介護施設での外国人スタッフ受入れ 言葉の壁以外にも文化的課題がある
介護分野でも海外留学生の受け入れが進んできている
平成28年に入管法が改正され、在留資格に「介護分野」が追加されました。これにより、留学生として入国した外国人が、介護福祉士養成施設で2年以上修学した後に介護福祉士資格を取得すれば、日本国内の介護施設で働くことができるようになります。
佐賀県介護老人保健施設協会と西九州大学短期大学が、この制度を活用してミャンマーからの留学生を受け入れるなど、慢性的な人手不足に悩む介護施設への外国人の受け入れは、今後ますます増加していくでしょう。
言葉以外にも文化・習慣・宗教の違いによるトラブルの懸念
貴重な戦力としての期待が大きい外国人スタッフですが、実際に彼らを現場に迎え入れた場合、言葉の壁のほかに懸念されるのは、文化や習慣、宗教の違いから生じるトラブルです。
わが国では、ほとんどの人が日本人として共通の意識や文化を共有していることから、時として、異文化に対する理解が追いつかないことがあります。全く異なる文化、宗教観を持った外国人スタッフに、長くかつ貴重な戦力として活躍してもらうには、彼らの文化的背景や宗教上の禁止事項などを職場全体で共有し、正しく理解しておくことが重要です。
信仰に配慮した業務調整が働きやすい職場づくりに繋がる
こんな事例があります。
ある介護施設で、イスラム教徒の外国人を受け入れました。
イスラム教には、1ヵ月の間、日の出から日の入りまで飲食を絶つ「ラマダン」というとても重要な儀式がありますが、受け入れ時期がちょうどその期間と重なってしまったため、彼らは1日中飲まず食わずで働くことになってしまいました。
そのような状態で入浴介助などの体力が必要な仕事をすれば、脱水による熱中症の危険が出てきます。
事業所としては、安全配慮義務の観点からも無理はさせられないので、当該ラマダンの期間中、彼らが体調を崩さないよう力仕事から外すなどの配慮をしているそうです。また、1日5回のお祈りの時間も確保するなど、その信仰を尊重しながら、職場全体で、彼らが働きやすい環境づくりを進めています。
外国人スタッフを育成・活用している事業所は評価が高い施設でもある
外国人スタッフへの教育や理解を深め、大きな成果を上げている事業所は他にもあります。
筆者は、一般社団法人 日本介護協会が開催する「介護甲子園」というイベントの開催に携わっています。
参照:介護甲子園
これは、「介護業界で働く人が最高に輝ける場を提供するイベントで、全国からエントリーされた介護事業所のうち、独自の選考基準で選ばれた優秀事業所が、年一回、数千人が集う大会場に集結、ステージで事業所の想いや取組みを発表し、介護甲子園における日本一(最優秀賞)の事業所を決定(主催団体HPより抜粋)」するというものです。
このイベントは、初開催から今年で7年目を迎えるのですが、第6回、第7回大会で日本一(最優秀賞)になった事業所は、いずれも外国人スタッフを大切に育て、活用しているところでした。
丁寧な日本語教育はもちろんのこと、差別のない職場の実現やメンタルケア、外国人介護職交流会の開催など、彼らが不安なく働ける環境を整え、職員一丸となってサービスの向上を図ってきたことが、「日本一」の栄冠に繋がったのです。
「国籍や人種関係なく、人と人、心と心が大事だということにたどり着きました」
第6回大会で日本一に輝いた施設のこの言葉が、様々な課題解決のための、大きなヒントになるのではないでしょうか。
(五井 淳子/社会保険労務士)
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