ガジェット通信 GetNews

見たことのないものを見に行こう

体験を伝える―『ガジェット通信』の考え方

面白いものを探しにいこう 本物を体験し体感しよう 会いたい人に会いに行こう 見たことのないものを見に行こう そしてそれをやわらかくみんなに伝えよう [→ガジェ通についてもっと詳しく] [→ガジェット通信フロアについて]
ガジェ通制作ライブ
→ガジェ通制作生放送一覧

新潮45『そんなにおかしいか「杉田水脈」論文』のおかしいところ ①藤岡信勝『LGBTと「生産性」の意味』(レインボーフラッグは誰のもの)

新潮45『そんなにおかしいか「杉田水脈」論文』のおかしいところ ①藤岡信勝『LGBTと「生産性」の意味』

今回は少年ブレンダさんのブログ『レインボーフラッグは誰のもの』からご寄稿いただきました。

新潮45『そんなにおかしいか「杉田水脈」論文』のおかしいところ ①藤岡信勝『LGBTと「生産性」の意味』(レインボーフラッグは誰のもの)

新潮45

新潮45、10月号に掲載された特別企画『そんなにおかしいか「杉田水脈」論文』を読んだ。これまでの事の経緯と、発売直後からの世間の反響は各社大メディアが伝えているので、そちらに譲る。
ここでは可読性と議論のポイントを踏まえ、必要最小限の指摘に留めたいので、7本の寄稿のうち、扉を飾ってもいる3本、藤岡信勝『LGBTと「生産性」の意味」、小川榮太郎『政治は「生きづらさ」という主観を救えない』、松浦大悟『特権ではなく「フェアな社会」を求む』の3本について、回をわけて触れる。

藤岡信勝『LGBTと「生産性」の意味』

・杉田発言が炎上したのは尾辻かな子の「誤読」せい
・「生産性」は少子化対策の話でしかない
・言うならマルクスも上野千鶴子も「生産性」を使ってるけどそれはいいのか

藤岡は杉田発言が「誤読」され「言葉狩りのターゲットとなった」として、「客観的な立場」から「杉田論文(ママ)」における「生産性」の意味について「考察する」と述べている。
そこで藤岡は冒頭、杉田発言を要約しているが、さらに要約すると次のような主張となる(詳細は※1)。

1. 同性愛はそれほど差別を受けてない
2. 「生きづらさ」は社会制度を変えても解消されない
3. 彼ら彼女ら(LGBT)は子供を作らない、つまり「生産性」がない
4. 病態である性同一性障害に医療の充実は必要だ
5. 同性婚を認めると社会が崩壊する

要約が概ね妥当だとしても、弱者に対する社会支援を初めから否定していることに違いはなく、LGBTに対して著しい誤解と偏見を伝えている。
しかし、藤岡は根拠もなく「全く何の違和感も持たなかった」と述べている。

最低限の指摘だが3「LGBT(彼ら彼女ら)は子供を作らない」は誤解であり、LGBTのうち、事実として生殖能力を持たないのは一部のトランスジェンダーだけだ。しかも技術的な問題である。LGBTについてよく知らないと驚くかもしれないが、トランスジェンダーを含めLGBTは生物学的、身体的には「健康な典型の男女」であり、殆どの者が生殖能力を有している(「セクシュアリティ」や「ジェンダー・アイデンティティ」は生物学的性別を意味しない)。

「子供を作らない」というのは世界中で見られる典型的なアンチゲイの言説なので読者には注意して欲しい。
「彼ら、彼女ら」は「子供を作らない」のでは決してない。現状の婚姻制度おいては、LGBTに限らず、社会弱者の中には子供を作りたくても作れない人たちが一定数いる、ということなのだ。これを当人たちが一種の「生きづらさ」「差別」として訴えた時、「社会制度」と無関係だとはとても言えない。制度が対応すればLGBTを初め、一定の社会弱者は子供を作り、家族を形成出来る(それを望むかどうかはともかく、子供を作る、家族を形成するという「選択肢」が持てる、ということ)。それこそ少子化を辿る日本の社会制度の問題としては避けて通れないアジェンダだ。

4の「性同一性障害に医療の充実が必要」は字数を考慮してスルーする。ただ、一言付け加えると「病態」はトランスジェンダーが医療ケアにアクセスする為の医学上の定義に過ぎない、という理解が世界的なスタンダードだ。筆者はLGBとTを「病態」で切り離すことは、例え「性同一性障害」としてトランスジェンダーを保護したとしても、一種の「トランスフォビア」だと考えている(これだけで一本書けてしまうのでこれ以上説明しない。長いと皆読まないし)。

上記の問題についてはLGBT当事者も決してよく理解しているわけではない。従って政治アジェンダとして「LGBT」支援を語る時「当事者はこう言っている」と安易に「当事者の声」を用いることは推奨されない。まして杉田発言のような差別的意見を擁護する「反論」としては乏しい。

また藤岡は、炎上の原因が尾辻かな子議員の「誤読」にあるとしている。
杉田は「少子化対策」の文脈で「生産性」に関して語っていたのであり「子供を持たない人一般」の話をしていたのではないと言うのだ(※2)。
ここが、前半部の一番のポイントだ。3について「生産性」と言っても、ある文脈の中での話だというのだ。

しかし、杉田は、初めから少子化対策の話をしていたわけでは決してなく「LGBT支援が不必要である」という前提で話をしていたはずだ。そのひとつの例として「子育てをする(男女の)カップル」と「子育てをしない」という偏見のもと「LGBT」を比較している。
この為に、杉田発言は、たんに少子化対策の枠組みでLGBT支援の是非を問うものではなく、より普遍的な意味で、社会支援の枠組みから「子供を作らない」=「生産性がない」人は「支援する必要がない」と世間の人々に受け止められた。であるが故に事態はLGBTだけでなく、様々な理由で子供を作れない人々への不当な差別発言として世間を震撼させたのである。

新潮45表紙

国語的読解力の欠如

後半部では動物行動学研究家・竹内久美子の論考「LGBTには『生産性』がある」が参照されたが、竹内への反論として内容がないのでこれはスルーする。

それより、後半での大きなポイントは「生産性」という言葉をマルクスや、マルクス・フェミニズムの旗手として知られる上野千鶴子も使っている、またフェミニズムのテーマでもある「リプロダクティブ・ヘルス・ライツ」(性と生殖に関する健康・権利)でも「リプロダクティブ」=「生産性」という用語が登場する、もし「生産性」という「分析概念」が非人間的だと非難されるなら、マルクス主義やフェミニズムも糾弾しなければならないという、全く珍妙としか言い様がない理屈を開陳していることだ。

1 2次のページ
寄稿の記事一覧をみる

記者:

ガジェット通信はデジタルガジェット情報・ライフスタイル提案等を提供するウェブ媒体です。シリアスさを排除し、ジョークを交えながら肩の力を抜いて楽しんでいただけるやわらかニュースサイトを目指しています。 こちらのアカウントから記事の寄稿依頼をさせていただいております。

TwitterID: getnews_kiko

  • 誤字を発見した方はこちらからご連絡ください。
  • ガジェット通信編集部への情報提供はこちらから
  • 記事内の筆者見解は明示のない限りガジェット通信を代表するものではありません。
スマホゲーム タラコたたき