「薪ストーブ」ブーム到来!? 暖かさだけではない、人気の理由を探ってきた

「薪ストーブ」ブーム到来!? 暖かさだけではない、人気の理由を探ってきた

薪(まき)ストーブが“アツい”ようだ。書店をのぞくと入門書だけでなく、ストーブを使ったクッキングガイドや自分でつくるDIYマニュアルまでさまざまな書籍が並んでいる。そんな薪ストーブの魅力を体験してきた。

魅力その1「二次燃焼」と「輻射熱」&「対流」で高効率の暖房機能

薪ストーブの魅力を体験するために訪れたのは大阪府箕面市彩都にある「かぐら」。薪ストーブと関連アイテムのほか、木を素材とするさまざまな雑貨ショップを併設し、実際に薪ストーブ体験ができるお店だ。薪ストーブの炎を前にして代表の福井綱吉(ふくい・つなよし)氏にその魅力についてお聞きしてみた。【画像1】「かぐら」(KJWORKS)代表の福井氏(写真撮影/井村幸治)

【画像1】「かぐら」(KJWORKS)代表の福井氏(写真撮影/井村幸治)

「かぐら」の店内にはたくさんの薪ストーブが展示されている。ヨーロッパ製ストーブはシンプルでモダンなデザインも多い。アメリカ製のストーブはガッチリとしてデコラティブ、調理も行えるスタイルが多い。

――お話を聞きながら炎のゆらめきを眺めているだけで、身も心も暖かくなってきますね。

福井さん:「薪ストーブは密閉された『火室(かしつ)』を持つことが特徴です。煙などの燃え残ったガスを火室の中で再燃焼させる二次燃焼システムによって効率よく熱を生みだすのです。この仕組みは排出する煙の量を少なくする効果もあり、排気煙量の少なさ・無煙化率を競う商品もたくさん登場しているんですよ」【画像2】薪ストーブには豊富なバリエーションがある。左:いずれもアメリカ製の「ダッチウエスト」。中:白いカラーが特徴のアメリカ製「クワドラファイア」。右:左側の木製ラックの下はベルギー製の「ドブレ」。ブラウン管テレビのような形状が特徴(写真撮影/井村幸治)

【画像2】薪ストーブには豊富なバリエーションがある。左:いずれもアメリカ製の「ダッチウエスト」。中:白いカラーが特徴のアメリカ製「クワドラファイア」。右:左側の木製ラックの下はベルギー製の「ドブレ」。ブラウン管テレビのような形状が特徴(写真撮影/井村幸治)

―熱の伝わり方にも特徴があるそうですね。

福井さん:「燃焼で生じた熱はストーブ本体を暖め、輻射熱と対流によって部屋の空気を暖めていきます。鋳鉄製品の場合のように、その表面に凹凸をつくることで表面積を増やし、輻射熱を増しているストーブもあります。ストーブのデザインや使用している素材によって炎の強さや、薪の燃焼時間も違います」

「炎」の存在も大きいと感じる。ゆらめく光を見つめているとなぜだか癒やされる。ほっこりして、知らず知らずのうちに無心になってリラックスしている自分がいる。太古の昔、炎を手に入れたときからわれわれ人類のDNAに書き込まれた本能のようなものなのだろうか……。【画像3】左:天板に置いたポットからの蒸気で室内を加湿。右:こちらは薪ストーブの熱を利用して発電し、モーターを回転させる「エコファン」(写真撮影/井村幸治)

【画像3】左:天板に置いたポットからの蒸気で室内を加湿。右:こちらは薪ストーブの熱を利用して発電し、モーターを回転させる「エコファン」(写真撮影/井村幸治)

魅力その2 薪ストーブで「クッキング」を楽しむ

「かぐら」の店内を見回すと目に入ってくるのがたくさんのクッキングアイテム。火室の中で使用する「ダッチオーブン」や「五徳」、ストーブ天板の上で使用する「ケトル」や「南部鉄瓶」、「エスプレッソマシン」、「鉄鍋」、「たこ焼き鉄板」など多種多様。薪ストーブはその熱を使って煮込む、焼く、揚げる、ゆでる、炒めるなどさまざまな調理に利用できる。

「火室に入れた五徳を利用してピザを焼き、お客様にお出ししたことがあります。『絶品ですね!おいしい!』と喜んでいただけたのですが、『コンビニで買ったピザなんですよ』とお伝えするとみなさんビックリ。薪の炎を見ながら、遠赤外線で焼きあげることでおいしく感じるのでしょうね。

また、サツマイモをぬれ新聞とアルミホイルで二度包みして火室に置くと焼き芋が簡単にできますし、同じようにしてミカンを焼くとマーマレードのようなトロトロの焼きミカンが出来上がります。そのほかシチューやカレー、おでんなどの煮込み料理はもちろん、アイデアと工夫次第でレシピは無限にあると思います。おでんがあまりに美味しくできるので、9月からエアコンをつけながら薪ストーブを使用する方もいるほどです(笑)」

マーマレードのような「焼きミカン」の味! ぜひ、体験してみたいものだ。【画像4】遊び心をくすぐる、カラフルで機能的なクッキングアイテム(写真撮影/井村幸治)

【画像4】遊び心をくすぐる、カラフルで機能的なクッキングアイテム(写真撮影/井村幸治)

魅力その3 薪割りや交流会を通じて仲間ができる

薪ストーブの燃料となる薪はしっかりと乾燥させた原木を適切な大きさに切りそろえておく必要がある。「かぐら」では一束500円程度で良質な薪の販売もしているそうだが、基本的には薪ストーブユーザー自身で薪を割り調達するライフワークを大切にしているそうだ。

「薪ストーブを設置されたご家族には『薪割り会員』となっていただき、ショップに併設した薪割り専用のスペースとツールをご提供しています。専用マシン「ティンバーウルフ」を使って薪割りを行っていただいています(MY斧は各自持参)。薪割りは斧を力任せに使うのではなく、斧自体の重量を活かして割るのがコツ。男性は力が入りすぎて要領の悪い人が多いのですが、女性のほうが反対に上手に使いこなしていますよ」

ショップにはたくさんの種類の斧や専用のグローブ、エプロンなども用意されている。こうしたグッズをそろえ、薪割りの腕を磨いていくことも楽しみのひとつになりそうだ。

「薪ストーブでつながった仲間ができることは大きな魅力のひとつです。購入前の体験会、設置後の薪割りやオーナー向けイベントを通じて親しくなるケースもたくさんあります。汗を流して薪割りをしていると、自然と仲間意識が芽生えますよね。お客様同士で集まって薪ストーブパーティーを開くことも多いようですよ」

同じ趣味を持つ仲間が増える、それも『薪ストーブのある暮らし』がもたらしてくれる魅力のひとつだろう。【画像5】左:体験会も仲間ができるきっかけになりそう。右:店内には薪割り用の斧などのツールもたくさんそろっている(写真撮影/井村幸治) 【画像5】左:体験会も仲間ができるきっかけになりそう。右:店内には薪割り用の斧などのツールもたくさんそろっている(写真撮影/井村幸治)【画像6】左:ストックしてある薪。右:薪割り専用機「ティンバーウルフ」を使用してスタッフの方が薪を割っていた。この機械もレンタル利用ができる(写真撮影/井村幸治)

【画像6】左:ストックしてある薪。右:薪割り専用機「ティンバーウルフ」を使用してスタッフの方が薪を割っていた。この機械もレンタル利用ができる(写真撮影/井村幸治)

薪ストーブを住宅に設置するには

「薪ストーブっていいなぁ」と思ったときに、気になるのは自宅に設置が可能なのかどうか。

薪ストーブのある暮らしを満喫するのなら、新築住宅の建築の際に設置するのがベストだろう。

「これから新築住宅を建てるお考えであれば、当初から薪ストーブを中心にすえたプランニングをお薦めします。気密・断熱性能を高め、太陽の光や自然の風などの自然エネルギーを利用するパッシブデザインを取り入れることで、エコで快適な暮らしを実現させることが可能です。「かぐら」の母体は木の家づくりの工務店『KJ WORKS』ですが、薪ストーブ専用住宅として『E-BOX』という提案型住宅もご提供しています」

では既存の建物には薪ストーブを設置できないのだろうか?

「煙突の設置と炉台や炉壁と呼ばれる本体まわりの工事が行える間取りや構造であれば、古民家や中古住宅にも技術的には設置することは可能です。ただ、気密&断熱性能が良くない建物では暖房効果は薄まります。また、煙が問題となり住宅密集地では設置が難しいケースもあります。実際に建物と周辺の確認を行ったうえでの判断となります。煙の問題をクリアする方法として、おがくずなどを圧縮熱成形した燃料を使用するペレットストーブもあります」と福井氏。

排出する煙を極力減らすための改良が進んでいるとしても、周辺への配慮も必要となるということだろう。【画像7】「かぐら」には、木のぬくもりと薪ストーブを体験できる『KJ WORKS』のモデルハウスが併設されており、薪ストーブ専用住宅「E-BOX」では宿泊体験も可能(写真撮影/井村幸治) 【画像7】「かぐら」には、木のぬくもりと薪ストーブを体験できる『KJ WORKS』のモデルハウスが併設されており、薪ストーブ専用住宅「E-BOX」では宿泊体験も可能(写真撮影/井村幸治)【画像8】左:体験会では着火や薪補給を行いながら注意点を解説。右:「灰の掃除は?」「煙突の高さは?」「屋根の勾配は?」など熱心な質問が飛び交う(写真撮影/井村幸治)

【画像8】左:体験会では着火や薪補給を行いながら注意点を解説。右:「灰の掃除は?」「煙突の高さは?」「屋根の勾配は?」など熱心な質問が飛び交う(写真撮影/井村幸治)

最初の取材の後、1月14日に行われた「薪ストーブ体験会」にも参加させていただいた。当日は西宮市でログハウスにお住まいのご家族と、吹田市でこれから新築住宅を建てられるご夫婦の2組が参加され、薪ストーブを前にして熱心なやり取りが行われた。Webや雑誌を通じてかなり勉強をされていたようだが、実際にストーブや薪を前にしての質疑応答はとても参考になった様子。来シーズンはきっと2組とも「薪ストーブライフ」を楽しんでいることだろう!

みなさんも「薪ストーブライフ」に興味を抱かれたなら、まずは体験会などに参加してみることをお勧めする。●取材協力

かぐら、KJ WORKS
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