生誕地は札幌の小さな酒場?全国でも珍しいオリジナル割り材「サッポロッピー」を飲んでみる

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お酒が好きで何でも飲んでいる私だが、なんとなくの自分の中でのブームがあり、5年ぐらい前はやたらビールが好きで、3年ぐらい前からしばらくはハイボール一辺倒になって、ここ最近はもっぱら焼酎ばかり飲んでいる。

ここで私が言っている焼酎は、高級な芋焼酎や泡盛といった“乙類”の焼酎ではなく、“甲類”の方だ。レモン炭酸で割ってレモンサワーとして飲んだり、緑茶で割って緑茶ハイとして飲んだりする方の焼酎である。

今さらなのだが、“焼酎をいろいろな割り材で割って飲む”、ということの奥深さと面白さを痛感している。前述したレモンサワーやグレープフルーツサワーといった“フルーツ系”、ほうじ茶やジャスミン茶などの“お茶系”、トマトジュースやウコンエキスなどで割る“体に良さそう系”など、どこの居酒屋さんのメニューにも実にさまざまなバリエーションがあり、その日その時の気分で選ぶことができる。当たり前のように享受しているけど、 “割り材”文化が私たちにもらしてくれたものは実はすごく大きいんじゃないだろうか。

さて、そんな“割り材”の歴史に新たな名前が加わろうとしている。

「サッポロッピー」である。

北海道・札幌生まれのご当地割り材だ。しかもその「サッポロッピー」は、カウンターとテーブル席あわせて12席ほどの小さなお店から生まれたという。

うわさを聞きつけ、飛行機に乗って飲みに行ってきた。

生誕地はバー「mayu繭」

「サッポロッピー」の発祥の地は、札幌市中央区の「mayu繭」というお店だ。まゆまゆと読む。

札幌の中心街の喧騒(けんそう)を少し離れた、狸小路の10丁目にある。

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お酒とお料理を楽しめるお店だが、居酒屋さんと言うにはオシャレな雰囲気。

ダイニングバーと呼ぶのが妥当かもしれない。

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このお店で2017年の6月から提供を開始しているのが「サッポロッピー」である。

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瓶入りの炭酸飲料で、“黄”と“赤”の2種類がある。

「サッポロッピー」自体はノンアルコールで、甲類焼酎の割り材にして味わうのが定番スタイル。コーヒーの苦味とレモンの酸味が印象的な味わいだ。

ホッピー好きが高じて……

繰り返しになるが、どこかの飲料メーカーが開発した新商品、ではない。小さな飲食店が自分たちの力で作ったものである。

って……一体なぜそんなことをしたのだろうか? そもそものところから店主の繭さんにお話を聞いてみた。

── このお店で出しているという「サッポロッピー」を飲んでみたくて来たのですが、そもそも、なぜこのようなものを作ろうと思ったんでしょうか!

繭さん:そもそものきっかけはホッピーなんです。「mayu繭」がオープンしたのは12年前なんですが、開店当初からお店でホッピーを出していたんです。実はその時まだ私はホッピーを飲んだことがなかったんですが、もともと東京で飲み歩いていて、お酒の楽しさに目覚めたっていうのが開店のきっかけになったぐらいなので、東京のどこかの酒場で目にしていたんだと思います。最初はそれほど思い入れもなくて、なんとなく置いていたんです。今では札幌でもホッピーを扱うお店が増えてきているんですが、その頃はまだ珍しかったんですよ。そんなこともあって、東京から札幌に飲みに来るお客様や、札幌から東京に飲みに行くような、お酒に対してちょっとマニアックなお客様がお店にだんだん集まるようになって、逆にそういうお客様からホッピーの魅力を教わったんですよ。

── なるほど。なんの気なく置いているうちに「ホッピー」好きの方が集まってきたんですね。

繭さん:そうなんです。それが前提としてあって、ある時にお店で常連さんと話していて、こういうものって札幌には無いよねって。「サッポロッピー」っていうご当地の飲み物があったら面白いねっていう話になったんですよ。単純な思いつきだったんですけど、「サッポロッピー」っていう言葉がかわいいなと思って。

── いい響きですよね。でも、まあその時点では本当に軽いアイデアみたいな感じですよね。

繭さん:最初は本当にただの思いつきでした。でもその名前だけはずっと頭に残っていて、しばらく経って、札幌の酒場を「サッポロッピー」で盛り上げたいという思いが強くなってきて、「よし! やろう! 絶対実現させよう!」と思い立ったんです。

── 札幌を盛り上げるご当地ドリンクのようなイメージですね。

繭さん:最初のヒントはホッピーにあったんですが、私自身が好きな味やお酒が進む味を目指して試飲を繰り返して調整した結果、できあがったものはホッピーとはまったく違うものになっていました。その時からホッピーはヒントにするのはやめて、あくまで飲み方だけを参考にさせてもらって、札幌ならではのオリジナル飲料として世に出そうと。味はすこし酸味があって、それほど強すぎない炭酸飲料にしたら飲みやすいんじゃないかと思って、試飲を繰り返しながら調整していきました。

── なるほど、いろいろ試しながら手探りでやっていったんですね。

“飲まさる”味わい

── あの、今さらですが実物を飲んでみていいですか(笑)。

繭さん:どうぞどうぞ。いろいろな飲み方があるんですけど、最初は“黄色”を焼酎で割って飲んでみてください。

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いただきます!

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── コーヒーっぽい苦味と、酸味もありますね。すごく飲みやすいし飽きがこない味です! あまり他に似たものが思いつかない、オリジナルな味ですよ。

繭さん:ありがとうございます。

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── 焼酎は「サッポロ焼酎」を使っているんですね。これ、初めて見ました。

繭さん:サッポロビールが作っている焼酎なんです。札幌発のご当地ドリンクなんだからそれにあわせる焼酎はサッポロ焼酎だろうと。ラベルもかわいいし、これしかない!と思って決めました。

── すごくスッキリしたクリアな味で飲みやすいです。サッポロッピーとの相性がすごく良いですね。

繭さん:いくらでも飲めてしまう感じですよね。それを北海道弁で飲まさるって言うんですよ。ついつい進むっていうような意味です。あんまりお酒の味を感じさせないでしょう?

── はい。結構たくさん焼酎が入っていたはずなのにそれを感じないです。これは飲まさる!

飲み方はまさに自由

開店から時間が経ち、徐々に常連のみなさんがお店に集まってきた。

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まず「サッポロッピー」の“黄”に焼酎を入れず、ノンアルコールで一杯飲むのが常連さんの定番スタイルなのだという。

2杯目から徐々にお酒を入れていくとちょうどよく酔えるのだとか。ちなみに、「サッポロッピー」には“黄”と“赤”があるが、これは濃さの違いで、“赤”の方が濃い目の味わいになっているという。

── 今年の6月に「サッポロッピー」ができあがって、評判はどうですか?

繭さん:常連のみなさんはいつも必ず飲んでくれますね。みなさんいろいろと好みの飲み方を見つけてくれて、一杯目はノンアルコールで飲むっていうのもそうだし、焼酎じゃなく、白ワインや赤ワインで割るのが好きという人もいますし、ウイスキーで割る人もいればウォッカで割る人もいます。

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── すごい幅の広さですね。ちょっと白ワイン割りを飲んでもいいですか?あ、これもおいしい!

繭さん:何にでも合うんですよ。最初は焼酎を「サッポロッピー」の“黄”で割って飲んで、だんだんウイスキーを“赤”で割ったりして濃い目の味にしていくのがおすすめです。そうやっていろいろな飲み方を試して楽しく飲んで欲しいです。今日はこの気分で、とか、隣の人の飲み方をまねしてみる、とか、たまにうちで出しているお酒の中で一番高い「マッカラン」で割る! という人もいて(笑)。それはもったいないからやめて! って言うんですけど。

お客さん皆で作り上げた逸品

── 常連さんがどんどん新たな楽しみ方を作り出していくというのが素敵です。ちなみにサッポロッピーはクラウドファウンディングで資金を集めていたと聞きました。

繭さん:そうなんです。たくさんの方に応援してもらって、もともとの常連さんも含めて最終的には100人ぐらいの方に協力していただきました。

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── なるほど!

繭さん:PR用のポスターもお客さんが作ってくれたり。

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── 土地に根ざした雰囲気をすごく感じますね。

繭さん:ラベルはうちに良く来るイラストレーターのお客さんがデザインしてくれたし、常連さんには試飲の段階からいろいろ手伝ってもらって、みなさんの協力あってこそです。そうやって協力してもらう中で、最初は思いつきで始まったサッポロッピーに愛情がどんどん湧いてきて、きっとそれが伝わってみなさんに飲んでいただいているんだと思います。

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── みなさんが楽しみながら飲んでいるのがいいなと思います。

繭さん:「サッポロッピー」を開発する上で、“人にやさしく”、“お財布にやさしく”、“人を笑顔に”っていう3つのモットーを掲げたんですよ。飲みやすくて、お財布にもうれしい価格で、楽しめるものにしたいなと思っていたので、それが伝わっていれば嬉しいです。

── 今はこのお店でしか飲めないんですか?

繭さん:店内で飲めるのはここだけです。あと、近くにある「ワインショップフジヰ」(札幌市中央区 南3条西3丁目1-2)の店頭で買うこともできますよ。今はそれだけで、もうちょっと広めたいんですけどね。ただ置いてもらうだけじゃなくて楽しい飲み方も一緒に伝えたいので、営業活動に時間がかかってしまうんです。

── 飲みやすいし本当に流行りそうな気がします。こういう風にオリジナルのドリンクを一から自分たちの手で作るなんて、可能なものなんですね。

繭さん:できるんですよ! ただ、実際に作ってくれる企業を見つけるのと、あと、継続して作っていけるっていうところを示すのが難しいんです。「サッポロッピー」は最初、“黄”と“赤”をそれぞれ1000本ずつ作ったんですね。1000本っていうと業者の人には小さなロットだけど、一般の人がその在庫を抱えるってすごい大変なの(笑)。だから最初は「部屋に置こう! もう、広い家を借りて一部屋まるごど『サッポロッピー』でいいやー!」とか言ってたんですけど、まず、そこまでどうやって運ぶんだって(笑)。そういう当たり前のことが一つ一つわからなくて。

── その一つずつ体当たりでやっていく感じがすごく人間味があって面白いです。お話、ありがとうございました!

バイスサワー風もイケる

最近始まったサービスとして、最後の一杯は「サッポロッピー」にシソのエキスを入れてバイスサワー風にして飲ませてくれるというのでそれも試させてもらった。

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色からは伝わりにくいがこれもまたすっきり飲みやすい。

グイグイ飲んでいるうちにずいぶん気持ちよく酔っぱらってしまった。また「サッポロッピー」を飲みに札幌に来ようと思いつつお店を後にした。

「mayu繭」では、サッポロッピーのセット(サッポロッピー1本と焼酎やワインなど)を500円で提供しており、“替え酒”と“替えサッポロッピー”はそれぞれ350円となっている。工夫次第で、リーズナブルにいろいろな味が楽しめる。

文中にもある通り、結構“飲まさる”味わいなので、節度を守りつつ楽しみましょう!

また今回は「サッポロッピー」の話ばかりになったが、「mayu繭」では、店主の繭さんのおいしいおつまみが楽しめる上、毎週木曜日~土曜日には名物の自家製パンが店頭に並ぶ。こちらも合わせてチェックしてみてください!

お店情報

mayu繭

住所:北海道札幌市中央区南2条西10-1000-8

電話:011-219-1557

営業時間:18:00~23:00

定休日:日曜日、祝日

※この記事は2017年9月の情報です。

※金額はすべて税込となります。

書いた人:スズキナオ

スズキナオ

1979年生まれ、東京育ち大阪在住のフリーライター。安い居酒屋とラーメンが大好きです。exciteやサイゾーなどのWEBサイトや週刊誌でB級グルメや街歩きのコラムを書いています。人力テクノラップバンド「チミドロ」のリーダーでもあり、大阪中津にあるミニコミショップ「シカク」の店番もしており、パリッコさんとの酒ユニット「酒の穴」のメンバーでもあります。色々もがいています。 Twitter:@chimidoro

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