知名度の低い中小企業から、大手企業に転職したい。実現可能性は?【シゴト悩み相談室】
キャリアの構築過程においては体力的にもメンタル的にもタフな場面が多く、悩みや不安を一人で抱えてしまう人も多いようです。そんな若手ビジネスパーソンのお悩みを、人事歴20年、心理学にも明るい曽和利光さんが、温かくも厳しく受け止めます!
曽和利光さん
株式会社人材研究所・代表取締役社長。1995年、京都大学教育学部教育心理学科卒業後、リクルートで人事コンサルタント、採用グループのゼネラルマネージャー等を経験。その後、ライフネット生命、オープンハウスで人事部門責任者を務める。2011年に人事・採用コンサルティングや教育研修などを手掛ける人材研究所を設立。『「ネットワーク採用」とは何か』(労務行政)、『悪人の作った会社はなぜ伸びるのか? 人事のプロによる逆説のマネジメント』(星海社新書)など著書多数。
CASE24:「勤務先は中小企業。知名度の高い大手企業で働いてみたい!」(23歳男性・専門商社勤務)
<相談内容>
就活に失敗し、現在は小さな専門商社で働いている社会人2年目です。
就活時に志望していた企業はすべて大手。知名度がある会社で誇りと安心感を持って働きたいと思っていたのですが、今の会社は知名度が低く、決して安定性があるとは言えません。
大学時代の同期はみんな大手企業に就職していて、正直劣等感を覚えています。変な話ですが、合コンで名刺を出すと明らかに女の子の反応が悪くて…そのたびに落ち込みます。いつか大手に転職したいと考えていますが、中小からだと難しいのでしょうか?(営業職)
中小→大手は十分可能。専門性を磨くか、大量採用の大手を狙おう
人手不足の今のご時世、「中小企業からだと大手企業には行けない」なんてことはまずありません。
ただ、多くの大手企業は、中途採用においては高い専門性を求めています。例えば、新規事業を始める際に、その分野に詳しい知識を持った人を採用する…といった動きです。
一例ですが、数年前に大手出版社が相次いで電子書籍に進出した際、電子出版系の中小企業出身者が多数採用されました。このように、大手が「そのとき求めている専門性」を持っていれば、新卒時には高根の花だった大企業に転職できる可能性もあります。
しかし相談者はまだ23歳で、社会人経験は1年とちょっと。大手企業に求められるほどの専門性を身につけるのはこれからと推察されます。
そこでお勧めしたいのは、行ってみたいと思う大手企業の中途採用ホームページを見て「求める条件」をチェックし、それに関するスキルを磨くこと。数年はかかるでしょうが、求められる専門性を身につけることができれば、いつかタイミングが訪れるかもしれません。
「今すぐ大手企業に転職したい!」のであれば、大量採用を行っている大手企業を狙うという手があります。特に営業職であれば、不動産や保険、製薬会社のMR(医薬情報担当者)など、「新卒採用も行っているけれど中途採用がメイン」という大手企業は意外にあります。
ただ、これらの企業は間口が広い分、入社後の競争が激しく、脱落者も多いという側面があります。実力主義の厳しい環境で、勝ち続けることが求められますが、そのような環境でも頑張り抜くと覚悟を決められるならば、1つの選択肢として注目してもいいでしょう。
これは半分冗談ですが、本気で「合コンで女性の目を引きたい」ならば、外資系企業を狙うという方法もあります。
外資というと、コンサルティングや金融というイメージが強いですが、メーカーなどのBtoB企業も数多く進出してきています。特に、これから日本市場に本格的に入り込みたいと考えている外資は転職チャンス。若手ならではのポテンシャルをアピールし、滑り込みましょう。日本支社は小規模でも、本国では大企業です。それに、外資信仰のある女性ならば、名刺を見て「わーすごい!」と注目してくれるかもしれませんよ。
「中小ならではのメリット」を活かす方法を考えてみては?
ただ、中小企業には中小の良さがあります。知名度という理由だけで無理に大手企業に転職するのは、個人的にはあまりお勧めしたくありません。
中小企業は人材の数が少ないので、若くして裁量権を与えられ、責任ある役職に抜擢される可能性が大です。また、基本的に分業制の大手企業とは違い、1人当たりの守備範囲が広いため、全体感を把握しながら一気通貫で仕事ができるのも特徴です。
例えば人事であれば、大手企業ならば採用担当、教育担当、労務担当などと担当が細かくわかれていますが、中小企業ならば一人が採用も教育も労務も行いますし、それどころか総務や広報まで担当しているケースだってたくさんあります。広い視野を持ち、さまざまな知識を身につけられるのは、中小企業ならではのメリットと言えるでしょう。
これらのメリットを最大限に活かすべく、目の前の仕事にバリバリ取り組んで早くから頭角を現し、若くして出世を狙う…というのはいかがでしょう。20代でマネージャーの肩書きがつけば、“大手のヒラ”よりも一目置かれるのでは?合コンでも、「え~、まだ若いのにマネージャーなの?すごーい!」などと好反応が得られるのではないでしょうか。
大手企業は従業員数が多いため、ポスト争いが熾烈。順調にステップを踏んだとしても、私が見聞きした限りでは、30代半ばで係長、45歳前後で課長がせいぜいでしょう(もちろん企業によりますが)。中小企業という環境を活かして、頑張ってポストを狙いにいくほうが賢い、と私は思います。
若くしてマネージャーになっておけば、転職可能性もぐんと広がる
なお、マネージャーになれば、「その後の可能性」もぐんと広がります。
転職マーケットにおいては、「マネジメント経験者のマーケット」と「未経験者のマーケット」が明確に分かれています。若くしてマネジメントを経験すれば、それだけ早いうちから「マネジメント経験者のマーケット」に入ることができます。
マネジメント経験者のマーケットにおいては、30前後の若手は珍しく、企業の注目を集めるはず。大手企業にマネージャー候補として転職できる可能性だって十分にあります。
特にITやネット系企業など、若手社員が多い企業では、マネージャーも社員と近しい世代のほうが歓迎されます。さらに言えば、開発系企業など「専門性の高い職人集団」の色合いが濃い企業は、どこも「プレイヤーは多いけれどマネジメント人材がいない」という課題を抱えています。現場を取りまとめてくれる若手マネージャーは、きっと重宝されるでしょう。
無理に今すぐ大手企業を目指すよりも、今いる環境で努力し、上を目指したほうがスキル的にもキャリア的にも◎。社名に頼るのではなく、自分の武器で戦えるようになれば、会社の知名度がなくたって合コンで注目されるようになるはずですよ。
<アドバイスまとめ>
合コンなんていかずに
今は目の前の仕事に打ち込むべし。
実力をつけ、若くして昇進を狙ったほうが
結果的にモテる!
EDIT&WRITING:伊藤理子 PHOTO:平山諭
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