取引先にも本音をぶつけられる「●●の魅力」とは? | マチーデフさん(ラップ講師)

取引先にも本音をぶつけられる「●●の魅力」とは? | マチーデフさん(ラップ講師) 『フリースタイルダンジョン(テレビ朝日)』のヒットを皮切りに、巻き起こったラップブーム。日本の音楽シーンのスタイルのひとつとして定着し、中高生だけでなくビジネスパーソン同士が白熱のラップバトルを繰り広げる『社会人ラップ選手権』が開催され、話題を呼びました。

今回お話をうかがったのは『社会人ラップ選手権』ではレフェリーを務め、自身もラップクリエイターとして活動するマチーデフさん。ビジネスとラップの意外な相性や効能をもとに、初心者でも始められるラップのコツを伺いました。 マチーデフさん プロフィール

ラッパー、作詞家、ラップ講師。渋谷区生まれ、渋谷区育ち。メガネのやつはだいたい友達。1997年にラッパーとしての活動をはじめ、東京アナウンス学院・尚美ミュージックカレッジ非常勤ラップ講師としても活動。アイドルのラップ指導や、CM・テレビ番組等のラップ監修、作詞もおこなう。

http://www.macheedef.com/

twitter: @macheedef

ブームが後押しした、ラップクリエイターへの道

——まずは、ラッパーとしての活動にいたった経緯を教えていただけますか?

中学生の頃、カラオケで当時大流行していたもののサビしか知らなかったEAST END×YURIの『DA.YO.NE』をなんとなくノリで入れて、サビ以外の部分を自分なりに適当に歌ってみたら思いのほか歌えて、なにより歌っていてとても気持ち良かったんです。その後、高校に入ってから友達とグループを組んでラップを始めました。

当時RHYMESTERやキングギドラなど既に有名なラッパーはいましたが、いわゆるオリコンチャートに入るようなラッパーはほぼゼロで、「ラップを仕事にする」というイメージができなかったため、ラップと同じくらい好きだったお笑いの道に進みました。ラップは趣味として楽しむ程度にとどめておき、25歳くらいまでお笑い芸人として活動したのですが、伸び悩んでしまい……。その頃ラップのほうでCDデビューのお話をいただき、そのタイミングで芸人をやめ、今度はラッパーとしての活動をはじめました。しかしCDを出したとはいえ順風満帆には行かず、20代前半はお笑いで、後半はラッパーとして全然芽が出ない10年間でした。

——マチーデフさんの「ラップ講師」という肩書きがおもしろいなと思ったのですが、これはどのようなきっかけで始めたのですか?

ラップについて自分なりの分析や考察をブログに書いていたのですが、アクセス解析をしてみると「ラップ コツ」とか「ラップ 歌い方」みたいな検索ワードでブログに辿り着いてる人が多いことが分かりました。もしかして「ラップの先生」って需要あるのかな?と思い、母校である東京アナウンス学院へラップ講座の開講を提案したら、授業を持たせてもらえることになりました。それが2011年、30歳の頃です。

最近は色々な場所でラップを教える人も増えてきましたが、当時はまだ誰もそういう事をやっていなかったと思います。そのおかげか、アイドルのラップ指導やラップCMの監修といったお仕事もちょっとづついただけるようになっていきました。そこへあの『フリースタイルダンジョン』が始まってラップブームが到来。これを機にラッパーやラップ講師としての仕事がさらに増えていき、ラップで生計を立てられるようになりました。番組のメインMCでオーガナイザーのZEEBRAさんには足を向けて眠れませんね(笑)

取引先にも本音をぶつけられる、ラップの魅力

——マチーデフさんは『社会人ラップ選手権』でレフェリーを務められましたね。社会人によるラップの魅力には、どんなものがありますか?

『社会人ラップ選手権』の参加者の多くは、自分の仕事にプライドを持ちながら趣味でラップを嗜んでいる方々。「ラッパーとして成功したい」という社会人の方はあまりいません。それゆえ、ラップの歌唱スキル自体は拙い方も多いのですが、ラッパーからは出てこないような社会人ならではのワードがバンバン飛び出すので、そういった点が観ていて新鮮で面白いです。

参加者の職種・業種・ラップ歴はさまざまですが、いざビートがかかって自分のターンになったら、とにかく何か言わないといけません。面白いもので、人って追い詰められて考える時間がなくなると、思いがけない本音が飛び出すんですよね。ラップバトルって、ラップは拙くても核心をついた言葉を発せた瞬間のほうが盛り上がったりするんです。

ときには実際の取引先がバトルの相手になることもあるのですが、ラップで本音をぶつけ合うことで「普段の仕事では分からなかったけれど、相手はこんな思いで仕事してるんだ」と理解できます。バトル終了後に相手から「部屋を紹介してもらえませんか?」と相談を受けた不動産会社の社長さんとかもいます。非常に幅広い職種の方が集まりますし、しかもすぐに相手の本音や仕事への想いが聞けるので、普通の異種職業交流会よりよっぽど価値のある交流ができるのではないかと思います。

——バトル以外で、ラップ講座への参加者の様子はどうでしょうか?ラップが持つ効果を感じることはありますか?

ラップ講座で印象に残っている生徒さんがいます。引っ込み思案なのか口数が少なく「大丈夫かな」と見守っていて、あるとき「全員で輪になって即興ラップ(サイファー)をしよう」という授業を行いました。そこでも、その生徒さんは最初ボソボソと喋っているだけだったのですが、だんだん盛り上がっていくうちに「実はわたしはバイセクシュアルだ」とカミングアウトしたんです。

その瞬間ワッと盛り上がって、他の子も「じゃあお前は男も女も好きなのかい?」ってラップで突っ込んでいって、生徒さん自身も「やっと言えた!」ってスッキリとした表情をしていました。もしかして言葉数が少なかったのも、こうした胸にしまいこんでいた本音があったせいだったのかな……と。もしこれが普通にテーブルに座って「初めまして」っていうコミュニケーションじゃカミングアウトできなかっただろうし、もしカミングアウトしたとしても周囲は「どんな風にリアクションすればいいんだろう」って空気になってしまいますよね。

即興ラップはビートに乗せて言葉を言わなきゃっていう意識が働くからこそ、ある意味、脳が誤作動を起こして、隠してた本音を言える、というか、つい言ってしまう。しかもその本音はお笑いのリズムネタみたいにユーモラスなニュアンスで相手に伝わるため、周囲も盛り上がりつつ受け入れてくれる。こうしたコミュニケーションの形は、ラップの魅力だと思います。

ひとりカラオケでできる、初心者におすすめのラップ練習法!

——そこでぜひ、初心者の方に向けたラップの練習法を教えていただきたいのですが。

ラップってかなりイメージの格差があるジャンルだと思うんですよね。まったく知らない人からすると「Yo,Yo,って言ってるだけでしょ?」みたいな(笑)いろんな意見がありますが、個人的にはラップはビートに乗ってさえいれば音程を意識する必要はないので、歌よりもとっつきやすい歌唱法だと思っています。

ラップ初心者へのおすすめの練習法は、ひとりカラオケですね。曲はラップなら何でもOKで、知らない曲をあえて入れてもいいです。画面に流れる歌詞を自分なりにビートに乗せてラップしてみましょう。画面上の歌詞は本来のテンポに沿って文字の色が変わっていきますが、それは気にしないことです。だんだん慣れてくると、「ビートに乗せて自由に言葉をしゃべる」という感覚が身に付いてくると思います。

まずはビートと友達になるんです。そして「他の人とラップがしてみたい」と思うようになったら、「サイファー」と呼ばれるラッパーの集まりに行ってみましょう。サイファーはツイッターなどを通じて、路上や公園などに自然と人が集まってできるものなので、気軽に足を運べます。最近のラップブームで「サイファー」はすごく増えているので、「(駅名や地名) サイファー」で検索すると最寄りのサイファーが見つかるかもしれません。

場所ごとに特徴があって、会社勤めのビジネスパーソンが多く集まる場所は「新橋サイファー」ですかね。「サイファー」に行ってラップをするのは勇気がいるかもしれませんが、先ほどお話した『社会人ラップ選手権』のようにさまざまな職種の方が集まって、誰でも暖かく受け入れてくれると思いますよ。

そしてもっとラップの腕を磨きたい!と思ったら、ぜひ私の講座に遊びに来てください!(笑)

取材・文:伊藤七ゑ 撮影:向山裕太

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