私は仕事の「優先順位」はつけない。だってやるべきことは…アイ・コミュニケーション代表取締役 平野友朗氏の仕事論
新しい1年がスタートしました。昨年は「働き方改革」が叫ばれ、「残業を減らし、時間あたりの生産性を上げよう」という目標を掲げる企業が多く見られました。今年もその動きはさらに広がっていくでしょう。
多くのビジネスパーソンが、会社や上司から「仕事の効率化」を求められる中で、効率化の工夫として「優先順位をつけて作業をする」ことを心がけている方は多いのではないでしょうか。
ところが、「優先順位はつけるべきでない」という考え方もあります。
株式会社アイ・コミュニケーション代表取締役・平野友朗さんは、「ものごとに優先順位をつけるのではなく、やるべきことはすべて期限内にやればいい」と語ります。
そこで、「優先順位をつけずに」仕事に取り組むにあたり、効率的に進める方法やテクニックを教えていただきました。
優先順位をつける時間があったら、タスクを早く処理するほうがいい
優先順位をつけるという行為は、脳に負荷をかけているんです。
AとBどちらの優先順位が高いか、BとCではどちらか…などと、それぞれ比較を繰り返すことで脳が疲労してしまいます。効率よく仕事をするなら「考えない」ことも重要です。
私の場合は、目の前に100のタスクがあったとしたら、それぞれの「期限」だけを見て処理します。そして「今、処理できる」と思ったら、期限に関係なくすぐに取り組むようにしています。
メールを1通送る、電話を1本かける、訪問先の地図を印刷するなど、「期限」がしばらく先であっても、ちょっとした時間でできるものは優先順位を考えずにすぐに行う。そうすることで、タスクを一つでも減らすのです。多くの業務を抱えている状態では判断が鈍るもの。そうならないようには、優先順位をつけるのに時間を割くよりも、目の前の仕事を一つでも減らすほうが効率的だと思います。
例えば、メールの処理。私は朝、出社すると100通ほどのメールが届いています。おそらく、すべてのメールの件名・発信者をチェックし、どれから開封・返信するかを考えてから処理にとりかかる人も多いのではないでしょうか。
私の場合は、目についたメールを片っ端から開いて処理します。すぐに処理できるものは1分以内で完了。それ以上かかりそうな内容は後回しにします。経験上、100通のメールは1時間もあれば20通くらいまでに減らせます。残りは仕事の合間に処理をすればいいのです。
「期限」と「質」を考えて行動する
仕事に「優先順位」という概念を持たず、「いつまでに(期限)」「どのレベルで仕上げるか(質)」だけを考えてみましょう。仕事の評価というものは「期限」と「質」で決まるものだと思います。
まず、「やると決めたらすべてを期限内に行う」。そして「質」に関しては、「求められている質」を把握することが大切です。質を高めるためにはどうしても時間がかかりますが、際限がなくなってしまいます。相手が求めている以上の質に仕上げるのに時間をかけるなら、ほかの作業をしてほしい、と言われるでしょう。
相手を満足させるために、常に100点や120点を目指すのがいいとは限りません。相手は80点レベルあればいいと考えているかもしれないし、それであれば80点~85点くらいを目指せばいいのです。
「TODOリスト」の欠点に気付かないと、仕事は終わらない
よく「優先順位をつけて仕事しろ」と言われます。しかし、仕事として認識しているものであれば結果的には「すべてやれ!」です。優先順位をつけるのではなく、「やるかやらないか」しかありません。順番はあるようでないのです。あるとしたら発生した順です。やると決めた瞬間にスケジュールを立てて、すぐに着手するほうが、早く進み、早く終わります。
「TODOリスト」を作成し、それにもとづいて日々の仕事を進めているほうは多いと思います。
「□ 山田さんに電話」のように、やることを書いて、済んだら□にチェックを入れたり、線を引いて消したり。しかし、このTODOリストには致命的な弱みがあります。
例えば、TODOリストに次のようなタスク一覧を書いたとしましょう。
□A社にお礼メールを送る
□Bさんに電話する
□**の最新動向についてリサーチする
□売り上げアップの施策を考える
□C社との打ち合わせ資料を作成する
□D社の見積書を作成する
□E社に提案するプランを練る
こうしたTODOリストでスケジュールを管理している人は「終了!」とタスクを消すことに快感を覚えています。
その快感を味わうため、「電話する」「メールを送る」など、着手しやすいものから対応する傾向があります。その結果「リサーチする」「施策を考える」「プランを練る」など、時間がかかるTODOや抽象的なTODOはなかなか処理されません。
「いつかできたらいいな」という願望のまま、何カ月も残り続けているタスクが、あなたのTODOリストの中にもあるのではないでしょうか。見て見ぬふりをしていても、それは消さないかぎり残ります。
では、TODOリストに優先順位をつければいいかというと、それも問題があります。
急ぎもの・重要なもの順に1~10まで番号を振っておいたとして、そのとおりに処理していっても、処理するそばから次の仕事が入ってきます。すると、8・9・10といった後半のタスクはいつまでたっても処理されません。
こうしたところに、「TODOリスト」の落とし穴があるのです。
TODOリストはスケジュール管理ではなく「備忘録」として使う
では、TODOリストはどのように使うか。
私は、スケジュール管理というより「備忘録」として位置づけ、そのように使うのがいいと思います。
一つは「一時的な備忘録」。
「Aさんに電話連絡しておく」「Bさんにメールする」などの細かなタスクまでスケジュール帳やカレンダーに記している人もいるかもしれませんが、数分で終わる予定をスケジュール帳に入れるのはかえって管理が煩雑になってしまいます。
こうした細かなタスクはTODOリストに記載して、手が空いたときに処理するのがいいでしょう。
もう一つの使い方は「長期プロジェクトの備忘録」です。急ぎではないけれど、取り組んだほうがいいような、時間がかかるプロジェクト。それをいったん記録するのです。スケジュール帳やカレンダーに記録する前の「一時保管所」として使います。
TODOリストに書いてあることで、そのプロジェクトを「意識」できるようになります。人は意識しなければ、それをやろうという気にならないので、「意識すること」が大切。自分自身にプレッシャーを与え続けるのです。
TODOリストを見るたびにそのワードが目に留まるので、そのTODOを消したくなるでしょう。すると消すためにどうすればいいかを考えるようになります。
そこから、例えば「このテーマに詳しい〇〇さんに相談する」(30分)、「企画書を作成する」(1時間)といった、具体的で短時間で処理できる予定を、スケジュール帳やカレンダーに入れていきます。そして一つ終わるたびに、そのプロジェクトに関する次の予定を入れていけば、着実に前進し、いつか達成することができるでしょう。
――このように、仕事を「順番」で考えるのではなく、まず「それをやるかやらないか」の意思を決めることが大切だと思うのです。
平野友朗氏/株式会社アイ・コミュニケーション代表取締役、一般社団法人日本ビジネスメール協会 代表理事
1974年生まれ。筑波大学人間学類で認知心理学専攻。広告代理店勤務を経て、2003年、日本で唯一のメルマガ専門コンサルタントとして独立。2004年、アイ・コミュニケーション設立。ビジネスメール教育の専門家。メールスキル向上指導、組織のメールのルール策定、メールの効率化による業務改善や生産性向上などを手がける。セミナーや講演・研修は年間120回を超え、メディア掲載実績は合計で1000回を超える。著書は『仕事を高速化する「時間割」の作り方』『仕事が速い人はどんなメールを書いているのか』など合計26冊。
(株)アイ・コミュニケーション http://www.sc-p.jp/
一般社団法人日本ビジネスメール協会 http://businessmail.or.jp/
ビジネスメールの教科書 http://business-mail.jp/
【参考図書】
『仕事を高速化する「時間割」の作り方』
著者:平野友朗
出版社:プレジデント社
EDIT&WRITING:青木典子
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