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核共有に魅かれる日本が核兵器禁止条約に賛成?──日本の核共有はNPTに違反と米科学者連合専門家(核情報)

今回は『核情報』からご寄稿いただきました。

核共有に魅かれる日本が核兵器禁止条約に賛成?──日本の核共有はNPTに違反と米科学者連合専門家(核情報)

2009年に米議会委員会で証言した日本側の一人から、日本の不安を解消するには「ニュークリア・シェアリング(核共有)」しかないと聞かされたと米「憂慮する科学者同盟(UCS)」のグレゴリー・カラキー氏が書いています(2010年3月の報告書(pdf*1 ))。カラキー氏は、秋葉剛男公使(現外務省事務次官)が米議会委員会に提出した文書やその関連文書を公開し、米国の「核態勢の見直し(NPR)」と日本の核政策の関係について注意を喚起した米中関係・核問題の専門家です。

*1:「JAPAN AND AMERICA’S NUCLEAR POSTURE(PDF)」『Union of Concerned Scientists』
https://www.ucsusa.org/sites/default/files/legacy/assets/documents/nwgs/japan-american-nuclear-posture.pdf

2010年3月版の報告書では名前が出てきませんが、2013年版(pdf*2 )ではこれが秋葉氏であることが分かります。秋葉氏は2009年11月にカラキー氏と会った際、米国は本当に核で日本を守ってくれるだろうかという日本側の懸念を解消する「唯一の方法は、米国が日本に米国の核兵器をいつ使うかを決める権限を与え、このような『核共有』の取り決めについて北朝鮮と中国の両方に明確に伝えることだ」と述べたといいます。核共有に魅せられているのは秋葉氏一人というわけではありません。安倍首相を初めとする政治家やいろいろな論客が核共有について検討すべきと語っています。

*2:「JAPAN AND AMERICA’S NUCLEAR POSTURE An Update(PDF)」『Union of Concerned Scientists』
https://www.ucsusa.org/sites/default/files/legacy/assets/documents/nwgs/Japan-US-Nuclear-Posture-Update.pdf

核兵器を先には使わないという「先制不使用」策を米国が採用することに反対し、核共有に魅せられる日本という実態と、核保有国と非核兵器国の橋渡しをしたいとする表向きの主張。日本政府に核兵器禁止条約への署名を求める声と日本の実態との乖離をどうとらえるべきか? 日本の反核運動が取り組むべき課題は? このような問題について考える際の準備作業として、以下、核共有の実態と幻想、NPTの下における日本の義務との関係などについて簡単に見ておきましょう。

 

「共有」といっても核使用決定権は最後まで米大統領に

「核共有」というのは、米国と欧州の「北大西洋条約機構(NATO)」加盟国が冷戦時代以来とっている体制です。「米科学者連合(FAS)」の核問題専門家ハンス・クリステンセン氏によると、米国が現在保有する戦術核はB61型自由落下核爆弾が約200発(B61-3及び-4がそれぞれ100発:威力は0.3 ~ 170キロトンまで調整可。広島・長崎は約20キロトン)です(4月10日付メール)。このうち、欧州に配備されているのが約150発で、ベルギー、ドイツ、イタリア、オランダ、トルコの5カ国の6基地にあります。その中の約80発がトルコを除く4カ国の航空機での投下用となっています(注1)。4カ国のパイロットたちは定期的に模擬投下訓練を受けています。これらの核兵器は通常は米国の管理下にあり、米国大統領が核投下の決定を下すと4カ国の航空機に搭載されるという仕組みです。

ここで注意しなければならないのは、核使用の準備も搭載も離陸も米国の承認が前提だという点です(例えば、「核脅威イニシアティブ(NTI)」の2011年報告書:Options for NATO Nuclear Sharing Arrangements*3 。執筆は元NATO防衛大学研究ディレクターと元米空軍少将)。前もって権限が受入国側に移譲され、その後は受入国側の好きなタイミングで搭載・離陸となるというのではありません。受入国側にあるのは爆撃参加の拒否権であって勝手に使用する権限ではありません。この意味で秋葉氏が期待している(とされている)のは、ないものねだりと言えます。

*3:「Options for NATO Nuclear Sharing Arrangements」2011年11月17日『NTI』
https://www.nti.org/analysis/articles/options-nato-nuclear-sharing-arrangements/

 

NATOの核共有とNPT

NATOにおけるこの体制は「核不拡散条約(NPT)」締結の前から存在していたものです(当初はもっと多様な核兵器の「共有」がされていました)。米国は、この体制の維持を前提にNPTを交渉しており、ソ連側にもそれを伝えてあったから(反論がないことから)、これはNPTに違反しないと主張してきました。米国側の立場は1967年に作成されたQ&Aに記されていて、この文書は1968-69年に米上院でNPTのドラフトに関する議論がされた際に政府から提示されました。そこでは次のように説明されています。第一条は「核兵器国は核兵器その他の核爆発装置又はその管理をいかなる者に対しても直接又は間接に移譲しないこと」を定めているが、運搬手段やその管理を移譲することは禁止していない。そして戦争をするとの決定がされれば、その時点でNPT効力はなくなる。(注2)要するに、[全面]戦争が始まればNPTはご破算となり、その時点でNATOの非核兵器国に配備してある米国の核爆弾をそれらの国のパイロットが運ぶことに問題はないし、その時点まで投下準備を整えておくのも問題ないというわけです。(注3)

そして69年の公聴会で、この点を強調するために、アール・ホイーラー統合参謀本部議長が次のように述べています。「NATOのすべての[核]兵器は、もちろん英国の保有するものを除き、いかなる時点においても、我が国の保管・コントロール下にあり、戦争の時点までその状態に置かれる。戦争となれば、大統領がこれらの兵器の我が国の同盟国への移譲を決定することができる。」

 

核共有に魅かれる政治家──実態を理解?

秋葉氏は核共有について話したことを否定していますが、核共有は政府関係者にとって魅力的なようです。例えば、石破茂元防衛相が昨年9月6日のテレビ朝日の番組で、米国の核の傘で守ってもらいながら「持たず、つくらず、持ち込ませず、議論もせず」でいいのかと発言して話題になりましたが、同氏は翌日の同局の番組で核共有の検討が必要とも述べています。同氏は「核共有」などの「核戦略については随分と以前から公の場でも論じて」来ていると説明しています(9月8日石破氏ブログ*4 )。どういうわけか、このことはほとんど注目されませんでした。

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