
従来のメディアを回避する手段としてSNSが長くセレブに活用されてきたが、チャンスの媒体取得は、2018年にミュージシャンが報じられ方を著しく制御しようと試みた数少ない例のひとつだ。
ニッキー・ミナージュは、自分に批判的なツイートを投稿したブロガーにファンベースをけしかけ、自身がパーソナリティを務めるApple Musicの『クイーン・ラジオ』では、自分に関するさまざまな報道について自らコメントを発表した。ビヨンセも、米ヴォーグ誌9月号の表紙を飾った際、従来のような特集記事ではなく自分の言葉で語った記事を発表し、フォトグラファーを自ら指定するなど、前例のないレベルで編集に関わったとされる。
◎「I Might Need Security」音源
https://youtu.be/6ZAc41N2QRU
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