第62回 今後のMCUに大きな影響を与える(!?)2018年公開の3本とは?
『アベンジャーズ:インフィニティ・ウォー』の興奮冷めやらぬ中、7月4日には、この春社会現象にまでなった『ブラックパンサー』がついにデジタル配信・DVD・ブルーレイ化され、来月8月31日にはマーベル・ヒーロー映画最新作『アントマン&ワスプ』が公開されます。
一足早く『アントマン&ワスプ』を観せていただいたのですが、これがまた傑作! 殺伐としたシーンもなく、楽しいアクションが満載の嬉しくなるようなヒーロー活劇に仕上がっています。テクノロジーで身体のサイズを変えられるアントマン(蟻男)とワスプ(蜂女)のバディ物で2人が大活躍しますが、その一方でちゃんと『アベンジャーズ:インフィニティ・ウォー』とリンク、さらに来年公開の『アベンジャーズ4(仮題)』につながる重要な伏線も!
とにかく今年のマーベルも『ブラックパンサー』『アベンジャーズ:インフィニティ・ウォー』そして『アントマン&ワスプ』と3作連続で内容的にも興行面でも大ヒットを飛ばしてくれました。今年は『アイアンマン』から始まる、一連のアベンジャーズ系映画=マーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)10周年の年であり、それに相応しい成功をこの3作はおさめたと思います。
そして興味深いのはこの3作が、これからのMCUに大きな影響を与える視点を持ち込んだことです。『ブラックパンサー』はMCU初の黒人ヒーローが主役です。黒人キャラは今までのMCUにも登場していますが、黒人ヒーロー名がタイトルとなり主人公というは本作が初めてです。
そして『アベンジャーズ:インフィニティ・ウォー』はタイトルこそアベンジャーズですが、事実上の主役はヴィラン(ヒーローに対しての悪役)サノスです。映画の最後に”THANOS WILL RETURN”(サノスは帰ってくる)という字幕が出ます。今までのMCUでは、ここにはその映画のメイン・ヒーローの名が出るので、つまり製作者たちは、ある意味サノスもヒーローであり、本編の主役は彼だったと言っているわけです。実際、『アベンジャーズ:インフィニティ・ウォー』をサノスの映画だったと考えれば、あのエンディングも納得できるでしょう。
『アントマン&ワスプ』は”連名”とはいえ、初めて女性ヒーローの名前がタイトルに盛り込まれました。映画も”アントマンをサポートするワスプ”ではなく”ワスプをサポートするアントマン”という感じでワスプの活躍が目立つのです。
アメコミ・ヒーロー=白人の男性が主だったわけですが、
*黒人ヒーロー視点
*悪のヒーロー視点
*女性ヒーロー視点
がMCUに加わったわけです。
この先、非白人系のヒーロー映画やヴィランを主役にした映画、女性超人だけで構成されたアベンジャーズみたいな作品に広がっていく可能性があります。
もともとアメコミは”この世界(ユニバース)には、いろいろな奴がいてもいいんだ”という多様性(ダイバーシティ)を尊重していてますから、映画の方もその流れを、より意識し始めたのかもしれません。
と理屈っぽく書きましたが、3作ともアクションの見せ場が素晴らしいエンタテインメントでもあります。『ブラックパンサー』では韓国の釜山、『アントマン&ワスプ』にはアメリカ西海岸のサンフランシスコを使ったカーチェイスのシーンがあります。
ともに”坂道”を使ったカーアクションですが、どちらもヒーローの特性にあわせ工夫を凝らしており、全く違う見せ場になっています。こういうアイデアの幅がMCUのすばらしさ。両作品をぜひ見比べてみてください。
(文/杉山すぴ豊)
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