危険なブロック塀、自治体によっては撤去・改修に助成も。大阪でも7月から制度が開始
6月18日に発生した大阪府北部を震源とする直下型地震によって、幼い命と引き換えに再びクローズアップされたのが、「ブロック塀」の危険性だ。戦後の建築ラッシュ時に、コストの安い遮へい壁や、防犯も兼ねた民家の外構壁として、ブロック塀は盛んに用いられた。もちろん現在の建築基準法で、ブロック塀の耐震性は確保されてはいるが、劣化や老朽化、違法な構造等により、その危険性が放置されているものも多い。自宅は? 子どもたちの通学路は? 私たちは、危険性をどう判断したらいいのか。その対策は? 行政の取り組みをまとめてみた。
危険なブロック塀は、これだ! 国土交通省が、公開したチェックポイントとは
6月18日朝方、筆者はこの時間もう職場のデスクに着いていた。時計の針が8時を指そうかとしたその瞬間。ドドーンと一発目の縦揺れがきた。続いて2発、3発と次第に大きくなってくる。阪神大震災も経験済みの筆者には時間はそんなに長く感じなかったが、その揺れは明らかにかつての大地震より強く感じた。
今回クローズアップされたブロック塀だが、1981年の施行令改正で規定された現在の建築基準法では、震度6強から7の地震でも倒壊しない強度を、ブロック塀に求めている。1978年6月の宮城県沖地震による犠牲者28人のうち18人がブロック塀や門柱の倒壊で死亡し、これが改正のきっかけとなった。
が、今回の地震で露呈したように、地震による倒壊等の危険が残るブロック塀が放置されているのも現実。
そこで、国土交通省が改めて、既設のブロック塀の危険度判定のポイントを示し、安全点検の必要性を広く告知している。以下のイラストがそれだ。国土交通省が発表した「ブロック塀の点検とチェックポイント」(国土交通省HPより転載)
上記イラストによると、チェックポイントは次の6つ。1つでも不適合があれば危険だ。
1.塀は高すぎないか…塀の高さは地盤から2.2m以下か
2.塀の厚さは十分か…塀の厚さは10cm以上か(塀の高さが2m超~2.2m以下の場合は15cm以上)
3.控え塀はあるか(塀の高さが1.2m超の場合)…塀の長さ3.4m以下ごとに、塀の高さの1/5以上突出した控え壁があるか
4.基礎があるか…コンクリートの基礎があるか
5.塀は健全か…傾きやひび割れはないか
6.塀に鉄筋は入っているか
チェックポイント1、2、3、5は私たちでも判断できる。
まず、メジャーをもって高さや幅などの寸法を計ってみる。そして、ひびや割れ、傾きなどをみて、手で押してぐらつきなども確かめてみるといいだろう。
が、チェックポイント4や6の内部の鉄筋の様子や、基礎の有無等、私たちが見ただけでは、判断がつかない部分もある。ちょっとでも心配であれば専門家に相談しよう。身近に業者が見つけられない場合は、市役所等に問い合わせてみるといい。建築関連の部署であれば、まず、業界団体の紹介をしてもらえるはずだ。そこから、具体的に専門業者に当たってみるといいだろう。
自宅のブロック塀を撤去、改修で自治体からの助成制度も
自宅のブロック塀で、不具合が見つかった場合。この危険性を取り除くためには、改修あるいは撤去によって、フェンスや生け垣といった別の物に取り換えるといったことが考えられる。各自治体では、この費用に対する補助金制度を設けて、危険なブロック塀の撤去を進めている。具体的に各自治体の補助制度をいくつか紹介する。
早くから大地震に対する都市防災対策を行っている東京都の文京区と新宿区の制度を紹介する。
文京区では、危険なブロック塀の撤去費用と新しい設置費用の両方を助成する。既存の塀の高さによって、額が違うが1m当たり撤去で5000円から1万円、設置費用として1m当たり1万円から2万5000円を助成する。例えば、塀の高さ2m×長さ10mであれば、撤去費用として10万円、新しく設置する費用として25万円の助成が受けられる。実際にかかる費用のかなりの部分が賄えるといえる。文京区の助成金例(文京区HPを参考にSUUMOジャーナル編集部にて作成)
新宿区の場合はどうだろう。こちらはブロック塀の除去のみの助成だ。長さ1m当たり1万円となり上限額20万円となっている。ただし、ブロック塀を生垣や植樹帯にする場合は「接道部緑化助成制度」という制度があり、最大30万円までの助成がある。
そのほか、東京都の各区での取り組みは、東京都耐震ポータルサイトがブロック塀の改善に活用できる助成制度一覧をまとめているので自分の住む地域に助成制度があるか確認してみよう。
このなかで、特に留意しておきたいのが、どの区の助成制度を見ても、あくまで家の前の道路や、公園といった公共のスペースに面したブロック塀だけがその対象になるということ。つまり左右の隣地(民有地)や家の裏との間のブロック塀は対象外だということ。文京区の助成の事例(文京区HPより画面キャプチャ)
大阪でも今回の地震を機に助成制度がスタート
次に、今回の地震の震源地となった大阪府の各市の場合はどうだろう。実は、関西ではかつて大きな地震の危険が見込まれていなかった事情もあり、市街地の危険なブロック塀の対策が遅れていた。そして、今回の災害を契機に、一気にその流れができ、ようやく高槻市や大阪市、堺市などでも7月に助成制度がスタートした。
高槻市の例を見てみよう。ここでは、ブロック塀の撤去費用のみの助成になる。補助額は実際にかかった撤去費用の最大20万円まで、指定された通学路に面する塀は30万円まで、とある。特に通学路の安全性に留意した制度だ。
大阪市の場合、補助限度額は、撤去に際しては15万円、軽量フェンス等の新設工事費用として25万円だが、2018年度、2019年度に限り、補助限度額が5万円引き上げられている。所有者に対してより迅速な対応を促す制度となっている。
通学路や自宅以外の危険なブロック塀は、どうすればいい?
ブロック塀の撤去費用の助成制度は、自宅のブロック塀をその所有者が点検し、危険性を取り除くためのものだ。では、自宅以外のブロック塀はどうすればいいのか。国交省の「通学路を含めた点検を」との呼び掛けに、各自治体は、教育委員会も含めて点検に回っている。そして、応急的な対応として、学校施設のブロック塀などには注意を促す張り紙を張って告知している。学校施設のブロック塀に張られた注意を促す告知(写真撮影/コハマジュンイチ)
豊中市や吹田市では、基準に照らし危険性があると思われるロック塀のある民家には、点検と安全対策を求めるチラシを投函している。つまり個人の所有する家のブロック塀は、「お願い」で終わっているのが現状だ。
小学校を含めた公共施設のブロック塀は、行政の取組みが進むが、個人の所有物である民家のブロック塀からその危険性を除去するために、行政ができることは残念ながら限られているという訳だ。
今回の地震では小学校に設置されたプール横のブロック塀の下敷きになった女児の命が失われた。小学校のプールの横に塀がある理由は、文部科学省の「小学校施設整備指針」に「屋外プールは・・・周囲に、遮へい板、囲障壁等の施設を設けることが重要である」との記述があることに起因する。つまり、小学校のプールは外から見えないよう遮へいし、壁で囲むことが求められているのだ。
コストの面から、多く導入されたであろうブロック塀だが、今は遮へいの機能もあり、軽いアルミなどの材料で代替も可能だと思う。大きな地震の発生が予見されている今の時代に合った、より安全な塀の導入が急務だ。
もうひとつ。個人の財産である塀の危険を取り除くのは「所有者の自覚」しかない。撤去・改修には大きな費用がかかるのも事実だが、所有する壁が老朽化し不具合が認められるままで、通行人等にケガをさせてしまった場合、所有者に重い責任が問われる場合があるということを認識してほしい。
関西でもようやくスタートした、ブロック塀の撤去改修の助成制度。まずこの制度の充実を望みたい。●各自治体の助成制度
▼大阪府
・高槻市 ブロック塀等の撤去を促進する補助制度について
・大阪市 大阪市ブロック塀等撤去促進事業
・堺市 指定通学路の危険なブロック塀の撤去等に補助します!
▼東京都
・文京区 ブロック塀等改修工事費助成
・新宿区 ブロック塀等の除去に対する助成
・東京都耐震ポータルサイト ブロック塀の改善に活用できる助成制度一覧
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