今とは違う自分になりたい!変わるために必要なたった“2つ”のことーーマンガ「エンゼルバンク」に学ぶビジネス
『プロフェッショナルサラリーマン(プレジデント社、小学館文庫)』や『トップ1%の人だけが知っている「お金の真実」(日本経済新聞出版社)』等のベストセラー著者である俣野成敏さんに、ビジネスの視点で名作マンガを解説いただくコーナー(→)。今回は、三田紀房先生の『エンゼルバンク ドラゴン桜外伝』の第22回目です。
『エンゼルバンク』から学ぶ!【本日の一言】
こんにちは。俣野成敏です。
名作マンガは、ビジネス書に勝るとも劣らない、多くの示唆に富んでいます。ストーリーの面白さもさることながら、何気ないセリフの中にも、人生やビジネスについて深く考えさせられるものが少なくありません。そうした名作マンガの中から、私が特にオススメしたい一言をピックアップして解説することによって、その深い意味を味わっていただけたら幸いです。
©三田紀房/コルク
【本日の一言】
「話を聞いているうちに『あ、何だかできるかも』と思った」
(『エンゼルバンク ドラゴン桜外伝』第3巻 キャリア23より)
龍山高校の英語教師だった井野真々子(いのままこ)は、10年目にして仕事に飽きてしまい、転職を決意します。井野は、かつて一緒に働いていた弁護士の桜木建二(さくらぎけんじ)に相談。桜木は以前、経営破綻の危機にあった龍山高校で教鞭を取っていた時期があり、東大合格者を輩出することによって当校を救った救世主でした。
井野から話を聞いた桜木は、転職エージェント会社の転職代理人・海老沢康生(えびさわやすお)を紹介。井野は海老沢の下でキャリアパートナーとして働くことになりますが…。
転職代理人による“思いがけない提案”
大手商社に勤める北川は、「一般職ゆえに自分は評価されない」と、転職代理人・井野のところにやってきます。井野からの提案は、「ベンチャー企業の社長秘書」。井野は北川とともに女性経営者の岡本を訪問します。それまで大企業しか念頭になかった北川は、戸惑いながらも“ベンチャー企業の社長秘書”という職種が頭から離れなくなります。
気づけば一人、アポなしで岡本の会社の前でたたずむ北川。岡本と鉢合わせをしてしまい、海老沢、井野とともに4人で会食をすることになります。
物語の中で、4年前まで大手広告代理店の一般職だった岡本は、育児休暇後に会社へ戻ってみると、自分の席がなくなっていました。怒り心頭で転職をしようと海老沢のもとを訪れた岡本。ところが、海老沢から「転職なんかやめて独立起業したら」と言われ、話を聞いているうちに「本当に独立してしまった」というのでした。
4人での会食が終わり、井野と2人きりになると、北川は「岡本の会社に行く」決意を伝えます。自らの境遇を変えようと行動し続けた結果、ついにチャンスをつかんだ北川。こうして、井野も転職代理人として、初めての転職を成功させたのでした。
「他人の話に耳を傾ける」ことの大切さ
岡本も北川も、海老沢から提示された選択肢とは、どちらも「夢にも思い描いたことのない」提案でした。この思いがけない選択肢に対して、2人に共通していたのは「他人の話に耳を傾け続けた」という点です。これが今回、選んだ「本日の一言」の伏線になっています。
例えば、その道のプロにアドバイスを求め、「あなたにはこれができる」「こうしたほうがいい」と言われた際に、どこまで相手の話を受け入れ、行動に取り入れられるか?ということが、その後の結果を分けます。ここで万一、本人が考え方も価値観も変えず、「そんなバカな」と相手の言うことに聞く耳を持たなければ、もちろんきっかけをつかむこともできません。
出産前は普通のOLに過ぎなかった岡本が、「私が起業なんて」と思ったのもある意味、当然でしょう。しかし、岡本は海老沢というプロから話を聞いているうちに「自分だったらできるかも」と感じ、実際にアクションを起こしました。これが「大きく飛躍するチャンスを「つかめる人」と「つかめない人」の違いとは?(→)」の中でお話した「ありえない選択肢を取る」ということです。
他人の言葉は、自分の本気度を試す「バロメーター」
「他人の話に耳をかたむける」といっても、実際、相手がどの程度本気で言っているのかは、わからないのが実情です。もしかしたら、ただ単に軽い気持ちで「独立なんてどう?」と言っただけかもしれません。もしくは本気で「この人は独立が向いている」と信じていたとしても、その判断自体が間違っている可能性もあります。
または逆に、自分は独立したいと思っているのに、他人から「やめたほうがいい」と水を差される場合もあります。どちらにせよ、自分で選んだ結果は自分で受け止めるしかありません。
大事なことは、他人から言われた言葉に対して「自分がどう思うのか?」ということです。仮に、他人から「君には独立はムリだ」と言われた時に、「やっぱりそうか」と思ってあきらめるのか、それとも「何のこれしき」と思って奮闘するのかということです。
変わるためには「非日常」を取り入れること
結局、 “変わる”とは「今までとは違う自分になる」ということです。要は、それは「今までの日常の延長線上から、ルートを外れる」ことを意味します。
いつもと同じ生活の中で、いきなり周りの自分に対する評価が変わるというのは、なかなか起こりにくいことです。ですからチャンスをつかみたければ、岡本や北川のように、いつもとは違う外の世界に客観的な意見を求めに行く必要があります。
「日常を変える」ために必要なこととは、
(1) 外部からの客観的な評価を受ける勇気を持つこと
(2) 外部の評価を「それもありかも」と思って受け入れる柔軟性
この2つです。
人は、慣れ親しんだ日常から飛び出すのはこわいものです。しかしそうしない限り、おそらく明日も今日と同じ日が続くだけです。「リスク」の本来の意味は、不確実性。結局は、自分自身がどういう未来を信じていられるかにかかっています。
俣野成敏(またの・なるとし)
30歳の時に遭遇したリストラと同時に公募された社内ベンチャー制度で一念発起。年商14億円の企業に育てる。33歳でグループ約130社の現役最年少の役員に抜擢され、さらに40歳で本社召還、史上最年少の上級顧問に就任。『プロフェッショナルサラリーマン(→)』及び『一流の人はなぜそこまで、◯◯にこだわるのか?(→)』のシリーズが、それぞれ12万部を超えるベストセラーとなる。近著では、日本経済新聞出版社からシリーズ2作品目となる『トップ1%の人だけが知っている「仮想通貨の真実」(→)』を上梓。著作累計は38万部。2012年に独立、フランチャイズ2業態5店舗のビジネスオーナーや投資活動の傍ら、『日本IFP協会公認マネースクール(IMS)』を共催。ビジネス誌の掲載実績多数。『ZUU online』『MONEY VOICE』『リクナビNEXTジャーナル』等のオンラインメディアにも寄稿。『まぐまぐ大賞(MONEY VOICE賞)』1位に2年連続で選出されている。一般社団法人日本IFP協会金融教育研究室顧問。
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