監禁!虐待!指導員のオレが夏を過ごした恐怖のフリースクール!
どうもどうも、特殊犯罪アナリスト&裏社会ライターの丸野裕行でっす。
今から10年前の2008年8月、京都府京丹波町の『丹波ナチュラルスクール』で入所者虐待事件が起こり、経営者ら8人が逮捕されました。罪状は、逮捕監禁容疑。
フリースクールに入った入所者たちに日常的な虐待行為を繰り返していたというこの事件。これと似たようなフリースクールは、不登校児の増加と共にまだまだ残っているようです。
今回お話を聞いたのは、4年前にとあるフリースクールに勤めていた経験があるという虻川さん(仮名、34歳)。そのフリースクールも『丹波ナチュラルスクール』のような所長が牛耳っていたそうです。今も入所者たちの地獄を目の当たりにした、熱い夏の記憶がフラッシュバックしてしまうという彼の話をとくとお聞きください。
刑務所のようなスケジュール
告白者/虻川康夫(仮名)34才 大阪市 学習塾講師
オレが大学時代の友人の紹介で、関西某市にあるNPO法人『ゆりかもめ自由スクール(仮名)』へ就職したのは、平成26年6月。
フリースクールとは、家庭内暴力や校内暴力、ひきこもり、不登校の子供から大人まで通う非学校的な施設のことだ。山々に囲まれた大自然の中で入所者を更正させることを目的としたこのスクール。1千坪の広大な土地に、職員10名、16~28才までの入所者23名が暮らしている。
教員免許を持っている男やもめのオレは、世間から隔離された入所者たちに満足な学校教育を受けさせるために雇われた。月給は38万とまずまずだ。
「まぁ、生徒はきっちりと言うことを聞くようには教育してあるから、心配しないようにね、虻川くん」
「はい、よろしくお願いします!」
所長の鳥越(仮名、50才)から手渡されたのは、集団生活のスケジュールだった。
6:00 起床
6:30 朝食作り・掃除
7:00 ランニング
7:30 朝食
8:00 学習
10:00 農作業
12:00 昼食作り
12:30 昼食
13:00 作業
18:00 夕食作り・風呂焚き
19:00 学習・入浴
21:00 就寝
それは30分刻みの過密スケジュール。いくらなんでも自由時間がないなんて、刑務所以上の厳しさだ。
「今日から、君らに勉強を教えてくれる虻川先生だ! 挨拶しろ!」
季節は夏。太陽の下、農作業や山の掃除中の入所者たちが建物前へ集められて自己紹介が行われた。みんな死んだような眼差しでオレを見ている。とても問題児だったとは思えない姿。
自由なはずのフリースクールとはこんなところなのか。
次の日からオレは学習の時間を任されることになったのだが、みんな奴隷のような生気のない表情でノートを取っている。
それもそのはず。古参の指導員の話によると、入所者の生活ぶりといえば、冷暖房もないプレハブ建物に男女別の部屋で生活し、夜にはドアを施錠、窓には金網が張り巡らされているそうだ。
過密スケジュールにおかわりの制限まで
朝食は麦飯と薄い味噌汁、昼食は生徒たちが作ったカレーやソーメン、うどん。夕食は、老人ホーム専門の仕出し業者が持ち込む300円の弁当。おかわりの回数さえ制限されていた。
それに対して指導者側は、毎日酒を浴びて贅沢三昧。これじゃ、まるでタコ部屋ではないか。おまけに風呂は冬は3日に1度、夏は2日に1度。教室内に籠もる汗と体臭が入り混じった異臭にはさすがに目が回った。
言うことを聞かなければ鉄拳制裁
就職して1ヵ月が経ち、様々なことがわかってきた。
このフリースクールは、問題のある子供を持つ親の不安を煽り、高額な費用を請求しているようだった。
その額は入所金だけでもざっと100万円以上。別途で月謝が13万もかかる。
それに、入所者に様々な内職もさせているのだ。
「あのぅ……みんな内職してるんですか?」
「そうや、あの仕事で数百万円以上も利益はある」
「でも、入所者にバイト代なんか払ってないんじゃ……」
「これも、教育の一環やないか! 忍耐力をつけるんや」
よくわからない理屈で強制労働も強いている。
暴力的な指導もたくさん眼につく。病気で食事を食べ残すと、竹刀で殴る・足蹴にする。施設から逃げ出そうものなら手錠で拘束して、逃げられなくする。
「こんなの暴行ですやん!!」
「しつけや! しつけ!」
傷害事件ばかり起こすヤンキーが入所してきたときも、体に焼酎を塗って柱にくくりつけ、屋外へ放置するという新人歓迎まで行うほどだ。体中がみたこともない山の虫にまみれた姿の彼は、地獄の夜を過ごし、見事に従順になった。
こんなやり方はおかしい。納得いかない日々がひと月近く過ぎた頃、突然、鳥越に呼び出された。
「今日は、生徒を1人入所させるから。手が回らないから、手伝ってください」
「は、はぁ……」
乗り気じゃない返事のオレが駆り出されたのは、作業用具を収納する納屋の前。陽が落ちかかった農道を施設のバンがやってきた。
強制的に入所者を監禁
引きこもっていそうなもやしっ子を連れた母親の2人を乗せている。学校や病院などから呼び出しがかかったことにして、親が施設まで連れ出したようだった。
「君やろ? 玉野ヒロシ君て?」
「……」
突然、指導員2人がもやしっ子に飛びかかる。ど、どないするんや!!
「な、なにするんや!!」
「虻川! 早よ、手伝え!!」
とっさに、オレも暴れるもやしっ子を押さえ込む。
「お母さん、早く行ってください!!」
鳥越の叫びにもやしっ子の唸りが合わさった。
「ヒロちゃん、ごめんね! 頑張っていい子になって帰ってきてね!!」
そういった母親を乗せたバンはすぐに走り去った。
「こおらぁ!! 親に迷惑かけくさって、この中にしばらく入って反省しとけ!!」
すぐさま、納屋に放り込まれたもやしっ子の絶叫が耳をつんざいた。これでホンマにええんのか……。
「なぁあに、明日の朝になれば、借りてきた猫みたいになっとるわ。しつけ、しつけ!! ガハハハハ!!」
この後は、入所後2ヵ月間ほどは保護者の面会もできない。親が面会にやって来ると所長が同席するのだ。それでは、親に言いたいことも言えない。
オレは、この次の日に辞表を書いて、このスクールを去った。しかし、この施設がすごいのは、卒業生に大手企業の管理職や弁護士、起業家になった人間も輩出しているというところだ。それもまた事実。これだけは否定できない。この常軌を逸したスパルタがいいのか、悪いのかも……。
■
法律の規定がなく、県などはスタッフや建物の基準を定めたガイドラインを策定しているが、他府県の入所者が多い施設では実態把握できないという。
問題行動のある子を持つ親は、「どれだけお金が掛かっても入所させたい」と金を払うのだ。預ける親も断腸の思いだろうが、こんなNPO法人もあるということを知っていてもらいたい。
(C)写真AC
―― 見たことのないものを見に行こう 『ガジェット通信』
(執筆者: 丸野裕行) ※あなたもガジェット通信で文章を執筆してみませんか
- ガジェット通信編集部への情報提供はこちら
- 記事内の筆者見解は明示のない限りガジェット通信を代表するものではありません。