どうしても、仕事を人に“任せられない”。それでも「人に任せる」を諦めてはいけない。

どうしても、仕事を人に“任せられない”。それでも「人に任せる」を諦めてはいけない。

『「残業しないチーム」と「残業だらけチーム」の習慣』(明日香出版社)の著者である石川和男さん。石川さんは、建設会社総務部長・大学講師・専門学校講師・セミナー講師・税理士と、5つの仕事を掛け持ちするスーパービジネスパーソンです。そんな石川さんに「残業しないチームと残業だらけチームの特徴」についてお聞きしました。

「人に任せる」ということ

「あなたはA社の受付にとある書類を持っていくように上司から頼まれました。自分の会社からA社までは歩いて1時間かかります。書類は受付に渡せばいいだけとのことです。あなたならどんな方法でA社に書類を届けますか?」

多くの方が「郵送する」「バイク便で届ける」など、人に任せる方法を思い浮かべたのではないでしょうか?中には「もしかすると、書類を届けに行くときに、A社の方に顔を売れということか…」と上司の意図(?)をくみ取って自分で届けに行くという選択をした方もいるかもしれません。「至急届けてほしいから自分で行け!」ということを上司は伝えたかったのかもしれません…。いずれにしても、まずは上司に意図を確認をしておくことが必要となるでしょう。

実際に確認したところ「いや、ただ書類を届けてもらえばいい。至急ではないよ」とのこと。このような状況であれば、いよいよ「人に任せる」という選択肢を選ぶ人が多くなるのではないでしょうか?

ではなぜ「人に任せる」という選択をするのか?それは「その方が効率的である」と考えているからでしょう。自分で片道1時間、タクシーを使ったとしても数十分かけてA社まで行かずとも、届けてもらえればその時間は別の仕事ができるわけです。

しかし、実際の仕事に目をやると、いかがでしょうか?

なかなか人に任せるということができない方も少なくありません。普段の仕事においては「人に任せると逆に時間が取られてしまう」と感じている人も多いのではないでしょうか?

仕事を人に任せないとどうなるか?

しかし、人に任せると時間がかかるからと言って、ずっと自分で対応をし続けていては、どうなってしまうでしょうか?

当然のことながら自分で対応しなければならない仕事の量は増えます。あなたがAという仕事を人に任せられないうちに、Bという仕事もCという仕事も担当することになるわけです。当然残業も増えていきます。業務時間が増えていき、上司からは早めに退社するように促される。するとAもBもCも中途半端にしか対応できなくなっていき…。仕事の質は低下していくことでしょう。

またあなたの部下や後輩にとっても良くない状況です。「なんで任せてもらえないんだろう…なんで認めてもらえないんだろう…」という感情が募っていくことでしょう。そうなると部下や後輩は仕事に対して前向きに取り組もうという感情が削がれていってしまうかもしれません。

こういった状況が進んでいくと…どうなっていくでしょうか?

上司からはAという仕事もBもCも中途半端…次に任せたかったもっと大きな仕事があったのに、任せてもらえなくなるかもしれません。

部下や後輩は、あなたに任せてもらえない、認められないという感情から、ストレスを感じてしまうことでしょう。

「人に任せられない」ことから、様々な悪循環が生じてしまうのです。

「人に任せる」ことを諦めてはいけない

しかし、そう簡単に「人に任せる」ことはできないものです。

最初はどうにも手間取ってしまい、逆に時間がかかってしまうでしょう。また、頼む相手によっては、覚えが悪かったり、自分なりのやり方を勝手に持ち込んで間違った方法で対応しようしたり…(もちろん基本的な業務が理解できていれば自分のやり方で工夫する必要はありますが)。とにかく苦労することも多いはずです。

でも、それでも「人に任せる」ことは諦めてはいけないことです。前段落のような悪循環を生まないためにも、任せる勇気を持つことが大切なのです。

いくつか思いつく限りですが、「効率的に仕事ができる」「時間短縮になる」以外に私が考える「人に任せることのメリット」を記しておきたいと思います。

1.自分の仕事を棚卸しできる

多くの場合、なぜ人に任せられないかというと「人に自分の仕事がうまく説明できない」から。もしあなたが急な異動で誰かに仕事を引き継ぐことになったら、このままではうまく引き継ぐことができません。それよりももっと問題なのは、自分の仕事を本当の意味で理解できていないことにあります。

「今対応している仕事の本質は何か?目的は何か?本当に必要な業務なのか?仕事なのか?」……こういった仕事の本質の理解なしに、きちんとしたパフォーマンスを上げることはできないはずです。誰かに仕事を任せるのは、自分の仕事を棚卸しできるチャンスです。この機会をぜひ有効活用してみてください。

2.高い次元の仕事に挑戦できる

そもそも人に任せるということがなぜ生じるのでしょうか?それはあなたにもっと別の仕事を担ってほしいと上司や会社が考えており、その対応をするために今までの仕事を誰か他のメンバーに任せてほしいと考えているから(というケースが多いと私は思います)。そしてその別の仕事は、今までの仕事と比較してより高い次元の仕事となるケースが多いでしょう。

例えばあなたはとある営業チームのリーダーに抜擢されたとしましょう。今まで担当していた営業先を後輩のA君に任せて、あなたには営業チームの今期の方針について戦略を立ててほしいと上司から言われました。あなたは1営業担当者から複数人の営業担当をまとめ、その方向性を示すリーダーとなったわけです。戦略立案というより高い次元の仕事を担当することになったわけです。

このように今までの仕事を人に任せながら、自分は新たな仕事にチャレンジしていくことによってキャリアは構築されていきます。新しいことにチャレンジする柔軟性やスキルと同じくらい、人にきちんと任せられることは重要なことです。

3.信頼関係が作れる

前段落でも触れたように、仕事を任せられない部下や後輩は「自分は認められていない」と感じるようになり、仕事への前向きさが削がれていってしまうことになるでしょう。(中にはラッキーと感じている人もいるかもしれませんが…)

そうなると、信頼関係は揺らいでしまいます。もし先の通り営業チームのリーダーという立場であれば、チームとしてパフォーマンスを上げることが求められるのですが、なかなか機能しなくなってしまうことは容易に想像できます。

チームメンバー、部下、後輩、同僚との健全な信頼関係構築のためにも、相手を信じて仕事を任せることは重要なのです。

「人に任せる」ことで残業しない自分に、チームに

人に任せることで、短期的には業務量が増えてしまうかもしれません。しかし、長期的には業務時間を少なくすることができますし、先に挙げたようなメリットもあります。ぜひ「人に任せる」ことを、諦めないでください。

自分の仕事量が適切な状態に保たれていれば、過度な残業もせずに済むでしょう。その時間を自分を磨くための時間にあててもいい。家族や友人など大切な人と過ごす時間にあててもいい。豊かな生活のためにも、ぜひ意識をしてみてください。

f:id:asukodaiary:20170309141602j:plain【プロフィール】石川和男(いしかわ・かずお)

建設会社総務部長、大学、専門学校講師、セミナー講師、税理士と、5つの仕事を掛け持ちするスーパーサラリーマン。大学卒業後、建設会社に入社。管理職就任時には、部下に仕事を任せられない、優先順位がつけられない、スケジュール管理ができない、ダメ上司。一念発起し、ビジネス書を年100冊読み、月1回セミナーを受講。良いコンテンツを取り入れ実践することで、リーダー論を確立し、同時に残業ゼロも実現。建設会社ではプレイングマネージャー、専門学校では年下の上司の下で働き、税理士業務では多くの経営者と仕事をし、セミナーでは「時間管理」や「リーダーシップ力」の講師をすることで、仕事が速いリーダーの研究を日々続けている。

最新刊の『「残業しないチーム」と「残業だらけチーム」の習慣』(明日香出版社)ほか、『仕事が「速いリーダー」と「遅いリーダー」の習慣』(明日香出版社)など、勉強法、時間術などのビジネス書を6冊出版している。

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石川和男 公式サイト https://ishikawa-kazuo.com

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