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「誇り」と「生きがい」を生む職場のつくり方

「誇り」と「生きがい」を生む職場のつくり方

わずか7分間。

これは新幹線清掃に使える時間だ。清掃スタッフたちは、たった7分の間に座席などの車内清掃をすべて行い、定刻通りに新幹線を送り出す。

その仕事ぶりは「新幹線劇場」とも呼ばれ、オリエンタルランドや東京大学の学生グループが見学に来たり、ハーバード大学ビジネススクールから教材にできないかと注目を集めている。

そんな“すごい”清掃スタッフたちが所属し、東北新幹線や上信越新幹線の掃除を担当しているのが、テッセイこと株式会社テクノハートTESSEIだ。

『奇跡の職場』(矢部輝夫著、あさ出版刊)では、3K職場だったテッセイが世界最強の「おもてなし集団」に変わるまでを仕掛け人であるJR東日本テクノハートTESSEIの矢部輝夫氏が紹介している。

テッセイの新幹線清掃の最大の特徴は、「掃除の速さ」だ。

駅のホームに到着した新幹線車両が、折り返して発車するまで12分。そこから2分間の降車時間、次の乗客の乗車時間3分を除くと、掃除に使える時間は残った7分間しかない。

座席の下や物入れにたまったゴミをかき集め、座席の向きを進行方向に戻し、100席すべてのテーブルを拭く。窓のブラインドを上げ、窓枠を拭き、座席カバーを交換し、忘れ物をチェックし、忘れ物があれば紛失しないよう管理する。壊れている箇所が見つかったらJRへの連絡と対応を施し、集めたゴミをまとめて出す。さらにトイレも掃除する。

これらの作業をたった7分間で行うのだ。

1チームの基本構成は22人だが、1車両を基本的にはたった1人で清掃する。各チームは、通常1日約20本の車両清掃を行う。

清掃が遅れれば、新幹線の運行を乱す危険もある。肉体的にも精神的にもかなりの重労働であることは容易に想像できる。

新幹線清掃は、「きつい・汚い・危険」の「3K」職場であり、メディアで取り上げられるようになったからといって、現実的にとても厳しい仕事内容なのは変わりない。

では、なぜ、テッセイで働いているスタッフたちは、みんな表情が明るく、やる気にあふれているのだろうか。

テッセイの清掃スタッフたちは、「新幹線を定刻通り運航する」「お客様のためになりたい」という純粋な気持ちを原点とするスタッフの現場力が高いことが特徴だ。そして、仕事への「誇り」と「生きがい」を持っており、仕事を生きがいになれば、それが組織の強さにつながっていくのだ。

そのために経営者は、スタッフを認めることが大切だ。そして、経営者がスタッフを、スタッフがスタッフ同士を、互いに認め合うことのできる環境、風土、仕組みをつくること。こうすることで、「ほめられることによってさらに伸びる」という好循環が生まれる。

この好循環を実現するために、テッセイがこだわっているスタイルがある。

「礼に始まり、礼に終わる」という姿勢だ。

車両清掃チームは、担当車両が入線する分前までにホームに到着し、列車が来る方向に向かって一礼する。そして、列車がホームに入ってくると、深々とお辞儀をして迎える。

列車に乗り込む前にも、降車するお客様1人ひとりに対して「お疲れさまでした」と声をかけながら一礼。清掃を終えたあとも整列し、ホームで乗車待ちをしているお客様に「お待たせしました」と声をかけ、再び一礼し、次の持ち場へ移動する。

単に掃除をするだけでなく、こういったプロとしての礼儀正しさを徹底する。こうすることで、自分たちの仕事は「旅の思い出づくり」なのだという考えが浸透していった。かつては良くなかった現場の雰囲気もどんどん良くなり、掃除中のケガなどが減ったという効果も出ている。

ちなみに、「新幹線劇場」と呼ばれるようになったのは、2013年の放映されたある番組のコーナーのこと。タレントの山口もえさんが新幹線清掃を体験がきっかけだった。

このとき「大きな窓越しに外から見られているから、劇場みたい」という感想を述べたことがきっかけで、清掃スタッフが自分たちの仕事を「新幹線劇場」と呼ぶようになり、この言葉はテッセイの重要なキーワードになった。

なんの違和感もなく、快適に新幹線での移動時間を過ごせるのも、新幹線清掃の仕事に誇りや生きがいを持っているスタッフたちのおかげだ。

新幹線の清掃スタッフを見かけることはあっても、その仕事ぶりや所作まで気にかけたことはないかもしれない。新幹線に乗る際は、新幹線劇場に注目してみてはどうだろう。

(新刊JP編集部)

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