“社内初”を次々と実現!東京建物プロジェクトリーダーが実践した「味方」の作り方

“社内初”を次々と実現!東京建物プロジェクトリーダーが実践した「味方」の作り方

社内で初めて行うような企画を通すには、相当な困難がつきもの。

しかし、高級分譲マンション「Brillia(ブリリア)」シリーズで知られる東京建物の黒田敏さんは次々と“社内初”の取り組みを成功させています。

モデルルームへのVRシステム導入や超高額案件へのバレーサービス導入、モデルルーム併設コミュニティ施設の開発など、“それ、通せるの?”と思うような企画を通してきた秘訣は何なのでしょうか。

プロフィール

黒田 敏(くろだ さとし)

東京建物株式会社住宅事業部・主任

1989年生まれ。同志社大学卒業後、東京建物株式会社に入社。住宅営業部にてマンションの販売に従事した後、2013年11月より首都圏を中心としたマンション開発を手掛ける住宅事業部に異動。主任として、大規模のタワーマンションや商業複合開発プロジェクトをメインに担当している。現在、仕事に従事しながらMBAの取得を目指し通学中。

「自分だからできた」が欲しい──上司の信頼を得て成果をあげる

─これまで次々と社内初の企画を提案し通してきていらっしゃいますが、なぜそこまで精力的に仕事に取り組まれるのでしょうか?

学生時代ずっとスポーツをやっていたんですが、スポーツの世界は勝ち負けがはっきりしているし、チームプレイならば、みんなで頑張って成果を出すものですよね。自分の頑張りが勝利に少しでも貢献できたとき、やっていてよかったとやりがいを感じていたので、仕事でもそこを求めています。それに僕、基本的に「目立ちたがり屋」なんですよ(笑)。だから誰よりも「貢献したい」という気持ちは強いのかもしれません。

―結果を求めてチームで協力し合う、ということにこだわりを持ちつつ、「目立ちたい」ということなんですね。新入社員のころから「目立ちたい」というスタンスでやっていらしたのでしょうか?

思いはあったのですが、入社当時は難しかったです。営業として神奈川県の大規模物件のモデルルームに配属されたのですが、来場されるお客様が1週間に20組ほどなのに対して、迎える営業は50人。毎日毎日、「どうしたら営業に出られるのだろうか」とばかり考えていました。電話には一番に出るとか、なるべく先輩の営業についていくとか、いろいろ自分なりの工夫をしたんです。それでも1年半の間に接客できたのは、たったの7件。もちろん、契約件数ゼロ。やりがいを感じることができず、「もうやめよう…」と思うこともありました。そんなとき、都心の人気エリアの物件に異動になったんです。

─営業環境はかなり変わりましたか?

そうですね。日本で初めて区の庁舎と一体で建つマンションで、立地も好条件で、物件自体のポテンシャルが非常に高かった。そのおかげもあって、ようやく初契約を取ることができました。

でも、契約が取れて仕事が実る喜びを感じる一方で、「これは物件がよかっただけで、自分の力で売れたのではないのではないか…」とジレンマを感じるようになってきたんです。このあたりから、「黒田の接客だから買ってもらえた」というような手ごたえが欲しくて、仕事に“オリジナリティ”をプラスしたいと考えるようになりました。

―具体的にどんなことをなさったのですか?

入社2年目の若造の話は、上司は聞いてくれるものの、話半分の部分もあります。その中で、自分のお客様の購入確率が高いことを説得しても、信じてもらえず、「お客様の情報が少ない!もっと詳しく聞いてきて」と突っぱねられることも。その結果、お客様に何度もヒアリングすることが増えてしまい、お客様は私に対して不信感を抱き、契約したい気持ちが弱まってしまうことがありました。これでは、なかなか契約をとることができません。

そこで、社内の説得をスムーズにできるようにして、自分の想いのままにお客様を契約に導くため、まず社内の上司から信頼を獲得しようと思ったんです。でも、そのときの上司が、めちゃくちゃ仕事のデキる厳しい人で(笑)。苦労しましたが、その現場の中で4位の成績を収めることができました。

結果が伴ったことで、「“上司”からの信頼」の重要さを学びましたね。

―上司の信頼を得るために何をなさったのですか?

仕事への前向きな姿勢を見せることを意識しました。「誰よりも働く・雑用も喜んでする」「朝は誰よりも早く行って準備する」など、体育会系の上司だったのでボディブローのように、じわじわと信頼につながっていたんではないかと思います。また、excelの罫線の使い分けなど、書類の作り方の基本もこのときに学びました。さらには自分のお客様がどういった背景で物件を検討しているかなど、細かく押さえ「報・連・相」を徹底しました。

部内で頼られる存在になりたい──予算管理ナンバーワンを目指す

─その後、デベロッパーにとっての花形部署、住宅事業部に異動されていますね。営業から企画に職種が変わって仕事へのスタンスは変わりましたか?

異動後、1年くらい基礎学習期間として業務を知るために費やすことにしました。

その間、部内の“エース”を探して、研究していましたね。部署のエースは、なぜ上司に頼られるのか。研究し、マネをして「自分のものになりつつあるな」と思ったら、それを自分なりに昇華し、オリジナリティを加えていく。新しい仕事の中でもスタンスは変わらなかったですね。

─「人のフリ」を見て学んでいくのですね。ここでは何を追求なさったのですか?

部内の“お金関係”です。部長の信頼が厚いエースは、とにかく予算管理やプロジェクトのお金を作ることに秀でていたんです。「信頼を得るためには“お金関係”を理解しなくては」と、知識のないまま部の予算管理担当に立候補しました。案の定、簿記3級を取ってみたもののそれじゃ全然歯が立たず、扱う単位が大きいこともあり、最初は地獄の日々でした(笑)。でも四苦八苦しながらも予算管理に詳しくなっていくと、それが自信になっていきました。

―自分の企画を通すにあたっても、お金に精通していることはとても有効だったんですね。

そうですね。全体予算を把握しているので、「この企画にいくらかかるけれども、こっちの予算は削減できるので、プロジェクト全体は高い利益率になる」と方針が立てられるのです。自分が新しい企画を立てるとき、数字で見通しが示せるというのは大きなポイントになっていますね。

今では部署の中でも1、2を争うくらい分譲住宅のプロジェクト予算管理に対しては詳しいと自信があります。現在一緒にペアを組んでいる先輩は、私より後から今の部署に来たこともあり、頼りにしていただけているかなと思います。

積極的に社外のコネクションを作り、虎視眈々と新たな企画に向けてチャンスを狙う

いよいよ社内初の企画を通す──失敗しても学べばいい

―プロジェクトの予算管理をマスターされた後、黒田さんの初企画が「モデルルームへのVRシステム導入」でしたね。どういうきっかけでこの企画を考えられたのですか?

もともと、該当物件の販売センターの狭さを解消するために考えた手段でした。本来であれば2部屋はモデルルームを用意したかったんですが、広さ的に1部屋分のスペースしかなかったんです。もう1つ別の場所を借りてモデルルームを作るのもお金がかかるので、どうせお金をかけるなら、ちょうど世の中に出始めた「VR(仮想現実)」で何とかできないかと考えたのがきっかけでした。

―会社にとっての初めての試みだったんですよね。社内では当然不安があったかと思います。ご自身も企画を作るのは初めてという中で、どのようにして承認を得られたのでしょうか?

社内で何度かVR体験会を開きました。会社の先輩から紹介を受けたVR制作会社にお願いしたんです。当然、社内の決裁権のある重要人物が来てもらえる日程で実施しました(笑)。そして、実際にVRを体験してもらい、その結果から「手応えがあるか、エンドユーザーに対しても試してみたい」という感じで本格的に物件の企画にしていきました。まずは、触れ合ってもらって、良さを感じてもらう。ロビー活動ですね。

─実際に導入した「VRシステム」の反響はいかがでしたか?

確かに、社内的な反応はよかったんですが、マンションの購買に寄与したかという観点では、私的には満足とまでは、言えない状況です。来場したお子様たちに喜んでもらえたし、エンターテインメントとしては楽しんでもらえたのですが、投資したからには、購買につながらなければ自己満足で終わってしまいます。当時の自分にとっては、大事な学びでしたね。新しいことをやって、それが結果として微妙であれば、素直に結果を受け止めて反省して次回に生かすべきだと思いました。

新しいことをやるのに近道はない

──「一緒にやる味方」をつくるために時間をかける

─ホテルのようにエントランスで車を預かり、駐車する「バレーサービス」をマンションに導入した時も社内の不安は大きかったのですか?

これは社内よりも、お客様と最も接点を持つ管理会社からの不安の声がありました。管理会社にとっても、今まで実績がない初めてのサービスなので、不安を解消するためのすり合わせに相当時間がかかりました。

―どのように社外である管理会社に対応なさったのでしょうか?

ペアの先輩と一緒に管理会社の担当者と実際にバレーサービスをしている現場を見に行きました。そこで、どのようなオペレーションが行われているのか、リアルにイメージを持ってもらったうえで、実際の物件の運用に落とし込むことを行いました。

同じ会社でなくてもチームであることは変わりないので、「一緒に見に行きませんか?一緒に考えませんか?」という空気をどれだけ作れるかはとても重要だと思っていました。今もこの手触り感がクオリティの高いサービスを作る要因でもあると考えています。また打ち合わせのときに不安や懸念点がでれば、次に会うときに解決案を持っていく。常に企画の実現に向けて前向きに話すこと。できない理由をつぶしていくのではなく、ときには「“やる”ためには何が必要ですか?」などと聞くことで実現させるなど、強い気持ちを相手にもわかるように意識的に巻き込んでいきました。

─一緒にやる仲間、味方をつくる時間を惜しんではいけないということですね。

新しいことをやるには、近道はないんです。上司に対しても、社外に対しても、時間をかけて不安をつぶしていくほうが企画は通りやすい。新企画を通そうとしたら「否」が出るのは当然なんです。だから、まずは上司やチームのメンバーに、事業性は問題ないことを明確にすること、また新企画が必要であるロジックやデータを具体的に示すことが重要になります。そこが説得できなければその先にはいかないので。

一般的には「ハレーションを発生させてまで、新しい企画をやりたくない。」「面倒は起こしたくない。」「ルーティンを丁寧にやる」というマインドの人が多いと思います。

でも僕が企画を立てるときは、事前に今よりもよくなると思える叶えたいビジョンがあって、「絶対にこの新しいことをやる!」と決めて、心を鬼にする。ハレーションや批判を謙虚に聞き入れ、解決策をひたすら時間をかけて探し、納得いくまで提案する。すべてなくなることは少ないですが、「いったんやってみるか」と賛成してくれることが結構多いんです。

―実際に、先輩の助けが大きな力になって通せた企画もあるとか。

今お話ししているここ、OOOI(おーい)ですね。ここはモデルルームに併設したコミュニティ施設です。地縁のある方々が気軽にモデルルームに入れるように、地域にとって必要なコミュニティスペース作りを提案したら、先輩が契約書や稟議、社内外の根回しなどを一手に引き受けてくれたんです。おかげで新企画に一生懸命注力することができました。個人で動いているように見えて、チームプレイなんですよね。

「おーっい!」って声をかけられるコミュニティスペース、大井町の「Loco-café OOOI(おーい)」。ランチやカフェのほかワークショップも開催している。

―どうやったら“チームプレイ”のように、周囲の協力を得ることができるのでしょうか?

基本中の基本ですが、やはり仕事で信頼関係を築くにはいわゆる「ホウレンソウ(報告・連絡・相談)」が重要だと思います。営業から企画へと職種が変わっても、信頼のベースはそこにしかないんじゃないかな。それに加えて、特定の分野のスペシャリストとして部署内での立場を確立できていることも重要です。私の場合は予算管理とトレンド情報ですね。今では「新しいことは黒田に聞け」みたいな雰囲気になってきています(笑)。

──最後に今後のビジョンや目標を教えてください。

今の部署では幸い恵まれた物件を数多く担当させていただけたこともあり、非常に充実した取り組みが出来ていると思っています。まだブランドの力に頼っている部分もあるので、今後も、自分の仕事が売り上げにどこまで貢献できたのか、意味があったのかという部分についてはまだまだ突き詰めていきたいです。

営業時代もそうでしたが、やはり「自分が企画したから、お客様に選んでいただけた」という手ごたえが欲しいんですよね。今後もたくさんの人を巻き込んで、多くの人に認めてもらい、喜んでもらえるような仕事をしていきたいです。さらに目立てるように頑張ります!

どんなに素晴らしいアイデアがあっても、実行するには多くの人の協力が必要です。

黒田さんのお話から、まずは何よりも自分自身への信頼度を上げるために、周囲の人とチーム意識をもって自分から信頼していくことが重要だとわかります。

「新しいことをやるのに近道はない」。心に留めながら、頼られる人材になるための努力を惜しまず、周囲と目的を共有していくことが、チーム感を作り、その先の企画の実現につながりそうですね。

文:Loco共感編集部 トミザワヒナ

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