築地市場から密漁団まで決死の潜入! 食品業界最大のタブーを暴く一大ルポ
サカナとヤクザ。一見なんの関係もなさそうな両者ですが、実はそこには密接なかかわりがあるとしたら……?
「アワビもウナギもカニも、日本人の口にしている大多数が実は密漁品であり、その密漁ビジネスは、暴力団の巨大な資金源となっている」――そんな実態を突き止めるべく、築地市場での潜入労働をはじめ、北海道から九州、台湾、香港までまたをかけて突撃取材を敢行するなど、2013年から丸5年の取材を費やして書き上げた衝撃のルポが本書『サカナとヤクザ: 暴力団の巨大資金源「密漁ビジネス」を追う』です。
著者はフリーライターでありカメラマンでもある鈴木智彦氏。東日本大震災後に福島第一原子力発電所で作業員として勤務した際の体験をもとにした『ヤクザと原発 : 福島第一潜入記』や、当サイトでも以前にご紹介した『全員死刑: 大牟田4人殺害事件「死刑囚」獄中手記』といった著書でも知られています。本書も「暴力取材のエキスパート」と呼ばれ、暴力団に関する潜入ルポも経験済みの鈴木氏だからこそなしえた、実情に肉薄した内容だといえるでしょう。
鈴木氏が最初に取材したのは”三陸のアワビ”。大ヒットドラマ『あまちゃん』の舞台である岩手県でアワビの大規模密漁団が逮捕されていたことを知り現地へと赴いた鈴木氏は、密漁がヤクザのしのぎとなっており、闇ルートで近隣の料理屋や寿司屋に卸されるほか、アジア一の魚市場である築地市場にもやってくるという情報を入手します。
そこで次の取材先となったのが築地市場。ここでは実際に仲卸の軽子(配送人)として4か月間働き、仲卸の会社の役員から「築地で密漁アワビは売られている」という言葉を得ることに成功しています。
このように、その後も北海道ではナマコや毛ガニの密漁、九州・台湾・香港ではウナギの稚魚であるシラスウナギの密漁について取材を重ねていく鈴木氏。それは手を突っ込めば突っ込むほど、日に当ててはいけないものを引っ張り出していくかのような、日本の食品業界のタブーに切り込んでいくものとなります。しかしそうしたことに、密漁者やヤクザだけでなく水産庁や漁業組合、市場関係者も見て見ぬふりをしているのが現状だといえそう。
そして消費者である私たちもまた、完全なる共犯であると鈴木氏は指摘します。私たちは希少なサカナを求めるあまり、知らないうちに密漁品を食べ、結果、反社会的勢力に協力しているのかもしれない……。無知なままであれば「知らなかった」で済むかもしれませんが、本書を読んでしまってはもはや魚市場やお寿司屋さんには無邪気な気持ちでは行かれなくなりそうです。
豊洲市場への移転や2020年の東京オリンピックなど活気あるニュースがめぐる日本ですが、その陰にはこうした一端が厳然としてあるということは知っておいて損はないのではないでしょうか。
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