中国NEV法公布で、日系の自動車業界どうなる?
▲中国で生産されている現地向けカローラ。すでに先代プリウスゆずりのハイブリッドが用意されており、2018年にはPHVが加わる予定だ。もちろんNEV法をクリアするためにリリースされるモデルのひとつ
外部充電ができないハイブリッドは除外
中国で「NEV(ニューエネルギービークル)法」が公布された。これはエネルギーや大気汚染の問題に直面している同国が、現状を改善するために施行する政策だ。
簡単に説明すると、一定量以上のEV(電気自動車)、PHV(プラグインハイブリッド)、FCV(燃料電池車)を販売することが義務付けられる法律だ。外部充電できないハイブリッド車が対象にならないのは、この分野で先行してきた日系ブランドにとってはツラいところ。トヨタが、現地向けカローラ/レビン(かつてのクーペモデルではなく、現地向けカローラの兄弟車)へのPHV追加を急いで準備していることも合点がいく。
当初は、2018年からの本格施行が予定されていたが、あまりの急な提示に緩和や延期を求める声が相次いだことから、2019年施行へと1年先送りされた。とはいえ、1年で前出の環境対応車を準備して、現地に導入することは簡単ではない。
▲東風汽車との合弁自主ブランドである、ヴェヌーシアで販売されている先代リーフ(現地名e30)
厳しい設定のNEV法
前述のとおり、一定量以上の環境対応車を販売しなければならないルールがNEV法だ。例えば、日産が東風汽車との合弁ブランドである、ヴェヌーシアを通じて販売している先代リーフの航続距離は175km(現地カタログ値)。これをNEV法独自の計算式にあてはめると、日産が中国で生産している車130万台を、リーフだけでまかなうには、約4万5000台のリーフを販売しなければならない。
当然ながら、EVよりも環境負荷が大きいPHVであれば、もっと台数が必要になる。では、2019年からの本格施行をにらんで、日系ブランドはどんな環境対応車を投入するのか。
トヨタはPHVとEVの2段構え
トヨタは、前述の現地向けカローラ/レビンに加え、ひとクラス上のDセグメントでは、カムリPHVを投入か。また、同社はマツダおよびデンソーと手を組んで新会社を設立し、EV開発にも本腰を入れた。リソースやマンパワーを共有して、一歩先を行く日産&ルノー連合に1日でも早く追いつく狙いだ。
トヨタ社内で「愛Car」と呼ばれている、人工知能搭載の次世代ビークルが、初の量産EVに仕立てられる見通しだ。
▲トヨタは人工知能搭載の愛Car(画像は東京モーターショー2017で発表されたスタディモデル、コンセプト愛i)を初の本格量産EVに位置づける模様だ。2020年に発売される公算が大きい
日産はe-POWERに加え、傘下の三菱によるPHEV技術を投入
日産は先代リーフに加え、航続距離の長い新型モデルも投入か。NEV法は航続距離が長い車の方が有利なのだ。また、ノートで実現したe-POWERの海外展開にも期待が高まる。
そして、日産には心強い武器がある。三菱のPHEV技術だ。2016年にグループ傘下に入った三菱は、国内で先陣を切ってPHVを実用化した先駆者で、日産はこのノウハウを手に入れたことで、自社開発するよりも短期間で、PHVを開発&リリースできるはず。
日産が真っ先にPHVを設定するのは、アウトランダーと車格やパッケージングが似ている、エクストレイルだろう。2019年頃、ちょうど中国のNEV法が本格的に適用されるタイミングに間に合うよう、急ピッチで開発が進められているに違いない。
▲日産はグループに収めた三菱からPHEVのノウハウを調達して、自社ブランドの車にも用いる。第1弾はアウトランダーPHEVとパッケージングが似ている次期エクストレイルだ
中国でEVを発売するホンダ
ホンダは中国で、2018年にEVを発売する計画を視野に入れている。広汽本田と東風本田の両社から発売されるEVは、兄弟車関係にあり、プラットフォームやボディシェルだけでなく、外板パネルの一部も共有されるだろう。
フランクフルトショーで出品されたアーバンEVコンセプトや、先日開催された東京モーターショー2017で、ワールドプレミアされたスポーツEVコンセプトは、シャシーを共有しており、すでにEV専用プラットフォームの開発に着手していることは、もはや公然の秘密だ。
一方で、アコードもしくは、オデッセイのようなDセグメントの車には、PHVが設定される可能性が高い。FCVが最初に登場したクラリティシリーズには、PHVが控えており、これが日本と同じく中国にも投入されることも考えられる。
▲ホンダは量産EVの予告編として、アーバンEVコンセプトをフランクフルトモーターショーでアンベール。東京モーターショー2017には、スポーツEVコンセプトを発表した
欧州メーカーも積極的
ヨーロッパ勢に目を向けると、BMWがiブランドを立ち上げており、同様にメルセデス・ベンツがEQ、フォルクスワーゲンがIDを電動車両専用ブランドとして設立することを予告している。
なかでもフォルクスワーゲンは、中国での歴史が長く、支持率も高いだけに、当然ながら現地投入も見越して、開発を進めているはず。
ハイブリッドカーで世界をリードして、のんびり(?)構えてきた日系ブランドも、もはや焦りを隠せない状況になりつつある。
▲メルセデス・ベンツは、電動車両の専門ブランドとしてEQを立ち上げた。2019年には電動車両をリリースするようだ
▲フォルクスワーゲンも同様に専門ブランド、IDを設立する。こちらは2020年から市販車の販売を始める見通し
※2017年11月8日現在における予測記事ですtext/マガジンX編集部
photo/マガジンX編集部、トヨタ、ホンダ
関連記事リンク(外部サイト)
軽が欲しいなら、車内の広さを見て選ぼう【クローズアップ後編】
ヴィトンの財布ならタイガ。で、高級車ブランドならどれを選ぶのがイマドキVIP?
「山の日」のことを考えていたら思い出した! トヨタ FJクルーザーは、いいゾ~
日刊カーセンサーは、中古車だけでなく新型車やドライブ、カーグッズ、レース&イベントなど幅広いジャンルの情報・ニュースをお届けするエンタメ系自動車サイトです。面白くて役に立つネタを全力で配信しています。
ウェブサイト: http://www.carsensor.net/contents/
TwitterID: carsensor
- ガジェット通信編集部への情報提供はこちら
- 記事内の筆者見解は明示のない限りガジェット通信を代表するものではありません。