『Die Lit』プレイボーイ・カルティ(Album Review)

『Die Lit』プレイボーイ・カルティ(Album Review)

 プレイボーイ・カルティは、米アトランタ出身の21歳。貧しい家庭で育った彼は、アルバイトをして金を稼いでは機材を購入し、曲を制作していたという。若干15歳だった2012年に、“サー・カーター”という名前でミックステープ『Young Misfit』をリリース。2015年には、米テキサス州で開催されるイベント<サウス・バイ・サウスウエスト>でパフォーマンスし、エイサップ・ロッキーに見出されると、翌2016年にはエイサップ・モブに所属。2017年に“プレイボーイ・カルティ”名義としてリリースした『Playboi Carti』が、米ビルボード・アルバム・チャート(Billboard 200)12位、R&B/ヒップホップ・チャート7位、ラップ・チャート6位の大ヒットとなり、本作からカットされたシングル「Magnolia」も、200万ユニットのダブル・プラチナに認定された。

 本作『Die Lit』(ダイ・リット)は、その『Playboi Carti』から1年振りとなる新作で、スタジオ・アルバムとしては初のリリース、つまり実質上のデビュー・アルバムとなる。プロデュースは、前述の「Magnolia」を手掛けたピエール・ボーンや、米フィラデルフィア出身のDJ・音楽プロデューサー=ドン・キャノンなどが担当。ゲストには、先行シングル「Love Hurts」にフィーチャーされたトラヴィス・スコットはじめ、ヤング・サグやリル・ウージー・ヴァート、ニッキー・ミナージュ、ブライソン・ティラー、チーフ・キーフなど、目覚ましい活躍をみせるアーティスト等が参加しているが、エイサップ・ロッキーはじめ、エイサップ・モブ所属のアーティストはクレジットされていない。

 宙を舞うように波打つシンセ、鼓動のようなビート、頭の中をループする中毒性の高いフック。ピエール・ボーンらしいトラップ~クラウド・ラップが淡々と続くワケだが、60分近いアルバムはあっという間に終わってしまい、不思議とまたリプレイしたくなる。無機質で冷たい音色のシンセ・サウンドではあるが、腹の底まで響いてくる重さや暗さ、みたいなものは無い。2017年【ブリット・アワード】やイギリスの音楽誌『NME』が主催する【NME Awards】にノミネートされた、英ロンドンのラッパー=スケプタ参加の「Lean 4 Real」や、Gunna(ガナ)をフィーチャーしたスペイシーな雰囲気のエレクトロ「No Time」、ジャジーなビートに纏いつく「FlatBed Freestyle」など、浮遊感漂うメロウで心地よいナンバーが、ところどころに配置されているからだろう。

 高速ラップも披露した遊びゴコロ満載の「Poke It Out」、2000年代中期のサウスっぽい「Pull Up」、ドレイクをそっくり真似た歌モノ「Shoota」、フロアライクなバウンスビートの「Choppa Won’t Miss」、ピエール・ボーンがフィーチャリング・アーティストとして参加した、アジアっぽいテイストの「Top」などバラエティにも富んでいて、カナダのシンセ・ポップデュオ=ピュリティ・リングの「Grandloves」(2012年)を使った「Fell in Luv」や、ジョデシィの「ホワット・アバウト・アス」をサンプリングした90年代風の「R.I.P.」、ティー・ラ・ロック&ジャジー・ジェイの大ネタ「It’s Yours」(1984年)をイメージした「Mileage」といったネタものもあり、充分に楽しみ甲斐もある。実験的・革新的要素は、新世代にもベテラン勢にも衝撃を与えたのでは?

Text: 本家 一成

◎リリース情報
『Die Lit』
プレイボーイ・カルティ
2018/5/11 RELEASE

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