プロレスラー俳優法則探訪:「とっかかりでそれっぽくの法則」ネイサン・ジョーンズ
【プロレスラー俳優法則探訪 FILE.6】
とかく演技力を重視されないプロレス出身俳優にとっては、要は製作陣の臭覚に引っかかり、且つ画的に見栄えすることが重要。何かの経験があればOK。それが少しでも”とっかかり”が全てなのです!
そんな”とっかかり”法則下で活躍するのが「ネイサン・ジョーンズ」。
現役時は211cm、159kgもあった巨躯かつ三白眼のスキンヘッドという、いかにも画的に映えるキャラクターの持ち主。
少年時代の服役中にパワーリフティングに出会い、世界一の怪力を決める大会『ワールド・ストロンゲストマン』に出場。さらに『PRIDE』旗揚げ戦で元横綱・北尾光覇(光司)と対戦し、プロ総合格闘家に(ここ重要)。
97年にプロレスに転向し、地元オーストラリアでデビュー後、日本のZERO-ONE参戦を経て、2003年にはWWEと契約。元服役囚の経歴を大幅に盛ったギミックで、大物アンダーテイカーの相棒に抜擢される幸運に恵まれます。
ところがWWEの地元大会で凱旋したのに、まさかのホームシックにかかって退団。当時、筆者も「あの風貌でホームシック?!リアル服役囚のワルなのに?」と驚愕したものです。
ジャッキー・チェン主演の『ファイナル・プロジェクト』(1996年)に出演していたこともあり、2004年のブラピ主演の大作『トロイ』出演を機に俳優業に本格転向。
その『トロイ』での屈強な戦士「ボアグリウス」役のイメージを引きずる形で、フランス映画『Asterix at the Olympic Games』での「ヒューマンガス」役、『コナン・ザ・バーバリアン』(ボブ・サップも出演)での「アクン」役といった”それ系”の役柄を連投。
ただ、他のプロレス出身俳優に比べて違いがあるのは、「総合格闘技」経験をアテにしたと思われる「格闘家」役が多いこと。
トニー・ジャー主演『トム・ヤム・クン!』、ジェット・リー主演『SPIRIT』のほか、『Muay Thai Giant』(タイ映画)、『TEKKEN -鉄拳-』、『Boologam』(インド映画)、『Never Back Down: No Surrender』といった作品で様々な格闘家(用心棒)役を演じています。
もっとも、格闘家実績としてはプロアマ合わせて2戦0敗で素人同然!
それ故に少なく見積もっても8年のキャリアがあるプロレスラー的な動きに寄っており、「絵面が映えれば結果オーライ」という各製作サイドの起用意図(諦め?)が透けて見えるワケです。
肉体派タレントの延長で格闘技を味見してプロレスに進んだら、上手いこと世界規模のWWEを経由し、映画界で格闘家もどきをそれっぽく演じる男……
まさに”とっかかり”が全てな経歴ですが、WWEと契約してデビューしたこと、ジャッキー、ジェット・リー、トニー・ジャー、マイケル・ジェイ・ホワイトという肉体アクション界のお歴々と手合わせしているのは稀有なことです。
件のホームシック説を裏付けるかのように、近年は地元オーストラリアを中心に活動しており、タイやインドなど周辺国作品などでも主演級として出演。オーストラリア製作で知られるシリーズ復活作『マッドマックス 怒りのデス・ロード』(2015)では、敵ボスの長男リクタス役を射止めています。
自身の公式Facebookには奥さんと息子さんの写真が大量に載っており、「心優しき巨人」を地で行くのもポイント。惜しむらくは近作がことごとく日本で配給・発売されないことですが、今後のジョーンズ兄さんの活躍に注目です。
(文/シングウヤスアキ)
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