「最も近い他人」の助言に勝る“良薬”はないーー山口拓朗の「夫婦円満法」

今年で結婚20年目。2度の離婚危機を乗り越えて、今ではお互いが相手を認めて応援し合い、それぞれのビジネスを発展させている山口拓朗さん、朋子さんご夫婦。拓朗さんは文章の専門家として、これまでに著書を10冊以上出版。奥様の朋子さんは主婦の起業を支援するオンラインスクール「彩塾」の塾長として、これまでに600名以上の門下生を輩出。2016年から夫婦そろって中国での講演をスタートさせるほか、「夫婦コミュニケーション」をテーマにした講演活動にも力を入れています。f:id:k_kushida:20180208211413j:plain

そんな山口拓朗さんが自身の経験から編み出した「夫婦円満法」を公開するこのコーナー。第11回は「夫婦間コンサルティングのすすめ」です。

人の視点は、その人自身にくっついている?

他人のことはよく見えるのに、自分のことはよく見えない。

この言葉に賛同する方は多いでしょう。自分のことが自分で見えていれば、人生での迷いは激減するでしょう。何か選択肢を突きつけられたとき、あるいは、何か問題が起きたときも、慌てる必要がなくなります。客観的に自分を見つめて、最適な解決策を打ち出せばいいわけですから。

しかし、そう簡単にはいかないのが、私たち人間というもの。人の視点は、その人自身にくっついており、自分から離して、客観的に自分を見つめること(=自己客観視)が極めて難しいのです。

人間のコミュニケーションに「相談」が多いのも、人が自己客観視を苦手にしていることの表れでしょう。自分では自分のことがよく見えないから、客観的に見えている他人に助言を求めるのです。

状況にもよりますが、一般論としては、人から受ける助言はありがたいものではないでしょうか。そして、人の助言に耳を傾ける人と傾けない人とでは、前者のほうが、より豊かな人生を歩んでいるのではないでしょうか。「耳を傾ける=素直さ」であり、また、「自己客観視できる絶好の機会」だからです。

パートナーの助言に耳を傾ける?それとも、傾けない?

では、自分のことが最も見えている人は誰でしょうか? それは、夫婦のパートナーです。親子や兄弟の場合、少し距離が近すぎます。そもそも血縁のアヤとでもいいましょうか。それぞれの「思い込み」や「思惑」が邪魔をして、冷静に相手を客観視できないことも少なくありません。

一方、夫婦のパートナーは“最も近い他人”です。親子ほど近すぎず、かといって知人・友人ほどは遠くない存在。だからこそ、的確に相手を見ることができるのです。

(1)パートナーの助言に耳を傾ける人

(2)パートナーの助言に耳を傾けない人

あなたは(1)と(2)のどちらでしょうか? 世の中には、パートナーの助言を「口うるさいだけ」ととらえて、聞く耳をもたない人もいます。相手が口にする言葉のほとんどを「お小言」「否定」「批判」ととらえる人もいれば、カッとなって言い返してしまい、関係をギクシャクさせてしまう人もいます。(2)のタイプです。そもそも「(パートナーの)助言は受けたくない」と、聞く耳をふさぎっぱなしの人もいます。

しかし、筆者の経験上、パートナーの助言は「“お小言”の顔をした“宝物”」であることがほとんどです。(客観視しづらい)自分についての“さまざまな気づきをくれる”とてもありがたい宝物です。事実、筆者は(2)のから(1)の生き方へシフトすることによって、人生が大きく変わりました。

パートナーの助言を受け入れることのメリットとは?

どうして(1)のような生き方、つまり、パートナーの助言に耳を傾ける生き方がおすすめなのでしょうか。それは、「長所伸長」と「短所克服」がしやすくなるからです。相手の助言に従って、長所を伸ばし、短所を克服していく。あるいは、その結果、社会(や会社)に順応したり、新たな人生を切り開きやすくなったりするケースもあります。

たとえば、本人が「自分はアイデアマンだから商品開発が合っている」と思っていても、パートナーから見ると「アイデアマンというよりも……人付き合いがとても上手だから、この人に営業やらせたら成功すると思う」と見えるようなことがあります。この場合、パートナーから「営業が向いているんじゃない?」「営業部への異動願いを出してみたら?」という助言を受けない限り、その人は、延々と商品開発部に身を置き続けるかもしれません。つまり、本来の才能を開花させずに、一生を終えていたかもしれない、ということです。

女性であれば、本人が「自分は専業主婦が向いている」と思っていても、パートナーから見ると「家に閉じこもっているときよりも、働きに出ているときのほうが生き生きしている」と見えることがあります。そんなときに、パートナーの助言を素直に受け取ることができれば、その女性の人生は大きく変化するのです。

ほかにも例を挙げればキリがありません。

【自分の認識】紺のスーツが似合っている

【相手の認識】紺のスーツは似合わない。グレーのほうが似合っている

【自分の認識】お金のセンスがある。自分には投資の才能がある。

【相手の認識】お金のセンスは並。管理能力はあるけど、投資の才能は乏しい。

【自分の認識】自分は体育系だから、タフでストレスにも強い。

【相手の認識】最近、顔色が悪く、以前よりも笑顔が減った。うつ病の予備軍かもしれない。

【自分の認識】自分には何の取り柄もない。

【相手の認識】すばらしい才能がたくさんある。

【自分の認識】自分には今の会社が合っている

【相手の認識】今の会社は合っていない。転職したほうがいい。

“パートナーの助言”によって本人がムダに踏んでいるブレーキが外れる

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もちろん、相手の認識が100%正しい、と言いたいわけではありません。ときには、助言を受け入れても、うまくいかないことや、逆に、相手の助言を突っぱねて自分を信じた結果、うまくいくこともあるでしょう(いずれの場合も、助言してくれたパートナーを責めるのはマナー違反です)。

ただし、多くの場合、パートナーの意見に耳を傾けたほうが、結果はいい方向に転びます。なぜなら、人は自分が見えないゆえに「私はこんな人間だ」と自分自身を勝手に規定してしまっているからです。クルマを走らせているときに、アクセルと同時にブレーキも踏み続けている状態です。こういう人は、人から助言でも受けない限り、変化しようとしません。「自分本来の強みで生きよう!」「新しいことにチャレンジしよう!」「新しい人生を切り開こう!」という気持ちになりません。

パートナーの助言には、本人がムダに踏んでいる「ブレーキ」を外す効果があるのです。ときに、その人自身が勝手に狭めてしまっている可能性を、グイッと広げる役割を果たしているのです。

“エゴ”から出る助言か、“愛”から出る助言か

言うまでもありませんが、パートナーの助言が功を奏すのは、夫婦の信頼関係が構築されているケースに限ります。仮に、お互いが過度に依存し合っていたり、精神的に自立していなかったりした場合では、相手の可能性の芽を摘む(相手の足を引っ張る)助言をするパートナーもいます。また、自分のエゴを一方的に押し付けてくるケースもあります。そうしたリスクを避けるためには、夫婦関係の現状を冷静に見極める必要があります。くり返しになりますが、助言以前に、「信頼関係の構築」を優先させなければいけません。

“夫婦間コンサルティング”のすすめ

パートナーと良好な信頼関係が築けているかどうかは、あなたの心に手を当てればわかるはずです。あなたがパートナーのことを心から信頼しているなら、あるいは、日ごろ、自分自身が(自分のエゴではなく)真に相手のためを思って助言をしてあげているようなら、おそらく、相手からもらう助言も、受け入れるに値するもののはずです。

パートナーは「自分では見えない本当の自分」を、驚くほど間近から見てくれている“とてもありがたい存在”です。そのことの価値に気づいた夫婦はラッキーです。なぜなら、何か迷いや課題が生じたときなどに、いつでも気軽にパートナーに相談できるからです。

筆者夫婦はお互い起業していますが、プライベートなことはもちろん、仕事のことで悩んだときも、真っ先に相手に相談する習慣が身についています。もちろん、すべての助言を100%受け入れているわけではありませんが、少なくとも前向きに検討する受け入れるクセがついています。

もちろん、助言を送る側は、言い方には十分に注意する必要があります。乱暴な言い方や、上から目線の言い方、嫌味な言い方をすれば、相手が拒否反応を示しかねません。そして、もうひとつ重要なルールは、助言を「受け入れる or 受け入れない」の判断は、相手に任せる、ということ。もしもあなたが「私の助言を拒むなんてひどい!」と思うようなら、それは、そもそも良好な信頼関係が築けていないのかもしれません。

夫婦がお互いに“信頼できるコンサルタント”として求め合うとき、お互いの人生に、とてつもなく大きな安心感と希望が生まれます。パートナーの助言が、夫婦それぞれの人生を豊かな方向へと導く妙薬となるのです。

著者:山口拓朗

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『そもそも文章ってどう書けばいいんですか?』著者

伝える力【話す・書く】研究所所長。「伝わる文章の書き方」や「好意と信頼を獲得するコミュニケーション術」「売れるキャッチコピー作成」等をテーマに執筆・講演活動を行う。最新刊の『そもそも文章ってどう書けばいいんですか?』(日本実業出版社)のほか、『残念ながら、その文章では伝わりません』(大和書房/だいわ文庫)など著書多数。起業家の妻・山口朋子と「対等な夫婦パートナーシップで幸せな人生を作る方法」など夫婦関係の築き方をテーマにした講演も行っている。『世帯年収600万円でも諦めない! 夫婦で年収5000万円になる方法』(午堂登紀雄、秋竹朋子著)にも夫婦で取り上げられている。

山口拓朗公式サイト

http://yamaguchi-takuro.com/

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