労務管理における「タバコ休憩」はどう考えるべき?解決策は
受動喫煙被害防止のため勤務中の喫煙を禁止する自治体
東京都青梅市は、4月16日から「職員の受動喫煙による健康被害の防止等を図るため」、職員の勤務中の喫煙を禁止すると発表しました。このほか、東京都庁でも、休憩時間を含む庁舎内の禁煙を実施するなど、愛煙家の皆さんには、厳しい時代になってきました。
2020年の東京オリンピック開催に向け、今後も喫煙に対する様々な規制が強化されていくのは確実だと思われますが、本稿では、いわゆる勤務中の「タバコ休憩」について、労務管理上の問題点と、その解決策について考えてみたいと思います。
「タバコ休憩」の勝手な離席で組織の生産性が低下する
「タバコ休憩」の問題点としてまず挙げられるのは、生産性の低下です。スムーズな業務遂行のためには、仕事の優先順位付けと合理的な時間配分が欠かせません。
しかし、タバコ休憩のための(定められた休憩時間以外の)勝手な離席は、この流れを中断させてしまうだけでなく、周囲の人間に余分な負担(離席中の電話対応などのフォローなど)を強いることになり、結果として職場全体の生産性を低下させてしまいます。冒頭でご紹介した青梅市の決定も、実はこの点を重視した側面があるようです。
タバコ休憩は職務専念義務違反する可能性もある
また、「職務専念義務違反」にあたるのではないか、という疑念も生じます。労働者には、就業時間中は職務に専念し、使用者の許可なくそれ以外のことをしてはならない義務があります。これを「職務専念義務」と言い、公務員においては法律で定められたものであり、民間企業の社員についても(法的な定めはありませんが)労働契約に付随する義務として、当然に守るべきものとされています。
したがって、1日に何度も「タバコ休憩だ」といって勝手に離席している社員は、この「職務専念義務違反」に問われ、何らかの処分の対象になる可能性も、ゼロではないのです。
非喫煙者が感じる「不公平感」はモチベーション低下にもつながる
タバコを吸わない社員が感じる「不公平感」も、問題をより複雑にしています。非喫煙者の「私たちが働いている間に、勝手に休憩するのはズルい。しかも、その間のお給料まで支給されるのは不公平だ!」という不満が、イライラやモチベーションの低下を引き起こし、最悪の場合、人間関係の悪化を招きかねません。
喫煙者からはトイレ休憩やコンビニ立ち寄りと同じでは?という不満もある
一方、喫煙者にも言い分があります。「仕事中に、コンビニやトイレに何度も行く人だっている」「差別だ」「人権侵害だ」「何で喫煙者ばかりがいじめられるのだ」等々…。
タバコ休憩を禁止することが、差別や人権侵害にあたるのかどうかは議論のあるところですが、いずれにしても、喫煙者のこのような不満を放置しておくのも、また良いことではありません。
喫煙者と非喫煙者の細かい待遇差を個別につけるのは実現が難しそう
では、どうしたらこれらの問題を解決することができるのでしょうか。考えられる施策としては、タバコ休憩を取った時間分の給与を支払わない、タバコ休憩を取らない社員だけに有給休暇を余分に与える、などがあります。(実際に、「スモ休」という名前で、こうした有給休暇を付与している会社もあります。)
しかし、これらの措置は、時間管理や給与計算が煩雑になったり、法定付与の有給休暇すら取れていない場合、追加で有休をもらっても結局無駄になってしまうなど、あまり現実的ではないでしょう。
全社的な待遇面での規定を設けることで不満の解消につながる
そこで、「昼休みのほかに、午前と午後に10分~15分ずつ全社員に休憩時間を与える」、「会社が定めた休憩以外に勝手にタバコ休憩を取った社員については、評価(査定)を厳しくする」、といったことのほうが管理もしやすいですし、何より、不公平感の解消に繋がるのではないでしょうか。
喫煙者、非喫煙者が共に「自分たちばかりが責められる」「自分たちばかり損している」といった不満を持たずにすむように、双方の意見を聞きながら、会社としてのきちんとしたルールを作っておきましょう。
(五井 淳子/社会保険労務士)
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