大泉洋『探偵はBARにいる』シリーズへの愛を語る「“好きなんだけど映画館には行かない”だと続かない」
2011年初の映画化以降、2013年には続編『探偵はBARにいる2』が公開。待望のシリーズ最新作となる『探偵はBARにいる3』が現在大ヒット上映中。
札幌在住のミステリー作家・東直己の「ススキノ探偵」シリーズを原作に、探偵を大泉洋さん、高田を松田龍平さんが演じる本作。ハードボイルドなテーマが2人の絶妙な掛け合いによって、笑いあり涙ありの見事なエンターテイメントに進化しています。
今回ガジェット通信では、主演の大泉洋さんにインタビューを敢行。映画について、札幌愛について、色々とお話を伺ってきました。
――『探偵はBARにいる』シリーズ4年ぶりの集結となりましたが、久しぶりにこのメンバーとご一緒していかがでしたか?
大泉:今回は監督が過去2作とは違うのですが、逆にいうと美術さんも衣装さんもほとんどのスタッフが前作と一緒で。また一緒にやれる喜びが現場に充満していて、すごくいいなと思いました。「みんなが待ってた」って感じがすごくしたので幸せな映画だなと。
――私もそうですが、ファンの皆さんも心から待っていたと思います!
大泉:そうですね、ありがたいです。北海道の皆さんが本当に楽しみにしてくれてて、ロケをしていても「洋ちゃん、探偵やらないの?」って何度も言われていたので。
――3の見所はどんな所にありますか?
大泉:2ってすごく派手でエンターテイメント性が高かったと思うんですが、今回の3は1に寄せた、大人でストーリーがしっかりした映画になっていると思います。これまでって、最初からアクションか最初から拷問か(笑)でシーンが始まってたんだけど、今回はしっとり始まりますよね。単純に皆が年とったっていうのもあると思います。スタッフもキャストも変わって無い分、皆が同じく年をとっている。30代後半からの6年間ってすごいデカイですよ。だから、6年前の僕よりも今の僕が演じる探偵の方が説得力が増してるかもしれませんね。
――『探偵はBARにいる』って世界観が確立されていて、今回3を観ても「これこれ!」と興奮してしまったのですが、この世界観を作っている一番大きな物って何だと思いますか?
大泉:高田とかおなじみの連中との関係が出来上がっているからこその空気感と、セリフまわしっていうのは大きいと思いますね。探偵のしゃべり方って、ハードボイルドなセリフの言い回しで最近観ないキャラクターですよね。それが『探偵はBARにいる』の世界観だと思うし、僕もその世界観が好きなんだと思う。
後は、僕はこの映画にはどこかに切なさがあると思っていて。刑事モノと探偵モノの違いかもしれないんだけど、刑事モノってもっと派手で大きいことやってるんだけど、探偵モノってなぜかどこかに切なさがある。今回のヒロイン・マリ(北川景子)にも切ない過去があって、探偵はそれを分かっていて全て受け止めて飲みに行ったりね。ハードボイルドなんだけど切ないんだよなあ。
――本作のお話作りには大泉さんの意見も入っていると伺ったのですが、具体的にはどのあたりですか?
大泉:どこが僕の意見というよりは、全体的に散りばめられている感じですね。例えばこのシリーズはススキノが舞台なので風俗関連のエピソードを絡めた方が面白いんじゃないか、とかはずっと前から言っていたので。プロデューサーと古沢良太さん(脚本)と3人でワイワイしながら色々とアイデア出しをしたりしました。
今回のお話はオリジナル性が強いので、僕が最初に本を読ませてもらった時に「このままではちょっと弱いんじゃないの?」とか、意見を言わせてもらう事はありました。3は1よりも2よりも良い物にしないといけない、そうしないと3部作ってキレイだから、これで終わっちゃうぞって(笑)。東映にもっと作らせる為には3が面白くてお客さんが納得してヒットしないとね。その為に時には厳しい事も言わせてもらいました。
――では本作のヒットによっては4、5、6と続いていく可能性も?
大泉:僕はやりたいですよ。元々、東映さんが『探偵はBARにいる』をシリーズにすると発表した時は「そんな事言っちゃって大丈夫なの?」ってプレッシャーを感じて、それで3まで作るっていうのはなんとなく僕の中での責任でもありました。でも、今回がヒットして今後も作らせてもらえるとなれば、もっと続けていきたい。最近のお客さんは「好きなんだけど映画館には観にいかない」という人が多いので、それだと続いていかないんだよ、っていうことはね、伝えておきたいです。
――このシリーズといえば、大泉さん演じる探偵が拷問を受けるシーンがお馴染みですが、今回もすごかったですね。
大泉:もう、なんなんでしょうねアレは。裸で船に縛りつけられてね。風がすごいので体感はマイナス何十度の世界ですよ。台本には「パンツ一丁で」とは書いてないんですよ。でも監督が「ガウンでパンツで行きたい」ってやけにこだわっていて。だから僕が「ガウンにパンツは前のシーンからのつながりとか必然性が無いので服着たままでいいんじゃない?」って何度も言ったんですけど、監督は「それは分かるんですけど、ガウンにパンツの方が絵的に面白いかな……」って言うんで、なるほどね、と。もう最悪でしたよ(笑)。
――まさに体当たりという感じで、本当に寒そうでした……。
大泉:アレばっかり求められても困っちゃうんですけどね。「今度の拷問はなんですか?」って主人公が拷問されるシーンが楽しみにされる映画なんて普通無いですよ。4ではアッサリ止めてもらおうと思ってます(笑)。
――本作、北川景子さん演じるマリ、前田敦子さん演じる麗子、鈴木砂羽さん演じるモンローとタイプの違う素晴らしい女性キャラクターが登場しますが、大泉さんご自身だったらどの女性に翻弄されちゃいそうですか?!
大泉:いやあ、本当にどの方も魅力的ですよね。モンローはいい女だと思います。僕もモンローと探偵のシーンは大好きで、いいセリフもたくさんあります。前田あっちゃんの役の麗子は恐ろしい女ですよね。平気で嘘つかれてそうな、男としては本当に恐い(笑)。そうするとやっぱりマリなのかなあ、物悲しくて守ってあげたくなるというか。あんな顔で「助けて」なんて言われたら、助けちゃうだろうなあ。でも、俺家族もいるからなあ……。
――北川景子さんの演技も素晴らしかったですよね。
大泉:おキレイでしたねえ。なんか、北川さんって勘がすごく当たる方らしくて、今回も、『探偵はBARにいる』のファンだったから役柄について詳しく聞かずに出演をOKしたんですって。それでいざ撮影したら、すごいキャラクターだし、高い所から飛び降りるはで大変だったって(笑)。だから「今度からはそんな仕事の受け方しちゃだめだよ」って言いました(笑)でも、結果的に素晴らしいマリを作ってくれたので、北川さんの勘は結果的に良い方向に当たったんじゃないでしょうか。
――大泉さんは色々な原作モノを演じていらっしゃって、原作ファンの支持も高いですが、いつもどの様なお気持ちで挑戦されていますか?
大泉:『探偵はBARにいる』に関しては、探偵はもっと小太りのおっさんっていう役だから、それは俺は難しいからあんまり気にせずにね。漫画は特にヴィジュアルを出来る限り寄せてあげたいなとは思っていますけど。でもね、原作をただなぞるだけっていうのもどうかな、と思います。原作を再現するだけでは実は満足度は低いと思うんですね、だったら全国から原作のそっくりさん集めてやった方が良いものね。全然違うモノを全力でやって、やっと原作の面白さと並ぶくらいなのかなって思いながら演じています。
――今日こうして大泉さんのお話を伺っていると、役者さんとしてはもちろん、映画を作る側としての丁寧な想いを感じました。今後、映画監督に挑戦したいというお気持ちはありますか?
大泉:やってみたいという気持ちはあります。でも監督の仕事って本当に大変なんですよ。ロケハンからスポンサーの事だったり、本当にやることがたくさんある。それを面倒くさがりやの自分が出来るとは思えないんですよね。あとは半年はお休みをもらわないといけないので、家族が路頭に迷ったらどうしよう、とか。「あなたちゃんと働いて」って言われちゃうんじゃないかって(笑)。でも、気持ちはね、いつかやってみたいという想いはあります。
――いつか大泉洋監督が実現する日と楽しみにしております。今日はどうもありがとうございました!
(撮影:周二郎)
『探偵はBARにいる3』公式サイト
http://www.tantei-bar.com/
【ストーリー】「恋人の麗子が失踪した」。高田の後輩からのありふれた依頼を安易に引き受けた探偵。早速調査に乗り出すと、探偵は麗子がアルバイトをしていたモデル事務所のオーナー・マリと出会い、かすかな既視感を覚える。しかし周囲を嗅ぎまわる探偵はマリの手下に襲われ、これまで無敗を誇った高田も倒されてしまう。次第に麗子の失踪の陰に、裏社会で暗躍する札幌経済界のホープ・北城グループの殺人事件が見え隠れする。マリはグループの代表・北城の愛人だった。そんな中、何かを思い出す探偵。なじみの元娼婦・モンローがかわいがっていた、今にも死にそうに震えていた女――「あれか…?あれがマリか…?」
緊張が走る裏社会、巨額の薬物取引、2つの殺人事件――。すべてはマリによる、北城をも欺く作戦であった。そしてマリは、探偵に最後の依頼を託す。その時、探偵と高田の別れへのカウントダウンが始まっていた。
(C)2017「探偵はBARにいる3」製作委員会
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