欲しい車を探すとなぜかいつもたどり着く。そんなお店にスチャダラパーBoseが潜入

▲ルノーサンクもBoseさんがカーセンサーでよくチェックする車種のひとつ。「するとやっぱりこのお店の名前が出てくるんだ」

正体はネオクラシックな欧州コンパクトを得意とするお店だった!

1990年のデビュー以来、日本のヒップホップシーン最前線でフレッシュな名曲を作り続けているスチャダラパー。中古車マニアでもあるMC、Boseが『カーセンサーnet』を見て触手が動いたDEEPでUNDERGROUNDな中古車を実際にお店まで見に行く不定期連載! 今回は1990年代~2000年代のちょっとマニアックなヨーロッパ車をチェック!!

「カーセンサーで好きな車を検索するとさ、なぜか頻繁に同じお店が表示されることってない? 今回お邪魔するエーゼット オート横浜はまさにそんなお店のひとつ。いつカーセンサーを見ても、どんな車を検索してもヒョコッと出てくるんだ」

Boseさんがカーセンサーnetでよく見ているのは1990年代の欧州コンパクト。エーゼット オートはその筋では有名な、1980年代~2000年代のマニアックな欧州車を得意とするショップだ。Boseさんの検索にひっかかってくるのもうなずける。

「別に僕はマニアックなモデルを探しているつもりはないんだけどね。でもあまりにもよくヒットするからエーゼット オートの在庫をのぞいてみると……『この車、あったねえ。懐かしい!』というのがたくさん置いてある。だから一度お店に行ってみたいと思っていたんだよね」

▲お店には気になる車がたくさん! ついつい運転席に座ってみたくなる

そして取材当日。出迎えてくれた岩原社長にいろいろと質問するBoseさん。社長は1995年にエーゼット オートをオープンさせる前まで、アルファロメオやプジョーのディーラーで働いていた。

その頃からの付き合いもあり、ディーラーが認定中古車としては出せない年式の車を下取りすると、社長に「おもしろい車が入庫したよ」と連絡が入るのだ。そして社長はそれらをついつい仕入れてしまい、気づけばお店に90年代~00年代の車がたくさん並ぶようになったのだという。

ちなみに社長が好きな車は、本国で年配の方が普通に乗っている車。「向こうの人はうるさいからね。ベースモデルがしっかりしていないとすぐ文句を言う。だから向こうのメーカーは小さくてもしっかりした車を作っているんだ」と話す。

「うわ~。僕も社長の趣味とまったく一緒。パワーウインドウやフルオートエアコンなどの快適装備が一切ない素のマニュアルグレードが一番いいんだよね。でも日本車が小さくてもいろんな装備が付いているから、それに対抗するために向こうの上級グレードしか入ってこないんだよ。色も日本人好みの無難な色が中心。本国にはかわいい色がたくさんあるのにね」

車の趣味が合い話が盛り上がる2人。「店頭だけでなくヤードの方にもいろいろあるから見ておいで」という社長のお言葉に甘え、エーゼット オートでBoseさん好みの懐かしいモデルを探すことに。

シトロエン AX

▲1990年代に日本にも導入されたシトロエンAX

「AX、あったねえ。ちょっと前に目黒通りを車で走ってたら偶然AXを見かけて思わず話しかけちゃったよ。『調子どうすか?』って。そうしたらオーナーは『案外イケますよ』だって。そう。これくらいの年式でもシンプルだから案外イケちゃうんだよね。僕がエーゼット オートの在庫を見たときはGTIとTRS、2台のAXがあったはずなんだけど、今は在庫が1台だけ。つまり僕以外にもこういう車を探している人がいるってこと。ピンポイントで刺さっているんだよね」

シトロエン BXブレーク

▲1980年代~90年代に製造されたコンパクトなステーションワゴン

「BXもずっと気になっている車。マルチェロ・ガンディーニが手掛けた直線的なデザインが最高にカッコいい! 僕は仕事で年間3万kmくらい走るからこの時代のシトロエンのハイドロに乗るのは勇気がいるけれど、いつか乗ってみたい車のひとつだね」

シトロエン サクソ

▲プジョー106と兄弟関係にあるサクソ。日本には1997年にシャンソンという名前で導入され、1999年に本国と同じサクソと名称変更された

「このサクソは16V VTS。こういう小さな車をマニュアルで走らせるのは一度味わうとやめられない。もともと日本でそんなに売れたわけではないから、中古車もほとんどない。カーセンサーを見ても数台あるかないかってところだよね。でもコンパクトなMT車っていうのは好きな人が必ずいるから、なくなることはないと思うな」

ルノー トゥインゴ

▲1995年に日本に導入された初代トゥインゴ。最も小さいAセグメントのハッチバックだが、実用性は極めて高い!

「うわっ、トゥインゴだ。懐かしいな。当時はあまり意識しなかったけれど、これは今考えると名車だよ。ホンダ トゥデイに似ていることもあって軽自動車と間違えるくらい小さいのに、室内が驚くほど広いんだよね。後席を跳ね上げると、でっかいテレビも積めるんじゃないかな。お店にあったのは2ペダルMTだったけど、3ペダルのMTだったら、あわや買いかけるくらい好きだな」

プジョー 306

▲1994年に日本導入された306。ゴルフと同じCセグメントに属するハッチバック

「306はデザインがいいよね。インテリアもハーフレザーのシートが上品。日本でも結構売れたんじゃないかな。これはS16というホットハッチ。めちゃめちゃ速いんだよ。306はカブリオレも人気があったよね」

フィアット ムルティプラ

▲2003年に日本に導入された、前3人、後ろ3人の6人乗りモデル

「ムルティプラは変わった輸入車を扱っているお店に必ず置いてある(笑)。あらためて見ると変な顔だよ。デザイナーが『他となるべく違うようにしたい』と考えて作った最たる車じゃないかな。顔が変と言ったけれど、そもそもどこが顔なのかわからない。これがミラーに映ったら何が来たんだって思うでしょう。実は僕も子共が生まれたときに乗り替える候補のひとつに入っていたんだ。後期型は普通の顔になっちゃったからおもしろくない。乗るなら絶対にこっちでしょう」

契約後、整備に半年かかる??

ひと通り車を見て、Boseさんは納得する。

「なんでカーセンサーで検索するといつもこのお店が出てくるのかわかったよ。僕はたいていMT車を探しているんだけど、このお店はMT比率がやたら高いんだ。在庫の半分以上がMTなんじゃないかな」

お店の入り口には朽ち果てたという表現がピッタリのフィアット ウーノがポツンと置かれている。もともと前オーナーが大切に乗っていたが、エンジンにトラブルが発生。

オーナーはなんとか直そうと数ヵ月工場に預けていたものの諦めて手放すことに。縁あってこの車を引き取った岩原社長はいつか直そうと手放さずに持っているという。

▲この時代の車の楽しさについて岩原社長と話す。後ろにある赤い車が朽ち果てた(?)ウーノ

「100万円くらいあればキレイに仕上げられると思う。でも部品を探すのに時間がかかるかな。半年くらい待ってもらえば直せるんじゃないかって社長は言うけれど……。すごい車の買い方だよね。何千台も流通している同じ車種から1台選んで、2週間で納車っていうのとはまったく違う感覚。でも乗りたかった車が少しずつ直っていくのを楽しみに待つというのもおもしろいかも」

今回Boseさんがエーゼット オートに訪れたのには理由がある。カーセンサーでこのお店に20代から憧れ続けている車を発見したのだ。

次回はその車の試乗レポートをお届けしよう!

text/高橋 満(BRIDGEMAN)

photo/篠原晃一

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