「死ぬまでにこれは観ろ!2018」 映画人が厳選した3本をレビュー【第一弾】

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死ぬまでにこれは観ろ!! by 松崎健夫 [映画評論家]

映画好きにベスト作品を聞くと、世代を問わずその人が10代に観た映画を人生のベストに挙げるという傾向がある。比較対象が限られる時分の“これまでに観たことがないもの”に対する驚きは、その後の作品評価基準となる所以でもある。それゆえ「リアルタイムで観た者が持つ作品への偏愛は他人に伝わらない」という残念な“普遍性”を持ち合わせている。

例えば(1)は、ウィリアム・フリードキン監督が「フレンチ・コネクション」(71)の逆走カーチェイスを自身の手で更新しようとした挑戦を知らなければ陳腐に見えるし、(2)は「ゴッドファーザー」(72)以降、粗製濫造されたマフィア物の新たな鉱脈としてのチャイニーズ・マフィアという経緯を知らなければ、ジョン・ローンの偉大さはわからないかもしれない。そして、(3)のレクター博士は、当然「羊たちの沈黙」(91)以前であると認識しなければ、ブライアン・コックスの演技アプローチには疑念を抱いてしまうだろう。

観るべき過去の映画は、映画史の上でどの位置にあるかを知ることで多少はミカタが変わるもの。同時に、3作品が持つ「悪役の方がカッコいい」という時代を経ても変わらない“普遍性”は、映画に不変の輝きをもたらすのである。

死ぬまでにこれは観ろ!! by 渡辺祥子 [映画評論家]

われながら良き選択(?)と思う3本だ。観てわくわく、しゃべったらとまらない3本。長らくの映画ファンでもこんな面白い映画に出会う機会はめったにないはず。

仏頂面が売りの喜劇役者ウォルター・マッソーと組んだ「突破口!」のドン・シーゲルは、マフィアの隠し金と知らずに田舎銀行から予想外の大金を盗んだ小悪党の生き延びる術をこれでもか、と見せて胸のすく結末へと導く。

アポロ11号の月面着陸はウソ、という説は根強くあるが、ピーター・ハイアムズの「カプリコン・1」には一瞬そうかも、と思わせる説得力がある。人類初の火星着陸をTVで中継、と見せてじつはインチキだった、という事実を隠したいNASAは宇宙飛行士の抹殺を図るが、事前に察知した飛行士たちは逃亡、追跡の手が伸びる。低予算でセットもちゃちだが、そこがインチキ臭さをあおって、妙にリアル。

残る1本はマイケル・ケイン、ドナルド・サザーランド主演の渋い大作。第二次大戦末期、チャーチル暗殺を目論むドイツ兵士が英国兵に化けて英国の田舎町に進駐、彼らが善人だったために予想外の結末に至る、というのがジョン・スタージェスの「鷲は舞いおりた」。ナチス・ドイツが悪役ではない映画は珍しい。

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