『キッズ・シー・ゴースツ』 カニエ・ウェスト&キッド・カディ(Album Review)


2018年6月1日に、およそ2年振りとなる新作『Ye』をリリースしたばかりのカニエ・ウェストが、予告していた通り、1週間後の8日にキッド・カディとのコラボ・アルバム『Kids See Ghosts(キッズ・シー・ゴースツ)』をリリースした。このタイトルは、カニエとキッド・カディの“ユニット名”でもあるとのこと。
両者は昨年夏に来日し、現代美術家・映画監督=村上隆のスタジオを訪れたそうだが、それが本作のジャケット・デザインを依頼するためだったことが、発売直前に明かされた。 村上氏は、2007年にリリースしたカニエの3rdアルバム『Graduation』のカバー・アートも担当しているが、ポップなあの作品とはまた違う、日本画をモチーフにした「和テイスト」のすばらしいデザインに仕上がっている。
アートだけでもアルバムへの期待が高まる本作。『Ye』と同じ米ワイオミング州のジャクソンホールで制作され、プロモーションも同様に、リスニング・パーティーを開き、その様子をストリーミングアプリ<WAV>で公開した。
プシャ・T をフィーチャーした「Feel the Love」は、カニエとキッド・カディ、そしてマイク・ディーンによる共作。プロデュースは彼らに加え、キッド・カディの大ヒット曲「Day ‘n’ Nite」(2008年)他、ジェネイ・アイコやトラヴィス・スコットなどを手掛けるドット・ダ・ジーニアスが担当している。「ダ・ダ・ダ……」と銃を連射するような音をボーカルで表現した、キッド・カディのパートは圧巻の迫力。
2曲目の「Fire」は、カニエとキッド・カディが制作し、アウトキャストのアンドレ3000がプロデュースしたナンバー。1966年に米ビルボード・ソング・チャート“Hot 100”3位をマークした、ナポレオン・ザイブの「They’re Coming to Take Me Away」がサンプリングされていて、レトロな雰囲気がアンドレらしい。ジャズ・ミュージシャンの故ルイ・プリマによる「What Will Santa Claus Say」からはじまる「4th Dimension」も、懐古的な感じがいい。カニエとマイク・ディーンの共作だけに、本作の中でも最も“カニエっぽい”一曲。
カニエの他、リアーナやエド・シーランなど人気ミュージシャンを幅広く手掛けるジェフ・バスカーと、タイ・ダラー・サインも制作に参加した「Freeee (Ghost Town, Pt. 2)」は、サイケデリック的要素含む、ヒップホップの枠を飛び越えたナンバー。それもそのはず、この曲にはUKのファンク・クリエイターのMr. Chopによる「Stark」が、まんま使用されている。同様に、ニルヴァーナのボーカリスト、故カート・コバーンの「Burn The Rain」をサンプリングした「Cudi Montage」も、ジャンルをクロスオーバーした傑作。
カニエの5thアルバム『マイ・ビューティフル・ダーク・ツイステッド・ファンタジー』 (2011年) ~6thア『イーザス』(2013年)にも参加したアンドリュー・ドーソンと、「Famous」(2016年)を手掛けたプレイン・パットによるプロデュース曲「Kids See Ghosts」では、コーラスをモス・デフが担当。サンプリング・ソースやゲストのクレジットはないが、5曲目の「Reborn」もラップとボーカルがバランス良く配置された良い曲。 全7曲、トータル「23:53」という短さも、この充実度なら納得できる。
カニエは、プロデュース作品含む計5枚のアルバムを、5週連続でリリースすると公言していて、本作の前には、アートワークも大きな話題となったプシャ・Tの『Daytona』(5月25日)、自身の8thアルバム『Ye』(6月1日)が発売されている。今後は、6月15日にナズ、6月23日にはカニエ率いる<G.O.O.D. Music>所属のティヤーナ・テイラーの新作がリリースされる。
Text:本家一成
◎リリース情報
『キッズ・シー・ゴースツ』
カニエ・ウェスト&キッド・カディ
2018/6/8 RELEASE
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