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NY Issue : Interview with Igor Kropotov

Scott McFarnon Crazy Heart from Igor Kropotov on Vimeo.

北極など世界各地を飛び回ってドキュメンタリーを撮る一方、ファッションなどのコマーシャルワーク、さらにヨーロッパのシネマに影響されたアート作品も発表するIgor Kropotov。シネマとグラファーとはどんな仕事なのか、また数多くの仕事とアートとのバランスをどのようにとっているのか、創作の源流は——スケートボードから始まった彼の冒険とクリエイティヴについて。

——まず自己紹介をお願いできますか。

Igor「シベリアのノヴォクズネツクという小さな町で生まれました。祖父母を含めて家族のほとんどがその町の出身で、今も叔父や叔母、従兄弟が住んでいます。そこからベルギーのブリュッセルに引っ越して、インターナショナルスクールに通いました。4年間ベルギーに住んだ後、ロシアに戻ってモスクワで思春期を過ごしたんですが、モスクワでも英語で教育を受け続けたから、英語圏の大学を受験することができました。親の意向もあって、長い間ビジネスを勉強するつもりだったけど、いろいろあってフィルムもやりたくなって、一校だけお試し受験することにして、どうせ受けるなら世界最高峰の学校にしようと思ってNYUのフィルムスクールにしたんです。本当にギリギリに決めたし、進路指導の先生にもフィルムのスクールは薦められませんでした。でも受かったら絶対に行くと決めていて、見事合格しというわけです。アメリカには一度も行ったことがなくて、80年代や90年代の映画でのNYのイメージが強かったのですが、クイーンズに着いて、タイムズスクエアのホテルにタクシーで向かったんだけど、クイーンズで窓から外を見ても低い建物ばかりだったから『あれ、なんか映画とは違うな』と思って。でもミッドタウントンネルを通って、マンハッタンを見た瞬間! あれは今でも鮮明に覚えています。建物があまりにも高いからタクシーの窓から外を見あげようとしたんですよ。タイムズスクエアに着いたら人混みがすごくてNYらしいと思ってワクワクしたし、早速その夜にNYの友達に会いに行って、とても楽しかったな。それから10年間くらいブルックリンに住んでいます」

——あなたがやっているシネマトグラフィーとはどういう仕事なんでしょうか。

Igor「シネマトグラフィーは、台本のイメージに合わせたビデオを作る作業で、大まかに三部分に分けられます。
一つ目は、マネージャー的な役割で、カメラ、エレクトリック、グリップの部門の担当。その部門ごとにもヘッドがいます。通常の撮影だと15〜40人くらいをマネージングしていて、大きな現場だともう少し増えます。カメラの部門は、第一カメラマンと第二カメラマンと道具を管理する人たち。カメラの位置や、使うレンズを伝えます。エレクトリックの部門では、電気や照明を担当していて、この部門の仕事が一番クリエイティヴだと思う。どういう照明をどこに当てるかを伝えるんです。グリップとの仕事もわりとクリエイティヴで、現場を作ってくれる役割があります。照明の位置調整をしたり、高い所から見下ろした動画を撮りたい時に、安全なクレーンを作ってくれたり。マネージャーは3つの部門のヘッドと話しながら仕切ります。
二つ目はテクニカルな仕事で、技術が必要。理想のイメージを作り上げるために、どんな照明やレンズが必要か、どの技術を使ったらどう見えるかなどの細かい知識が必要とされます。

そして最も大事なのがクリエイティヴの仕事。クリエイティヴ側の人が台本のセリフから動画のイメージを作り上げないと、マネージャーもテクニシャンも仕事できないので、全ての元となるし、一番楽しい部分ですね。
この3つは、簡潔に言うとディレクターと一緒に台本からムービーを作るということ。ムービーは音とイメージでできているけど、その50%をシネマトグラファーは担当するので重大な責任があります。僕の大好きな仕事です」

NeoL_Igor Kropotov_1

——どのようにしてその仕事を始めたんですか。

Igor「大学の講義が正式に始まった時からすでにシネマトグラファーになったと認識しています。でも、シネマトグラフィーという仕事を発見したのはティーンの頃で、13歳の時に友達とスケートボードを始めて毎日やってたんです。16歳の時に骨折してしまって、4ヶ月くらい乗れなかった時期があって、それでもスケートボードに関わりたかったから、滑っている友達を撮影し始めて。スケートボードを撮影する時は、大抵魚眼レンズを使って、動きを追うか全体を撮るかなんです。たまにワイドアングルなしで、ズームもしますけどね。スケートボードの撮影以外にも、休憩中に友達の写真を撮ったりもしていて、その時にイメージを通してストーリーを伝えることが好きなことに気づきました。イメージを作るのが好きだし、自分らしい動画が作れるんです。役者も関わるディレクターとは違いますし、誰が担当したかによって全然違う味が出るからとても面白い。舞台要素にはあまり興味がないから、アイデアを動画で捉えるんです。大きな責任を任されるのが好きだからこの道を選んだんでしょうね」

——インスピレーションはどこから?

Igor「最初はスケートボードビデオの影響が強かったと思います。特にアメリカのね。当時はクリエイティヴというものをちゃんとは理解していなくて、他のビデオで観たものを再現しようとしていました。Fred Mortagneは、Cliche Skateboardsというフランスのスケートボードブランドの撮影をやっていて、素晴らしい写真を撮るんです。Joe MinerがEmericaという靴のブランドのために撮った動画も最高です。
そのうち動きだけじゃなく、感情なども撮りたいと思い始めて、スケートボードの動画を観る時も、技より現場の裏のをおもしろく感じたりしだして。
でもやはりシネマトグラフィーは、台本から想像することが一番大事ですね。そこから最初のインスピレーションが出てくる。他にはヨーロッパのフィルムやVimeoの動画からもインスパイアされます。VimeoはYouTubeよりクリエイティヴでアート要素が強い動画が多いから好きなんです。光やコントラストの使い方はヨーロッパのフィルムの影響が強いかな」

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