オスになるべきか、メスになるべきか?(市立しものせき水族館 海響館)
今回は『市立しものせき水族館 海響館』ブログより魚類展示課 笠井未来さん執筆の記事からご寄稿いただきました。
オスになるべきか、メスになるべきか?(市立しものせき水族館 海響館)
魚の中には、一生の途中で性別が変わってしまう仲間がいるのを皆さんはご存知ですか?今回は、そんな性転換(性別が変わる事)をする魚たちをご紹介したいと思います。
メスからオスへ変わる魚~クエ~
高級魚として知られ、九州ではアラとも呼ばれるクエ。なんと、クエは生まれた時はみんなメスとして生まれてくるんです!そして、オス1尾にメスたくさんのハーレムという群れを作りますが、ハーレムのオスが何かの理由でいなくなってしまうと、群れの中で一番大きなメスがオスに変わってそのハーレムを引き継ぎます。
では、なぜクエは途中でオスに変わるのでしょうか?ずっとメスでいる場合、残せる子孫は自分の産める卵の数だけですが、オスになってハーレムを持てばハーレム内の全てのメスの産んだ卵が自分の子孫となります。つまり、ずっとメスでいるよりも途中でオスになってメスをたくさんゲットする方が、より多く自分の子孫を残せるというわけなんです。
オスからメスへ変わる魚~カクレクマノミ~
水族館の人気者カクレクマノミは、1つのイソギンチャクに一番大きいメスとそれより少し小さなオスが一匹ずつ、さらに小さくまだ成熟していない個体が何匹かが入っていて、家族のようでなんともほほえましい光景ですよね。でも実は家族というわけではなく、みんな他のイソギンチャクで生まれた赤の他人(他魚?)なんです。こちらはクエとは逆で、メスがいなくなるとオスがメスに変わり、成熟していない小さなクマノミの中でも一番大きな個体が成熟してオスになります。
もしもカクレクマノミが生まれた時から性別が決まっていたとすると、生まれてからたまたま入ったイソギンチャクの同居魚が自分も含め全員オスなので子孫が残せませんでした…となる可能性があるので、性転換するようになったとも考えられています(ちなみに、メスを求めてイソギンチャクを出たとしても、捕食者に食べられてしまうことが多いとのこと)。
オス⇔メス、どちらにも変われる魚~ミジンベニハゼ~
ミジンベニハゼは砂泥底にすむ3cmほどの小型のハゼの仲間で、全身が綺麗な黄色なのが特徴です。また、貝殻や時には空き缶を住処として、オス1尾・メス1尾でペアで暮らします。ハゼの仲間の中には、オスからメス・メスからオスのどちらにも変われる種類(オキナワベニハゼなど)がいますが、ミジンベニハゼも観察しているとどうやら性転換しそうだな…ということで、実験して調べてみることにしました!
実験方法は簡単で、オス2尾を入れた水槽とメス2尾を入れた水槽を用意します。ミジンベニハゼが性転換出来ないのであれば、同性同士なのでしばらく飼育しても産卵しないはずですが、もし卵が発見出来たら2尾の内どちらかが性転換しているという事になります。そして、実験を始めて9日後に見事2つの水槽両方で卵が発見できました!…というわけで、ミジンベニハゼもオスからメス・メスからオスのどちらにも変われる事がこの実験で初めて分かりました。
性転換は魚の世界ではよくあることで、今分かっているだけでも約300種類の魚が性転換することが知られています。そして、まだまだ知られていない性転換する魚もたくさんいるので、1種類でも多く解明できるように頑張ります!!
魚類展示課 笠井未来
2015年12月30日
執筆: この記事は『市立しものせき水族館 海響館』ブログより魚類展示課 笠井未来さん執筆の記事からご寄稿いただきました。
寄稿いただいた記事は2018年10月16日時点のものです。
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