裸の社交場度、おばあちゃんち度… ちょっと変わった「ひなびた温泉」ガイド本

裸の社交場度、おばあちゃんち度… ちょっと変わった「ひなびた温泉」ガイド本

 通常、私たちが「温泉に行こう!」となるとガイドブックやインターネットで有名かつ評判のよい温泉を探すもの。けれど、そうした考え方とは一線を画す、「ひなびた温泉」というベクトルで厳選された温泉紹介本が今回ご紹介する『しみじみシビレる! 名湯50泉 ひなびた温泉パラダイス』です。

 そもそも「ひなびた温泉」とはなんぞや。本書によると「ズバリ、このせわしない現代の時間の外にある温泉である。」と定義づけています。「トレンドなんかどこ吹く風で、ゆるくおおらかにそこにある」ものだそうで、湯の表面にも、湯船や桶や蛇口やカラン、浴室全体、あるいは建物や温泉街全体にも過去から綿々とした時間が積もっているような温泉。本書にはそうした、知られざるジモ泉(地元温泉)から国宝級にシブい温泉、有名な温泉地の穴場名湯など、全国のしみじみシビれるひなびた温泉50泉が次々と登場します。

 湯の質よりも「どのぐらいひなびているか」に重きを置いているので、温泉本によくあるような「湯の効能」や「湯の三ツ星評価」みたいなものはいっさいナシ。そのかわり(?)、「裸の社交場度」や「おばあちゃんち度」「夜は怖い度」といった「ひなびた温泉指数」というゆる~い独自の評価がされているのも本書の特徴といえましょう。

 そしてページをめくってみると……出てくる温泉がどれもこれも本当にひなびてる! レトロやノスタルジーといった言葉では片付けられない激シブな写真の数々に、どんどんと引き込まれてしまいます。

 たとえば北海道の川湯温泉の公衆浴場は、入ると受付のおばちゃんがロビーのソファに座って「こんにちは」と笑顔でお出迎え。浴室も湯船も至るところが温泉の成分で変色したり剥げていたり。けれど、そんなところがすべて情感たっぷりです。

 三重県の「ゴールデンランド木曽岬温泉」は、昭和の時代にはやったヘルスセンターが当時の姿のまま残っているという稀有な温泉。500人が座れるステージ付きの休憩所には、聞いたこともないような演歌歌手のポスターがいっぱい貼られているそう。そして浴室にはなんと、名古屋城らしき城のオブジェがド~ン! いい湯を楽しめるのにB級感マックスなところ、それがここの魅力であり、隠れファンが多い理由のようです。

 鹿児島県の指宿温泉で取り上げられているのは「村之湯温泉」。受付は民家の縁側で、当然のごとく無人。縁側にはなぜか古い火鉢やミシン、ご先祖さまの写真みたいなものが並んでおり、素朴でおおらかな雰囲気。そして浴室もひなびてる度満点! 無造作に転がっている風呂桶や竹箒、鈍く曇った鏡など、時間が染み込んだ数々のディテールを感じ取ることができるそう。

 いかがでしょう。皆さんも「ひなびた温泉」とはどんなものか、なんとなく理解できてきたのではないでしょうか。旅情に誘われる文章と豊富なビジュアルが、私たちの心をとらえて離さない本書。読み終わるころには皆さんも、これらのひなびた温泉に出かけてのんびりしたくなること間違いナシです!

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