ライトニングトークに使うスライドの役割は『情報提供ではない』─マイクロソフト澤円のプレゼン塾(その15)

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ライトニングトークに使うスライドの役割は『情報提供ではない』─マイクロソフト澤円のプレゼン塾(その15)

IT業界の勉強会やカンファレンスでは盛んに行われているライトニングトーク(LT)。短時間のプレゼンテーションで観客を惹きつけるのはなかなか難しいもの。澤円のプレゼン塾・第15回は「澤流ライトニングトーク・テクニック」についてお伝えします。

澤流のライトニングトーク・テクニック

今回は、これまでの連載ではあまりふれてこなかった、プレゼンのかなり具体的なテクニックをお届けしたいと思います。テーマは「ライトニングトーク」です。

ライトニングトーク(LTと書かれることもあります)とは、カンファレンスなどで行われる短いプレゼンテーションのことをいいます。5分とか、場合によっては1~2分のこともあります。

これだけ短い時間だと、スライドをたくさん使って説明、というわけにはいきません。より純度の高い「核」を用意して、インパクトのある数分間を走り抜ける必要があります。

澤も時々ライトニングトークを依頼されることがありますし、プレゼン講習中に即興でやることもあります。ライトニングトークに関する考え方はいろいろあるとは思うのですが、私が最も重視しているのは「インパクト」です。

時間が限られているので、とにかくしっかりと心に響くメッセージを磨き上げて伝えることに集中します。使うスライドも壇上での話し方も、より大きなインパクトを与えることに重きを置いて、普段行うプレゼンテーションとは少しちがうアプローチをとります。

どのようにしてスライドを作り、どのような話し方をするのか、澤流のライトニングトーク・テクニックをご紹介します。

ライトニングトークにおける「核」の作り方

ライトニングトークにおいても、「」は不可欠です。「核」の位置付けは通常のプレゼンテーションとなんら変わりはないのですが、時間が短いという特徴を考えると、核はさらに純度が高いことが求められます。

私は1ワードに絞り込むようにしています。この1ワードは、ライトニングトークの締めくくりにも使えます。私が今まで行ったライトニングトークの核は「時間」「言葉」「仲間」などです。説明する時間が限られているのですから、なるべく普遍的な言葉にした方がいいでしょう。

もしも自社製品の説明をライトニングトークでするなら、顧客が得られるメリットを厳選した1ワードに紐付ければOKです。選んだ1ワードにまつわるエピソードや考察などを絡めて、スライドを作っていくことになります。もちろん、プレゼンの時間軸は未来を向きます。

ライトニングトーク用のスライドの作り方

ライトニングトークをするときに使うスライドは、通常のプレゼンテーションのスライドと大きく違うものなのでしょうか?

私は普段から文字の少なめのスライドを使うのですが、ライトニングトークの場合にはさらに文字を削ってしまいます。ライトニングトークにおけるスライドの役割は、「情報提供ではない」というのが私の持論です。

ただでさえ時間が短いわけですから、伝えられる情報には限りがあります。そんな場面で文字だらけのスライドを表示してしまうと、聴衆の視線はずっと文字を追うことになり、かっこよくプレゼンをしているあなたの魅力を半減させてしまいます。

サムライインキュベート主催の「サムライベンチャーサミット」というイベントでは、「サムライシャウト」というライトニングトークのセッションがあります。ここでは、2分しかプレゼン時間はありません。ここ数回、澤も「サムライシャウト」の登壇機会をいただいています。

そこで使うスライドの基本構成はいつも同じです。全部で大体4〜5枚、ほとんどが写真、入れる文字も1ワード・1センテンスです。会場は薄暗くしてあるので、スライドの背景も黒にしておいて、スライドに貼り付けられた画像のインパクトが際立つようにしてあります。

他のプレゼンテーションでもよくやるのですが、特にライトニングトーク用のスライドを作るとき最初にすることは、プレゼンテーションの「核」をキーワードにした画像検索です。

以前やった「サムライシャウト」のスライドを例にして、作るまでのプロセスを説明しましょう。

サムライベンチャーサミットは、あまたあるベンチャー企業に認知度向上と人脈作りの場を提供することを目的にしています。日本マイクロソフトは、会場を貸し出すという形で協力をしています。

そこで澤は、立ち位置を「応援する」というポイントに決め、認知度向上のために必要な行動について伝えることにしました。そのためのプレゼンの核は「言葉」です。

ベンチャー企業の皆様に、世の中にどんどん言葉を発信してほしい、という思いを込めてプレゼンをしました。

「初めに言(ことば)があった」という聖書のフレーズをたまたま知っていたので、まずは聖書を画像検索。そのあとで「偉人 名言」で検索すると、それはそれはたくさん出てきます。名言集サイトもあれば、画像検索でたくさんの偉人たちがずらり。創作意欲がわきます(笑)。

ベンチャー企業にとって大事なのは、「チャレンジ精神と仲間」だと私は思っているので、チャレンジについてはエジソンさん、仲間についてはディズニーさんにお願いすることにしました。そして、最後のスライドはプレゼンの大事な核である「Words」で締めました。

スライドには偉人の言葉だけを並べておき、実際のプレゼンで自分の感じたことや聴衆に期待していることを伝えようとプランしました。

では、実際に使ったスライドを公開します。

おそらく、このスライドだけ見ても何を話したかわかりませんよね?

でも、ライトニングトークならこれくらいでいいかなと思います。もし自社の宣伝をしたいのであれば、あとで企業紹介のパンフレットを配ればいいだけの話です。ごちゃごちゃと文字を入れたところで、聴衆の記憶に刻むことは大変難しいです。

それならば、印象付けにフォーカスして、自分自身を相手の脳裏に焼き付けることに集中するべきだと私は思います。 ⇒次回は、実際に「このスライドでどんなプレゼンをしたのか」を紹介します。

著者プロフィール

澤 円(さわ まどか)氏

日本マイクロソフト株式会社 マイクロソフトテクノロジーセンター センター長   立教大学経済学部卒。生命保険のIT子会社勤務を経て、1997年、マイクロソフト(現日本マイクロソフト)に転職。情報共有系コンサルタントを経てプリセールスSEへ。競合対策専門営業チームマネージャ、ポータル&コラボレーショングループマネージャ、クラウドプラットフォーム営業本部本部長などを歴任。2011年7月、マイクロソフトテクノロジーセンター センター長に就任。著書に「外資系エリートのシンプルな伝え方」「マイクロソフト伝説マネジャーの世界世界No.1プレゼン術」

Twitter:@madoka510

※本記事は「CodeIQ MAGAZINE」掲載の記事を転載しております。

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